名波浩

名波監督は約6シーズンを任せるに値したのか

試合の中身をある程度観れる人なら、磐田の試合を観て誰しもが思うことかもしれません。

「なぜこの試合内容と結果で長いこと監督でいれるのだろう?」と。

当たり前だが監督を続投するかどうかを決めるのはクラブの仕事です。メディアやサポの声も影響力はある程度あると思うが、そこに振り回されてはいけません。

周りの声に振り回されないために、評価軸が必要となってくる。評価軸は、短期的なものと中長期的なものが存在するはずです。

短期的なものは、シーズン開幕前に監督が言うことが多い。今シーズンの目標が短期的なものだと思われます(優勝、ACL出場、残留等々)。

中長期的なものは、数年、数十年先のこと。例えば、今は無理だが5年後にリーグ優勝が中長期目標だとする。それを考慮した場合にこの監督に任せることでその目標が達成できるかというのが評価軸となってきます。

では、磐田の評価軸で名波さんを評価してみたいと思います。これがジュビロ磐田の評価軸です!とクラブが明言してはいないので、合っているかはわかりませんが、個人的にこれだろうと想定して評価軸を立てます。

短期的な評価軸

まず短期的な評価軸を私は今シーズンの目標としました(明確に今シーズンの目標をリリースしているリソースがある場合は目標にリンクをつけておきました)。

2014 カテゴリー:J2 目標:昇格 結果:残留(4位、PO敗退)

高比良(当時社長)「我々の今季の目標はただ一つ、J1に必ず戻るということです。」

2015 カテゴリー:J2 目標:昇格 結果:勝ち点82 昇格(2位、自動昇格)

加藤(当時GM)「チームとしてはもちろん来季J1に復帰することが大きな目標ですが、スタッフのみなさんにはその先も見据え、再びJリーグチャンピオンになるんだ、アジアチャンピオンになるんだということを同じ思いで、同じ熱さで語れる人間に集まっていただいたと考えております。」

2016 カテゴリー:J1 目標:残留(15~10位) 結果:勝ち点36 残留(13位)

名波「具体的な数字目標というのはありませんけれども、強いてあげるとすれば、勝点40にいち早く届いて、そこから目標設定を上方修正していくということに尽きると思います。」

2017 カテゴリー:J1 目標:Aクラス入り(Aクラスが何位までなのかわからないが、たぶんABCという感じだと思うので6位以内なのでは) 結果:勝ち点58(6位)

木村(当時社長)「まず、昨シーズンのトップチームの成績につきましては、シーズン当初の目標としていたAクラス入りを果たし、また失点数もリーグ最少失点と、この点についてはすでに皆様方がご承知の通りでございますが、何よりも選手個人の成長、そしてチームとしての連携、さらにチームの一体感の更なる醸成と、大きな成果を出せたシーズンだったかなと思います。」

2018 カテゴリー:J1 目標:5位以内 結果:16位

名波「具体的には、トップ5という目標を選手たちには掲げたので、まだまだ上に5つあると。」

2019 カテゴリー:J1 目標:(今年に関しては本当にわからない) 結果:第17節終了後辞任(辞任時の順位:18位)

明確な目標発見できず

こうして”結果”だけをみれば、2017年までは悪くないです。しかし、2018年に明確にトップ5を目標にしながらの16位という結果はあまりにギャップのある結果です。ここで解任となってもおかしくないくらいのギャップです。しかし、フロントは続投を支持しました。それは結果以外に何か評価するものがあったからなのでしょう。

中長期的な評価軸

中長期的な目標は以下の2つを仮定しました。

・地元に安定した人気がある(観客動員数が多い)

・黄金期を再び

まず1つ目ですが、名波体制になってから観客は増えている傾向にあります。

年度別ホーム平均入場者数

2014 8,774人

2015 10,041人

2016 14,597人

2017 16,321人

2018 15,474人

2018年には減少していますが、名波さんが監督に就任以降は右肩上がりで上昇しています。ただ、その効果が名波浩という存在によるものか、成績によるものかは判断が難しいところです。名波さんが辞任し、シーズン終了時の結果がたぶん良いとは言えない状況だと思われるので、2019の平均入場者数がいろいろと示唆してくれるのではないかと思います。

さて、もう1つが黄金期を再びです。簡単に言えば、強い(タイトルを獲れるレベル)磐田にもう一度返り咲こうという感じです。黄金期は日本代表が何人もいるようなクラブでしたが、今はそういう状況ではありません(日本代表クラスがJリーグにいることが減っているということもありますが)。神戸や名古屋のようにお金で即戦力を何人も連れてくる金力もありません。では、どうやるのか?というところを黄金期に現役だったOBを集めることで、解決しようとしているのではと思います。たぶん、理想は鹿島なのだと思います。

ただ、鹿島の強さは非常に外から測りにくいところがあります。決してモダンサッカーを常に追及するという感じではなく、442のシステムを軸にずっと戦っています。内容は良くなかったのに結局勝ってしまうという鹿島の強さに対して「鹿島らしい」と言われたりしますが、その「鹿島らしい」強さを細かく分析したものを私は知りません。

1つわかっていることとすれば、結果に対して異常なまでにこだわっているということです。勝たない鹿島は、鹿島ではないと言えてしまうくらい、たぶん勝負にこだわっています。

そんな部分を今の磐田にも植え付けたいのでしょう。実際、名波体制になってから、最後まで諦めずに戦うという部分は大きく改善されたように感じます。しかし、それは名波さんという存在ありきでのものかもしれません。名波監督のためなら!!というのもあるかもしれません。もしそうだったとすると、この文化は徐々に薄れていくでしょう(黄金期が終わってから、降格するまでのように)。

それで、結局名波さんは中長期的な評価軸で評価するとどうなん?という結論に入っていきますが、マイナス査定はないかと思います。しかし、観客動員数の部分に関しては名波さんの魅力によるものなのか?名波さん関係なく成績向上によるものなのか?他のことによるものなのか?と現時点では判断が難しいです。

黄金期の返り咲きについても、メンタル面の変化はあれどピッチ上の現象が大きく向上しているかというと、残念ながらそれほどでもありません(それほどでもないのに一度は6位になれてしまうというのがフットボールのややこしい性質)。メンタル面の変化をどれほど評価するのかは難しいのですが、約6年指揮をして、ピッチ上においては安定して結果を出せるようなチーム作りはできていなかったのではないかと個人的に思います。

なので、客観的に評価すると名波さんは中長期的な評価軸では、解任に値する仕事ぶりだったと思います。しかし、内部では正しい方向に進めているという評価らしく、外からは想像もできぬ評価軸が存在するのかもしれません(ただフロントの評価が狂っているという可能性も…)。あくまで今回の評価軸は私個人による推測の元でことなので、内部の方が読んだら「こいつの書いていること的外れすぎだろ。」という可能性もあります。

まぁ、それでも一応名波体制を最初から最後まで試合を観た者としては自己満でも書いておきたいと思うのでした。

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