或る少女の話

あれは中学2年生の冬であった。

祖母の自宅がある祇園に向かっていた少女は、電車内でボサついた前髪をとかしていた。しばらくそうしていると、急に前方に座る妙齢の女性がすっくと立ち上がり、

「おまはん、何してはりますのん!? フケが舞ってるやないですか! 見て分かりまへんか?」

と金切り声で叫び始めた。慌てて辺りを見回すと、フケは足元ばかりか車両全体にうず高く積もっていた。少女はそれを見て、まるで雪のようだ、と思った。そして、まだ何やら言いたそうな女性に背を向け、足早に次の電車へと乗り継いだ。

少女の頬は見たこともないくらい林檎色に染まっていた。

ハマショーの『MONEY』がすきです。