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鹿児島県三島村を踏破 その5<日本全市町村踏破(制覇)>

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2017年12月30日午後、鹿児島県鹿児島郡三島村、薩摩硫黄島。安徳天皇墓所から、さらに島の奥に向かう。

道路脇の森の中に、孔雀を発見!この後もう少し近付いたら、逃げて行った。羽ばたかず、鶏のようにすばしこく走って。この巨体がすばしこく巧みに向きを変えて木々の間を走り去って行く様は、早回し映像のようだった。

硫黄島には、多数の孔雀が生息している。元々生息したものではないのだが、70年代にリゾート開発を行ったヤマハリゾートが持ち込んだ。リゾートは80年代に閉鎖され、ホテルは原状復帰されて更地になっているのだが、孔雀は野生化した。孔雀は南方の鳥なので、北端とは言え南西諸島にあり、地熱も豊富な硫黄島は、孔雀には快適な環境なのかもしれない。島民も別に困っている様子でもない。

なお、ヤマハによるリゾート開発が行われた際には、飛行場も整備し、こちらは村が引き継いで運営している。鹿児島空港から、週二便の定期便がある。

硫黄島を黙々と歩いて北上して行く。両側は竹林。硫黄島は竹が非常に多く生えている。溶岩台地や火山灰土でも育ちやすいのだろう。

南の島らしく、年末に早くも椿の花が落ちていた。

道は上り坂になって、西側の鬼界カルデラ外輪山が見えて来た。確かに屏風のようで、外輪山の趣。

歩いて東西5.5km、南北4kmしかない小さな島だが、最高地点は標高703mで地形は険しく、集落以外はほとんど全面的に坂道だ。島内の公共交通機関もない。レンタサイクルはあるのだが、以前書いたように、年末年始は、フェリー以外、島の全てのサービスが休みとなるため、今回は利用出来ず。フェリーで車等持ち込むのでなければ、歩いて島を巡るしかない。

黙々と歩いて行くと、硫黄岳の全容が見える場所まで来た。火山、竹、電柱、道路。異様な組み合わせだ。なお、硫黄島の竹は「大名竹」で、日本人が一般的に「竹」と認識するマダケとは種類が異なる。ここから、もう少し真っ直ぐ(左)進む。

そうして辿り着いたのが、俊寛堂の入口。

謡曲史跡保存会の案内板。日本中の伝説伝承地を訪ねる筆者にとってはおなじみの存在だが、硫黄島は想定していなかった。

竹の壁と苔むす地面の、緑の参道を進んで行く。

そして、俊寛堂に到着。参道は結構長い。

俊寛堂は、自害して果てた俊寛を哀れんで、その居住地(庵)跡に、「鹿ヶ谷の陰謀」発覚で流刑となった三人を祀ったものと伝わる。正式には御祈神社(「みのり」または「みのみ」と読むのだろうか)というらしい。盆には、海岸で「柱松の行事」という、俊寛の霊を祭る送り火の行事があり、柱の高さは20mに及んで、炎は屋久島からも見えるとのことだ。

俊寛堂の建物は、神社仏閣建築としては極めて特異だ。まるで竹で編んだ籠のような壁である。いや、この島に竹が多い事を思えば、本当に竹なのだろう。「地元で調達出来る建材」で作った結果なのだろうが、非常に神社仏閣離れしている。ポリネシアとか、南洋の島々を彷彿とさせる建物である。

なお、内部には、三つの石が御神体として祀られていた。上述のように、「鹿ヶ谷の陰謀」で流刑となった三人を祀る為だろうが、前回の投稿に書いたように、硫黄島の聖所が熊野三山に対応しているということが言われているので、三つの石が御神体というのは、熊野信仰と関係ある気がする。

俊寛堂に参拝した後、少し道を戻って、先程硫黄岳が見えた交差点で、別の道に入る。

硫黄だけがどんどん間近に迫って来た。

途中に、岳之神という神社への入口があってので、参拝する。こちらの参道はさして長くはなかった。

岳之神は「たけんかん」と読み、蔵王権現が祀られているとか。フェリーから硫黄岳と港の間に見えた、稲村岳の登山口だったらしく、その遥拝所としての機能を持っていたらしい。平家物語の内容との関係も考察されている。戦後、硫黄岳に祀られていた祠も、ここに合祀したようである。

岳之神の社殿。背後の竹林の隙間から、硫黄岳の山肌が覗く。

岳之神の境内には、榊のような一本の御神木があって、根元に石積みの小さな祠がある。奥に稲村岳の山頂が少し見え、方角的に一致しているので、この祠が稲村岳の遥拝所なのだろう。岳之神の社殿は九十度向きが違い、むしろ硫黄岳を拝むような方向だ。背後の森の際では、石蕗が黄色い花を咲かせている。

岳之神参拝後は、硫黄岳と稲村岳の間の道を下り、南西の海岸へと向かって行く。稲村岳は山頂まで木々に覆われて穏やかな山容だが、活動が盛んでないだけで、こちらももちろん火山である。

硫黄岳も間近い。ただしこの位置からは火口が見えにくいので、比較的穏やかに見える。

やがて、硫黄島熊野三山最後の一山、那智を望む場所に辿り着いた。

とはいっても、硫黄島の那智には、社殿はない。ただ、大雨が降ると、硫黄岳の絶壁から、那智の滝のような滝が出現するという事だ。

那智の展望台のすぐそばは、谷になっていて、そこだけ竹が生えず、河原石のようなものがゴロゴロしている。恐らく、「那智の滝」が見えるような雨が降る時は、ここも川となるのだろう。「那智の滝」の下流にあたるのかもしれない。

「那智の滝」の展望台まで来れば、海岸はもう近い。雲間に沈む夕日が見えた。

次回は、硫黄島の温泉に入浴。

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