名波浩

名波浩という監督をできるだけ客観的に評価してみた

最終節の劇的な終わり方によって、磐田はPOに回ることになりました。

そして、入れ替え戦の結果来シーズンもJ1で戦えることなりました。

しかし、私個人の意見としては残留だろうと降格だろうと名波浩という監督に対しての評価がブレることはありません。

本人の言動に問題があった部分もありますが、ただ面白おかしく名波さんを笑いのネタにされているのもすごい気持ち悪かったので、今回のような記事を書くことにしました。

(ソースがなく、私の記憶を頼りに書いている部分もあるので、間違っている箇所もあるかもしれません。もし、間違った箇所があり、かつソースもあるようでしたら教えていただけると助かります。)


2014 ジュビロ磐田の監督就任

2014年の9月26日に名波浩はジュビロ磐田に監督として就任しました。

監督としてチームを率いたこともなく、監督としての実力は未知数。

このシーズンはPOで山形に負けて、J1に1年目で昇格できることはできませんでした。

正直、どういうサッカーをしていたかはほとんど覚えていません。

約2ヵ月という短い期間であることと、クラブ黄金期の象徴とも言えるOBが初指揮をとったということを考えると、次のシーズンも監督であることは誰の目にも明らかでした。


年間:18勝10敗14分 勝ち点67 4位

昇格PO:準決勝敗退


2015 J1昇格

この年にジェイ、アダイウトン、カミンスキーが加入します。

このシーズンのモデルとなるサッカーは、ざっくり言うとクロップ時代のドルトムントのように攻守において常にアグレッシブに戦うものでした。

名波さんが理想とするのは常に能動的なサッカー。

受け身にならずにこちらから攻守において仕掛けていくものでした。

しかし、クロップ時代のドルトムントのようなゲーゲンプレッシングと言われるものは、闇雲に選手がボールにアプローチしているわけではなく、相手が逃げれないように選手が連動して成立するものです。

連動することが伴っていないと、ただ単に前に人を掛けるだけで、あっさりとプレスから逃げられてしまいます。

このシーズン(というかここからずっと)の磐田はまさにこのパターンで、選手は必死にプレスをかけるけど、簡単に逃げられるし、連動していないから本来空いていてはいけないようなスペースが空いている状態でした。

正直、チームの完成度としては昇格の基準に達していなかったと思います。

それでも、このシーズンJ1昇格までいけたのは、J2の中で頭一つ抜けた戦力を保持していたことでした。

特に補強した外国人助っ人がすべて当たりで、自クラブの選手ながら「こんなやつらJ2にいたら反則だろ」とすら思いました。

昨シーズンは劇的な負け方をしましたが、今シーズンは最終節の劇的な勝ち方をして昇格を決めました。


年間:24勝8敗10分 勝ち点82 2位(自動昇格)


2016 強運が傾いた前半戦と実力通りの後半戦

このシーズンは、2ステージ制。

前半戦は、結果だけを見れば素晴らしいものでした。

昇格クラブが一桁順位で終われたのだから、結果に対して文句のある人はほとんどいなかったと思う。

しかし、内容が8位にふさわしいものかといったらそうでもない。

守備時は相手のミスに助けられる部分が多く、攻撃もサイドからの地獄クロス。

1年半も指揮しているのに守備も攻撃も整備されることがなく、この時点でピッチ上における監督としての手腕の限界は来ていたと思う。

後半戦は、実力通りの結果となってしまった。

前半戦も同じような感じだったら、間違いなく降格だった。


1st:6勝6敗5分 勝ち点23 8位

2st:2勝8敗7分 勝ち点13 14位

年間:勝ち点36 13位


2017 選手の特徴が全て出て出たこと、個人の成長により掴んだ6位

結果だけを見れば「名波さんの手腕が上がったの!?」と思われるかもしれないがシーズン終了からシーズン始動までの2ヵ月くらいで劇的に上がれるほど甘くはない。

このシーズンの大きな変化は、中村俊輔と川又の加入、そして守備の変化だ。

俊輔の加入で大きく影響が出たのはセットプレーだ。

2016:総得点37(内セットプレー:8)(総得点の21.26%)

2017:総得点50(内セットプレー:20)(総得点の40%)

シーズンの総得点50の内セットプレーからのゴールが20(40%)なので、いかに多いのかがわかる。

このシーズンのセットプレーは間違いなく磐田の武器であった。

俊輔の移籍に対しては賛否あったが、獲得したことは間違いでなかったし、俊輔がまだまだ選手としてやれると証明し、双方にとってハッピーな移籍だったと思う。

そして、もう一人外せないのが川又だ。

昨シーズンまで磐田唯一の得点源と言っても過言ではないジェイの後釜として期待されての加入だ。

ジェイの特徴としては、高さを生かしたハイボールの強さ、ボール扱いの技術の高さ、そして何と言ってもボックス内でゴールを決めるスコアラーとしての能力だ。

これらの能力に関してはJリーグNo.1と言っても過言ではなかったのだが、メンタルが不安定なのと、運動量が少ないため、前線からの守備が期待できないという問題があった。

そこで目を付けたのが名古屋でくすぶっていた川又である。

ただ、これはあくまで私の加入時点での川又に対するイメージなのだが、運動量という部分では期待できるのかもしれないけど、相手を背負いながらのプレーは苦手、ボール扱いもうまいタイプではない、ボックス内でも待ち構えているというよりもオフザボールで駆け引きで勝負してゴールを得点するタイプだと思っていたので、ジェイの役割をそのままやるのは無理だと思ったし、名波さんもその辺は変化を加えるのだろうと思っていた。

しかし、蓋を開けてみれば、ジェイのところに川又を当てはめただけであった。

案の定、ロングボールを放り込まれても潰されていた。

「川又にこの役割をさせるなら、なんでジェイを放出したんだよ!」

と怒ったのを今でも覚えている。

しかし、ここで発揮するのが名波さんの大きな力の一つである「役割を与えて、そのレベルまで引き上げる努力をさせる」というものだ。

これを選手にさせるの簡単ではない。

特にある程度実績や経験のある選手ほどプレースタイルは固まりつつあり、そこに変化をつけさせるというのは容易ではない。

しかし、川又は間違いなく努力をしたし、そうさせるように導いたのは名波さんだと思う。

できないと思っていたものがどんどんできるようになっていくのである。

相手を背負ってもボールキープできるし、雑なロングボールであろうハイボールも負けない、ジェイほどではないにしろボックス内での強さも感じさせた。

開幕前の期待としては「8ゴールくらいしてくれれば成功かな」と思っていたが、まさかの14ゴールである(前年のジェイも14)。

運動量があるため守備もしてくれるので、まさかのジェイの強化版となってしまったのである。

そして、最後に守備について。

前年までは、整備のされてないゲーゲンプレス。

J2では、選手質の差によって奪えたり、奪えなくても対人で無理矢理抑えたり、カミックが止めることで誤魔化していたが、J1ではそうはいかなかった。

特にホームでマリノス相手に1-5で大敗した試合はかなりショックであっただろう。

選手質に差がなく、かつ相手をキッチリ分析して試合に臨むモンバエルツが監督であったため、面白いように裏のスペースを突かれて失点した。

そういった反省も踏まえて導入したのが541のシステムだ。

名波さんは受け身ではないと否定するが、能動的な部分を捨てて、基本は541でブロックを形成する守備になった。

人海戦術だと思ってもらってかまわないと思う。

以前のように裏に広大なスペースがあるということもなくなり、安易に失点をするということは減った(昨年までが酷すぎただけだが)。

システムの変更、選手たちが気合いで体を張ってくれた(気持ち守備)のと、カミックが神すぎたことと、相手のミスなども重なり、失点は大幅に減ることとなった。

2016:総失点50

2017:総失点30

ただ、強調しておきたいのは、守備を改善させるために選択したのが引きこもっての人海戦術であるということだ。

確かに結果は出たが、相手がどうやっても崩せないと思うような強固なものであったかというとそうとは思わない。

また、どう守って、どう攻撃につなげるかという部分もなく、基本は川又とアダイウトンによるカウンターのみだった。

しかし、この戦法はこの組み合わせでのみ成立するもので「どちらかが負傷や移籍などでいなくなったらどうするの?」という不安は消えなかった。

いなかったら、別の策があるという可能性は極めて低かったため、とにかく2人が怪我なくシーズンを終えることを祈るしかなかった。

「今シーズンは6位だった!!来シーズンはもっと上を目指そう!!」などとは、正直口が裂けても言えなかった。


年間:16勝8敗10分 勝ち点58 6位


2018 選手の離脱で改めて露呈した監督の力量

さて、やっと今年の話だ。

今シーズンは、昨年不安に感じていたことがそのまま出てしまった1年だった。

まずは俊輔の怪我の多さだ。

2017年:30試合(先発30 出場時間:2776(分))

2018年:16試合(先発:12 途中出場:6 出場時間:1135(分))

俊輔の離脱によって大きく影響を受けたのがセットプレーだ。

2017:総得点50(内セットプレー:20)(総得点の40%)

2018:総得点35(内セットプレー:7)(総得点の20%)

セットプレーでの得点が13減ったので、仮に減っていなかったとすると総得点48で昨シーズンとほぼ同じとなる。

俊輔の稼働率については、昨シーズンが良すぎただけで、今シーズンの稼働率が今の俊輔の本来の稼働率なんじゃないかと思う。

なので、来シーズンの復活に期待というのは、あまりしない方がいいかもしれない。

次にアダイウトンの負傷離脱だ。

アダがいなくなったことで、ロングボールのターゲットが川又一人になってしまった。

アダのパワーとスピードを武器にしたカウンターがなくなったため、相手からしても守りやすくなったと思う。

それでも川又は頑張ってくれたが、相手の分散していた力が一つになってしまったのだから、負担は大きかった。

終盤に怪我で離脱することになってしまったが、この影響がかなり大きいと私は思っている。

選手の離脱に合わせて戦い方を少し変えて、今いる選手のベストの戦い方を監督が提示できるのがベストだが、それが名波さんはできない。

一応新たなシステムのようなものを試すが、行き当たりばったりという印象で、それが機能しているとはお世辞にも言えない。

怪我人の多さが今シーズンうまくいかなかった原因の一つであることは間違いないだろう。

しかし、その原因を作っているのは監督自身だと思う。

戦術を仕込む力量のなさを運動量でカバーさせているのだから、当然選手の疲労度は大きい。

欧州のトップレベルの試合を観ていると、磐田と負けないぐらいハードワークはしているが、それはどう動くべきなのかをチームで整理された状態でのハードワークだ。

意味あるハードワークと言っていい。

しかし、磐田の場合は整理されていない状態で動くので、無駄走りになることも少なくない。

意味のないハードワークだ。

走る必要性のないタイミングで走っていたり、選手の阿吽の呼吸のようなものを頼りにした動きは無駄で終わることが少なくない。

選手はとにかく頑張っている。

しかし、監督が戦術によって選手を助けられない。

戦術の仕込めなさは、名波さんの致命的な問題だ。

しかし、現場をやりながらこの部分を改善するのは不可能だろう。


年間:10勝13敗11分 勝ち点41 16位

入れ替え戦:勝利 残留


振り返ってみての総括

改めて就任からのことを振り返ってみたが、名波さんの手腕によってチームとしてピッチ上の質が上がったということはほとんどなかった。

チームとしての質が上がったように見えても、それは個々の選手の成長であったり、選手同士の考え方が深まったことによるものであって、名波さんの指導によってチームの型ができたというものではない。

ハッキリ言って、名波さんの戦術を仕込む能力はプロレベルに達していないというのが私の意見だ。

4年半も同じチームを指揮しているのに未だに攻撃においては状況関係なくロングボールを放り込むことや、選手の阿吽の呼吸に任せた即興性による攻撃しかない。

守備は人海戦術でしか守れないというのは明らかな力不足だ。

しかし、そんな手腕でもチームが崩壊しそうになったことは外部から見ている限り一度もない。

それで結果が出ていれば文句が出ないのもわかるが、2016年と2018年の結果を見れば、文句が出ても全く不思議ではない。

なぜそれが起きないかというと、名波さんが日本人監督でNo.1と言ってもいい能力「人心掌握術」をもっているからだ。

並の監督で、名波さんくらいの手腕であれば「あの監督無能すぎ。あいつのせいで勝てない。」と選手が結果の責任を監督に押し付けても全く不思議でない(現に正しい)。

しかし、名波さんの場合「結果が出ないのは俺たち選手が不甲斐ないからだ。まだまだ努力が足りない。もっと努力をして、名波監督の要求に応えられるようにならないと!」なってしまうのだ。

ハッキリ言って試合内容を観る限りなぜそういう思考になれるのかは外部からでは理解できないが、実際そうなっている。

だからこそ、成長したと感じる選手もいる。

小林祐希(ヘーレンフェーン)、川又、アダイウトン、川辺(広島)、航基、大南といった選手はそんな環境で伸びた選手だ。

しかし、問題もあって彼らは戦術理解の部分での成長がないということだ。

Jリーグだけで活躍するのならそれでも問題ないかもしれないが、国外への移籍や代表での活躍を目指すのなら、この能力を成長させることのできない環境というのは非常にまずい。

海外に移籍した選手が「同じ競技とは思えない」と発言したりするが、戦術の規律であったり、そもそも日本では学んだことのない戦術をやるということもあるだろう。

選手たちにできるだけ高いレベルの世界にいってほしいし、個人的には磐田より上のクラブへの移籍であれば、主力の移籍も基本ウェルカムだ(移籍金は残してね)。

しかし、移籍させて”はい、終わり”ではないし、移籍した先でしっかりと活躍してほしい。

そんなときに自由や即興性によって動いている磐田でやっていたいことで非常に苦労することになるのではと勝手に心配になるのである。


長くなってきたので、そろそろ締めに入っていきたいと思う。

名波さんの長所は、先ほども書いた通り圧倒的人心掌握術。

なので、J2に降格してチームがバラバラ状態であった磐田のように、戦術云々とかの前にプロとして闘う集団になっていなかったり、チームの意識がバラバラになっているといったチームにはうってつけの監督だ。

「プロなんだから、闘うなんてそんなの当たり前じゃないの?」と思うかもしれないが、当たり前じゃないです。

なので、そういった根本からの改善が必要なチームにはおすすめしたい。

短所は、何度も書いているが戦術を仕込めない手腕だ。

なので、長くても2年が限界のタイプの監督だと思う。

それ以上は生温い温泉に浸かっている状態で、特に何も起きない。


以上が私の名波さんに対する評価だ(偉そうにすんません)。

来シーズンもほぼ続投が確定したけど、やるサッカーは変わらないだろう(他にないしね)。

ストーブリーグの選手補強にとにかく期待するしかないです。

そこでうまく補強ができないときは、選手が死ぬほど話し合って、選手同士で再現性のある即興性を生み出すことを祈るしかないだろう。

それでは。


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