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カメラを止めるな!レビュー

カメラを止めるな!
久しぶりに映画館で同じ映画を二度観たのは君の名は。以来だ。
二度観たのにはいくつか理由がありました。
まずは単純に面白かった。
一度目は六本木の満員の映画館の最前列で観て、手振れする映像に途中で酔ってしまいました。昔ブレアビッチプロジェクトを劇場で観てトイレで吐いた事を思い出しました。そんなグロッキーな状態で完全に集中して観れなかったのにも関わらず、すごく面白かった。(後部席を勧めます!)

あともう一つはこの映画が何故こんなに面白いのか、そして観客達をなぜここまで熱狂させるか、その謎を解いてみたかったのです。面白い事がわかった上での確認作業です。

そしてこうやって映画レビューを書く時は二度観て、パンフレットを熟読しなさいと映画評論家である田中泰延さんが仰っていたのでその教えに従いました。結果から言えば2度観て良かったと言わざるおえない。そもそもこの映画の構造自体が2回観たくなるように出来ている。

冒頭にも書きましたが、君の名は。を僕は2度観たのだけど、僕以外の人もかなりたくさんの方がリピートして劇場に足を運んだのではないだろうかと思います。
僕の身の回りだけで僕が2回、父も2回、妹は3回行っている。嫁も母も弟も一回づつ観ているので身内だけで合計10回観ている事になる。
2回目はもちろん内容がわかった状態で観るのだけど、冒頭のティアマト彗星が落ちてくるシーンで涙が流れました。あと小説の君の名は。もめちゃくちゃ売れてましたけど、あれを読むと君の名は。をめちゃくちゃ楽しく観る事ができます。小説には三葉の母である二葉の事が書いてあるのですが、小説を読んでいるといないとでは、感想が全然変わってきます。三葉の父親が村民に何故緊急避難させたのか?そこらへんが観ていてグッとくるものがありました。そのほかにもサイドストーリーがふんだんに盛り込まれていたので、初見とは違う楽しみ方があるなと思いました。小説も様々な伏線もあって、君の名は。は何度でも観ても楽しめる仕掛けになっていたなと思います。これが大ヒットの秘密だったのでは、と僕は思います。
なのでこの2つの作品はジャンルやストーリーは全然違うけど、大雑把に言ってものすごく2回観たくなる構造はめちゃくちゃ似ていると思います。これから映画を大ヒットさせるなら観終わったらあとに最初からまた観たくなる仕掛けをしておくべきなんでしょうね。

君の名は。の場合は小説でしたが、カメラを止めるな!の場合はパンフレットが実に素晴らしかった。パンフレットを読んで頂ければこの映画がなんでこんなに面白いのか?その答えが全部載っているような気がします。(このレビューも読む必要はないです。)

完全ネタバレ仕様と書いてあるパンフレット、読めばわかるんですけど、この映画の事が全部書かれています。なんなら最後のページに映画全編のセリフも載っています。まさに完全ネタバレ仕様。

でもってこのパンフレットがまた読んでいると、二度観たくなる様に出来ているわけです。

パンフレットの冒頭には水道橋博士のレビューが綴られているのですが、読みながらふむふむふみーと膝を打ちながら読ませてもらいました。その中に『蒲田行進曲』の名前が挙がっていたのですが、僕も観ながらその事は思ってました。
『映画を撮った映画』という事ですね。蒲田行進曲のストーリーもそしてエンディングがまさにそんな感じでした。最近で言えば園子温監督の『地獄でなぜ悪い』で血しぶきを浴びながらカメラを回す映画監督役の長谷川博己が頭をよぎりました。あれも最高の映画を撮った映画でした。
ストーリー構造の事で言えば木更津キャッツアイの表と裏に分けた伏線と回収の2パート制とか、上田監督自身が影響を受けたと言っている三谷幸喜監督は思い出さずにはいられません。マジックアワーなんてもろ『映画を撮った映画』ですからね、あと僕はラジヲの時間をめっちゃ思い出しました。
上田監督はカメラを止めるな!でそれらの作品のめっちゃ良いエッセンスを抽出してこの作品に注入したのだろうなと思います。
余談ですが、カメラを止めるな!パクリ疑惑騒動がありましたけど、構造的な事を言えばこの手のストーリーの作り方って上記した映画やその他の映画でもやり尽くされている事なんで、今更パクリとか何言ってんだろうな、と僕は思いました。結構オーソドックスなストーリーの作り方だなと僕は思ったんですよね。だからそう言った意味でもパクリとは全然言えないわけです。まぁパクリ疑惑に関して言えば一瞬だけニュースになっただけで炎上せずに自然鎮火したので、観た人達みんなが『パクリじゃないだろ!』と思ったって事ですよね。パクリの事はもういいっすね。はい。

ストーリーや構造の事も、もちろん大切なんですけど、この映画の魅力を分かりやすく二点あげるとしたら、配役と37分ワンカットだと思います。(ごめんなさい普通の事を言ってます)

ワンカットシーンは2017年の6月に撮られたのですが、役者達はその半年前の1月に集められてそこから3ヶ月間ワークショップをして、それから上田監督は脚本を書き始めました。
エンドロールを見ていてあれっと思った人も多いと思うのですが、演者と役名の名前がほとんど一緒なんですよね。例えば劇中の監督 日暮隆之をやっている役者さんは濱津隆之さん。その娘の日暮真央→真魚(まお)さん。アル中俳優の細田学→細井学さんetc パンフレットの人物相関図を見ると役名と役者名がほぼリンクしている事がわかります。監督も言っているのですが、この映画の脚本は当て書きされているんです。
3ヶ月間のワークショップを経て、その役者さんが語りそうな言葉で書かれているわけです。
実際、パンフレットの中でカメ止めキャストの座談会を読むと監督の娘、真央役をやった真魚さんは「おばちゃん!」「おっちゃん、判断、早く判断!」って言い出しそうなキャラクターしているんですよね、読んでいて笑っちゃいました。
キャスティングひとつ取っても、こういう事の積み重ねで良い作品が出来るのだなとしみじみと思いました。低予算と言われたこの映画ですが、金をかけずに手間掛けてるんっすよ!(真央風に言ってみた)
映画一本撮るのにその役者がどういう人間性の持ち主かを知った上でキャスティングして、脚本書くとこんな事になっちゃったりするんですね。でもこの手法は【演じる】という所から更に一本踏み込んだ領域に達するのかもしれないなと思いました。話はちょっと逸れますが、是枝監督が同じ役者を使うのには、この『監督自身が役者の人間性を理解している』という点があるのかもしれないなと今ちょっと思いました。なんで是枝監督が良い作品を撮り続ける事が出来るのだろうかとずっと考えているのですが、この辺りに秘密が隠されているのかもしれませんね。役者の人間性の理解。キャスティングの素晴らしさについてはこのくらいにしておきましょう。一人ひとりの役者さんについて語りたい所ですが。

そして2つ目のすごい所。
37分のワンカット。
僕は映画撮影の知識はあまりないのですが、この37分ワンカットの大変さは、まさにこの映画を観ていればわかりますよね?だってこの映画『37分のワンカットを撮るのがどれだけ大変かがわかる』映画なんですから!
実際にこの映画を撮った技術スタッフの座談会がパンフレットに載っているのですが、最初この企画を聞いた時にスタッフ一同「無理!」って思ったそうです。ワンカット風にするって意見も出たそうです。でも監督はワンカットにこだわって撮ったわけですが、本当そういう話を聞いて、これはゾンビ映画をワンカットで撮った人達のドキュメンタリーだなって思うわけです。実録ですよ、ノンフィクションですよ、マジで嘘偽りのない『ゾンビ映画を撮った人達を撮った映画』なんですよ、だからジャンルは【ドキュメンタリー映画】でいいと思います。よく『作品に対する熱量』なんて青臭い言い方しますけど、まさにこの映画はスクリーンから製作陣の意図してない熱が溢れ出ちゃってるんですよね。監督、役者、スタッフさん達の!

はぁーパンフレットをもう一度熟読した上でもう一度観たい。ポスターに書いてある『この映画は二度はじまる』の意味を何度も理解する、そんな映画です。ではでは

#カメラを止めるな #カメ止め

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