福岡vs徳島

2位と3位の対決ということもあり、注目度の高かった試合。

福岡は、最近はそれほどチェックできていないが、前回観たときと変わっていなければ、サイドからのクロスが唯一の攻撃パターンのチームだった。

それでも、勝ててしまうのは、個の質が他のクラブよりも高いから。

特にFWのウェリントンは、闘莉王ぐらいでないと、1対1の空中戦は勝てないんじゃないかと思ってしまうくらい強い。

京都戦で、高さとパワーでゴリ押ししてくるチームが未だに苦手ということが露呈してしまった徳島だが、福岡相手にどう戦うのか。

ここで徳島が負けると、自動昇格圏から離れてしまうだけに、なんとしてでも勝ちたい試合である。

スタメンはご覧の通り。



守備が堅いとは?

福岡は、第23節終わりで失点19(リーグで2位)と失点数だけを見れば、非常に守備が堅いチームである。

しかし、徳島戦を観て、福岡は守備堅いという印象は受けなかった。

正確に言うと、失点数が少ないのだから、守備は堅いと言ってもいいのかもしれないが、どんな相手にも通用するような守備の堅さではなかったというのが正しいかと思う。

なぜ、そういった印象を受けたのかを説明していきたいと思う。

このシーンを解説なしで観ても「えっ、やばくない?」と思ってしまう人もいるだろう。

ボールホルダーに対して1人アプローチしているが、左右に徳島の選手がいるため1対3(少なくとも左に完全にフリーの選手がいるので1対2)というシチュエーションで、このシチュエーションで止めるのはかなり難しい状況である。

ここは突破されても仕方ないシチュエーションであるため、他の選手がケアをしなければならないのだが、ここで福岡ディフェンスの問題が浮上してくる。

福岡の守備は、組織的に質が高いために失点が少ないのではなく、個の質がJ2の中で上位のディフェンス能力をもった選手が多いために、守れているのである。

つまり、個に頼る部分が大きいということである。

突破された先には広大なスペースがあるにも関わらず、福岡の最終ラインの選手は全員でペナ近くまで引いた状態で、誰もスペースを埋めず、突破されたときのことを考えている選手がいない。

徳島の選手が前線に2人しかいないのに、福岡は5人もいる。

余っている選手がいるのに、なぜ誰もスペースを埋めないのか?

それは福岡がそういうディフェンスをやっていないから。

先ほど言った通り、個に依存するために、こういうシチュエーションだったら、チームとしてどう動くかは整理されていないのである。

引いて、相手がきたところを個で止める。

そういうディフェンスなのである。

しかし、整理されていないディフェンスのチームとは相性のいい徳島。

整理されていないチームは、変なスペースが生まれることが多々ある。

それは、チームで連動して動いているのでなく、個の判断で動いているから、ズレが発生するからである。

案の定、突破されてしまう。

最終ラインにいた富安がアプローチにいくのだが、ここでさらに問題が発生。

富安が前に出たことで、富安がいたところにスペースが生まれてしまったのである。

今シーズンの徳島は、そういうスペースを見逃さないため、そこを突かれる。

結果的にシュートまではいかれなかったが、ペナ内に侵入され非常に危険であった。

では、富安は前に出ない方がよかったのかというと、そうではない。

駒野が中央に絞ればよかったのである。

しかし、こういうシチュエーションで、WBが絞るというのはチームとしては共有されていないと思う。

これは最初にピックアップしたシーンだが、このときのWBである亀川と駒野のポジショニングがどちらもサイド寄りなのである。

ボールの位置や相手の位置を考えれば、サイドに寄る意味はそれほどなく、一番危険な中央に絞るべきシチュエーションなのである。

駒野が絞り、岩下or富安がこの時点でスペースを埋めにいき、突破されたときのケアをしておけば、少なくとも今回の対応パターンよりもペナ内に刺入された可能性は低いように思う。

つまり、事前に防げたシチュエーションだったのだ。


このシチュエーションでも、引いて待ち受けている。

引いて対応が悪いというよりも、どのシチュエーションでもこういう対応しかできないのが問題なのだ。

島屋が福岡ディフェンダーを1人外した後のシーンなのだが、ボールホルダーにプレッシャーが全然かけずに、福岡はズルズルと下がる対応をした。

ズルズルと下がり、人数はいるが、ポジショニングをチームとして整理されてないため、最終ラインと中盤の間のスペースにいる前川へのパスコースが一切塞げていない。

当然パスが通る。

最終ラインが下がってしまっているため、前川にプレッシャーが一切かからない。

さらに、前を向かれるだけでなく、余裕をもってボールを運べるスペースまで存在してしまう。

シュートまではいかれなかったが、これまたどう守るのかがチームとして整理されていないことが露呈してしまうようなディフェンスだった。

最初のシーンに戻るが、特別難しいことをしなければいけなかったわけではない。

まずはジウシーニョが早めにアプローチにいくべきだった。

もし、ジウシーニョが止めれなくても、三門が右にズレることで、前川へのパスコースを塞げるだけでなく、ドリブルをしてくる島屋を待ち受けることもできる。

右にズレても、左にいる山崎は堤が見ているため問題ない。

岩下は、もっと前に出て、前川にパスが通っても潰せる距離にいかなければならない。

このシチュエーションで、ここまで下がる意味は正直ないと思う。


そして、失点シーンにつながる。

ここまで説明したものと重複するので、画像を使った解説はしない。

中央のパスコースを切れていない。

最終ラインがズルズル下がるため、ボールホルダーがドリブルをできるスペースを与えてしまっている。

ここまで解説したことが重なって起きた失点である。


一方、徳島はディフェンダーの個の質だけを単純に比べれば、福岡より質は落ちるかもしれない。

しかし、個の質だけで守備の堅さが決まらないのがチームスポーツの面白いとこである。

これは徳島がどこを一番に守るかがチームに浸透しているなと感じたシチュエーション。

岩下からウェリントンにパスが通り、ウェリントンからジウシーニョにパスをしたシーン。

左サイドに駒野がいるため、井筒は気にはなっていると思う。

ヴァシリェヴィッチが前に釣り出されて、後方にスペースが生まれてしまい、そこをワンツーで突かれるが、井筒と大崎が絞って、ケアに回っている。

CBの大崎がケアに回るのはわかるが、SBの井筒がすぐに絞ってケアに回っているところに徳島の選手の守備意識の高さを感じた。

先ほども書いた通り、駒野がサイドにいたため、井筒がマークの意識が強く、駒野に意識が引っ張られていたら、この対応はできていなかった(もしくは遅れていた)と思う。

大崎1人でも止めた可能性はあるが、ウェリントンが相手ということを考えると、2人でケアにいけたことで、失点の可能性を下げることができた。

仮にジウシーニョが駒野にパスを出しても、井筒が素早くアプローチをすればいいのである。

サイドよりも中央をケアするのは当然なのだが、Jリーグだと意外にこういう対応ができないチームは少なくない。



サイドクロスとセットプレーしか得点がない理由

この一連のプレーから、福岡が流れの中からだと、サイドからのアタックでしか攻撃ができないというのが露呈していたように思う。

パスを回しているが、チームとして意図のあるパス回しのようには見えない。

岩下が痺れを切らして、無謀な縦パスにチャレンジしていることからも、チームとしてどうしたいのかがないことがうかがえる。

サイドからサイドへの意図のないU字パス、さらにパススピードも遅いため、徳島のディフェンスにズレを生むこともできない。

試合後の井原監督のコメントによると、クロスとセットプレー以外の得点パターンを練習はしているようだ。

それがどれくらいの時期から取り組んでいるのかはわからないが、この試合を観る限りでは、その成果は全く出ていないようだ。



スペースとボールの運び方と体の向き

徳島はスペースを意図して生み出すことと、ボール運び方や体の向きで相手の逆をとるのがうまいチームである。

左のスペースにボールを運び、福岡の選手を左に寄せる。

左に寄せたことで、杉本と前川がフリーでプレーしやすくなり、かつ中央にすスペースが生まれる。

杉本がスペースの空いていて、かつフリーでいる前川の方向にドリブルをする。

そのため、福岡の選手は、ボールホルダーにアプローチする選手、右に寄る選手、前川に意識がいく選手、ボールホルダーを目で追ってしまう選手とボール方向に意識がいってしまう。

そのため、中央左サイドに動いている島屋に誰も気づいてない。

相手の逆をついたパスが成功する。

スペース、ボールの運び方、体の向きで相手をズラし、相手の逆を突く。

徳島は、こういうことを毎試合やってくるので、間違いなく意図的に仕込まれている。

こういうのがチームとして質の高い攻撃と言えるのだろう。



雑感

福岡もチャンスは作っていたけど、徳島の勝利は妥当と言っていい試合だったと思う。

一番危険な存在でウェリントンにヴァシリェヴィッチを常に監視させて、フリーでプレーさせないようにしていた。

京都のようにターゲットが2人だと、対応に苦しむ徳島だが、1人なら対応できるチームになっているように思う。

ウェリントンというJリーグ全体でもトップクラスのFWを抑えただけに、今後の自信にもつながっただろう。

福岡は、井原体制で2シーズン半ほどになるが、これといったベースがないように見える。

得点源のクロスやセットプレーも、個の質で得点しているので、この戦い方だと常に選手の質をアップデートしていかなかれば強くなれない。

J1に昇格して、残留したいとなると、それなりに大型補強をしなければならない戦い方をしている。

資金が潤沢とはいえない福岡にとっては、なかなか厳しく、井原体制で果たして、これ以上上にいけるのかというのは、少し疑問に思うとこである。

井原さんは、個人的に現役時代好きな選手だったので、ブレイクスルーできるといいなと密かに思っております。

(試合を観た後に、井原さんの試合後のコメントを読むと面白いです)

http://www.targma.jp/football-fukuoka/2017/07/24/post8994/


おまけ

前回書いた「セレッソvsセビージャ」の記事が女子日本代表の永里優季選手に読まれ、良記事とのコメントともにリツイートされました!

どういう経由で永里選手に記事が届いたのかは謎ですが、サッカーに対して論理的に取り組んでいる印象のある永里選手に褒めていただけたのは大変嬉しかったです。

自分の勉強ついでに書き始めたのですが、まさか現役のプロ選手に届くとは思ってもいませんでした。

こうやって他者に評価されるのは不思議な感じですが、今後も読みたいと思わせるような記事を書くように精進していきたいと思います。

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