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ステージの上と下にある感動の違い

小さい頃やっていたバレエ、ピアノ、部活やサークル、振り返ってみると、私は案外たくさんの舞台を経験してきた。それだけではない。最近は他の人のステージを観に行く機会も多かった。

舞台の上に立って、自分がお客さんに何かを届ける立場の時。客席に座って、舞台の上で起こることを見守る時。それぞれに楽しさがあって、どちらも好き。だけど、ステージの上にいる時と下にいる時では、感じるものは全く違う。

ステージの上にいる時は、たまらなく緊張する。今はもう引退したけど、私は大学でオーケストラ系のサークルに所属していた。演奏中、そこにいる皆の集中力が一点に集まって、ひとつの音楽が感じられた時。その瞬間が忘れられない。本当に楽しくて、気持ちよくて、たまらなかった。

そういえば、ひとりでステージに立ったピアノの発表会は、緊張しか感じなかった。自分の演奏を人に聞かせる、聞いてもらうことに、あまり喜びを感じられなかったのだ。

逆にステージの下にいる時はどうだろうか。友達のコンサートとか、そういうものを観に行くと、私はだいたい泣いている。映画の感動的なシーンを観る時と同じくらい自然に、涙が流れてくるのだ。

ステージの上にいたときに感じた緊張は、下にいれば全く感じない。開演前にドキドキすることはあっても、幕が上がってからはリラックスしていることが多い。

リラックスし過ぎて、眠ってしまうことはないけれど、ずっと演目に集中しているわけでもない。だいたいは、注意が舞台から離れて、ひとりで考え事をしている。演奏会で考え事をしていると、音楽が気分を盛り上げて、いつの間にか壮大なスケールになってしまうことが多い。それがまた、楽しいのだ。

緊張感とのギリギリのところで、最高の感動を得られるステージ上。リラックスして、贅沢にもそれを見守ることのできるステージの下。

どちらも好きだけど。どちらの立場になるかは、なかなか自分では選ぶことができない。特に、ステージの上に行くのは難しい。

正しくは、ステージの上に立つのは簡単だ。ホールの予約をとって、演目を決めれば、誰だってステージの上に立つことはできる。だけど、あの感動を得るためには、きっとそれ以上の何かが必要だ。それは観客の人数ではない。ステージの大きさでもない。たぶん、そこにたどり着くまでのあれこれとか、そんなものだ。

私はもう一度、その何かを手に入れることができるだろうか。ずっと胸の奥に残っているあの感動を、もう一度感じる機会は訪れるだろうか。

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