ケツを割るって?

 今日も、朝から作業が始まると真っ先に全員の洗濯物を数えてチェックし、洗濯工場へ出す。
 帽子の選択もあるから全部洗い替えと交換。昨日の最後の休憩で使ったコップを洗い、布巾を洗濯機へ。
 黒板の予定表を張り替えたら新聞を一枚ずつプレートに挟んで表にかける。運動時間を削ってまで、訓練から帰ってきたやつの荷物をチェック。便所掃除を急いでやったら展示棚にはたきをかける。食堂のテーブルを拭いてふきん、爪楊枝、コップ、箸を並べる。飯が届くと一人で配食。昼食後の休みも気が休まらない。作業ズボンの修理を受け付けて伝票書いてハンコをもらい、新しいポスターが来たので貼り替える。
 洗濯物が届いたら大急ぎで畳んで40人分のロッカーへ。残りの洗濯物は、帰りに持って行けるよう、検身場のロッカーに用意する。そして明日の朝来る下着を棚に準備。
 マットを敷いて、ハンガーを用意して、昨日窓がひとつ開いていたと注意された所を閉めに行く。
 一日中動きっぱなしだよ。それも時間に追われる始末だ。
 ゆっくり、じっくり木工の機械使って工作してた方がよっぽど楽だ。
 ちくしょう、もう
 「ケツ割ろうかな」って具合に使うのがこの(ケツ割り)だ。
 やめちまうってこと。
 「ケツ割ったよ」と、よく言うけど、要はギブアップしたということだ。結局はむづかしいとか、荷が重いとか、ついていけずに逃げ出すことだ。
 懲役はこういうカッコつかないことをカッコつけた言葉で誤魔化すところが結構あるんだな。
  
しかし、作業には本当に参っているが俺にギブアップはない。
 俺の懲役事典には、「ケツ割り」の文字はないのだ。楽勝だよ。

PS 嫌な仕事だったな。でも負けたくなかったんだな真面目な俺は。

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