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「オフラインの存在しなくなる時代」に必要な視点転換 #アフターデジタル

デジタルトランスフォーメーション、AI、キャッシュレス・・・

こんなワードを毎日のように耳にするようになりました。
時代の流れが大きく変わってきていること、デジタル化に対応していかざるを得ないこと、は多くの方が肌で感じいることだと思います。

下記は少し前にSNSなどで話題になっていましたが、平成元年と平成30年の世界時価総額ランキング。この30年足らずで顔ぶれが大きく変わり、なんならカタカナだらけになっている。

では、
世界はどう変わってきているのか?
日本企業はデジタル化をどう推進していくべき?
視点転換にあたり考え方の根幹となるものは?

これらの疑問・不安に対して向き合うヒントが、本書に詰まっていました。

『アフターデジタル』は、ビービットの藤井 保文さんと尾原 和啓さんの共著。

この世界の変化においてもっとも重要なことは、「オフラインがなくなる世界の到来にあるといいます。

今まで取得できなかったあらゆるデータが個人に紐づくようになる。
オンラインとオフラインの境界線はどんどん曖昧になる。

まさに「金融資本主義」の時代から、「データ資本主義」の時代へ突入しようとしている時代の真っただ中、どう視点転換していけばいいのか。

個人的に書き留めておきたいポイントが多かったので長くなってしまいましたが、興味のあるところをちら見していただければと思います。

世界のデジタル推進事情にも言及されており、視野も広がる一冊でした。


■デジタル化する世界ーオフラインは存在しなくなる

多くの日本企業は「デジタルテクノロジー」に積極的に取り込んでいるが、その多くは「オフラインを軸にしてオンラインを活用する」というもの。
例えば「オンラインでも実店舗のような接客を」とか、「無人レジを一部導入してみる」といった取り組みにとどまる。

対して、世界を見渡すと、米国や中国や北欧都市などでは、既にオンラインとオフラインの主従逆転が起きている。ベースにオンラインがあり、オフラインは「信頼獲得可能な顧客との接点」という位置づけである。


■「ビフォアデジタル」から「アフターデジタル」へ

===ビフォアデジタルの世界===

オフラインが中心、そこに付加価値的にデジタル領域が広がっている世界。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

===「アフターデジタル」の世界===

モバイルやセンサーが実世界のあらゆる接点に置かれ、リアルの行動も含め、あらゆる行動が常時オンラインデータ化される世界。
アフターデジタルの世界では、オフラインはデジタルに包含され、現実世界に「オフライン」がなくなっていく。

たとえば…
・電子決済によってリアルでの購買データもとれるようになる
・シェアリングサイクルやアプリ連携したタクシーによって移動データもとれるようになる
などなど

つまり、これまでオフライン・オンラインと別々に捉えていたけど、そうではなくて、オフラインとオンラインの境界はどんどんなくなっていきますよという考え方。


■アフターデジタルの世界で起こっていること

行動データのオンライン化

 ↓ ↓ ↓

社会システムの大きな変化

たとえば、中国で起こっている「信用・評価社会」化。
例1)中国のジーマ・クレジットという支払い能力を可視化したスコア

あらゆるデータをもとに個人の信用スコアが算出され、ビザが取得しやすくなる・賃貸借りやすくなる・融資受けやすくなる等、スコアに応じて信用が判定され、受けられるサービス範囲が決まる。最近では、メルカリのようなCtoCのサイトで「ジーマ・クレジット〇点以上」のようなフィルタもできた。

例2)最近東京進出も果たしたタクシー配車アプリであるDiDi

DiDiは実はただの配車アプリではなく、個人の評価システムを基盤にしたサービス。ドライバーは配車リクエストへの応答時間、応答後にユーザーを待たせた時間、運転の速度や丁寧さ等、すべてデータ化されドライバーが評価される。ドライバーは頑張ってスコアを上げれば、給与に反映されたり、融資額が増えたり、いいことがある。

 ↓ ↓ ↓

社会を構成する人々の行動の変化

常に行動データが取得され、そのデータが個人の評価スコアに繋がるシステムになることで、善行を積もうとする人が増える。
著者も実際に「中国がおもてなし社会化している」のを中国にいた際に肌で感じていたそう。

「人の変化に合わせて社会システムが変わる」のではなく、「デジタル化が起点となり社会システムが変わり、それが人の行動を変える」という流れは、現代特有のものなのだろうと感じる。

一方で、「人の行動を変える」ことができたのは、企業が一方的にデータ活用し利益を上げようとするのではなく、人々のインセンティブ設計までうまく考慮されているからだろうなとも思う。
そのへんが中国はすごく上手なのだろうなと。

下記部分がそれを如実に表しているなと思う。

中国の若い先進企業とこうしたアイデアを話すとき、いつも「それは、買い手と売り手にとってどんなメリットがあるの?」 という質問が出てきます。実利主義だからこそ、インセンティブ設計をしっかり行い、Win-Winの関係を作ろうとするのです。
日本企業はサービスを単純に模倣するのではなく、こうした姿勢から学び、ユーザーの生活や社会システムをどうアップデートするのかという視点で考える必要があると、強く感じます。


■既存型事業におけるデジタルシフトの例も

アリババのようなイケイケスタートアップでなくとも、うまくデジタルシフトし、アフターデジタルの世界に大躍進を遂げている企業として、平安保険の事例が挙げられている。

平安保険は、1988年創業で元々は普通の保険会社。デジタルシフトに成功し、現在は、保険以外にも医療・移動・住宅など多岐にわたる事業展開を行い、2018年の時価総額ランキングで、私企業のなかではアリババ、テンセントに続いて第3位となっている。

彼らが大躍進を遂げたポイントは「エクスペリエンスx行動データを重視し、長期的かつ徹底した顧客志向経営を行った」こと。

これは簡単にいうと、すべての顧客体験をちゃんとデータ化し、購入時の接点だけでなく、その後長期的に顧客が喜んでくれるような体験価値を提供しようという考え方。商品はあくまで数ある接点のひとつと考える。

保険会社には、契約後に顧客との接点が少ないという課題があった。平安保険はその弱みに気が付き、打開策として、保険事業を中核としつつ、その枠を超えて、デジタルサービスを使った生活圏へと大きくビジネス展開をしたそう。(下記参照)

特に有名なのが「平安グッドドクターアプリ」という医療アプリ。
・医療を受けるにあたって様々なハードルがあった中国の社会的問題に着目し、ユーザーにアプリ利用の動機付けを行った
・1日の終わりにアプリを開くことでその日の歩数分を換金できるインセンティブを設け、継続的にユーザーと接点をもちデータを貯められる仕組みを作った
・継続的に行動データをとれるようになったことで、そのデータを活かしてぴったりのタイミングで個々人にあった営業を行えるように

「データが最強の営業ツールになる」と理解したうえで、「長期的に顧客と良好な関係性を築く仕組みづくりに投資し成功した」という点で、とても秀逸なビジネスモデルだと感心しました。


■デジタル時代のビジネスは「寄り添い型」

デジタル時代のビジネスは「寄り添い型」になる。その際に必要な視点とは?エクスペリエンスと行動データのループが競争原理の根幹になっていく。

・オフライン行動のすべてがデジタルデータ化し、その保有と活用が鍵
・行動データは1人当たりの量が重要であるため、ユーザーとの接点は高頻度であるほうが望ましい
・行動データをため続けるには「楽しい、便利、使いやすい」といった体験品質の高さが必須
・データを活用することで、適したタイミングで適したコミュニケーションでのアプローチが可能になり、体験がさらに改善

オンラインがオフラインを侵食して溶け込み、ユーザーのあらゆる行動データが一つひとつ取得できる時代になったので、そのデータをフル活用してユーザー体験を高めていくビジネスモデルを構築できます。もっといえば、そうしたモデルを早く構築した企業が勝ち残るのです。


■OMO型ビジネスへの視点転換が必要

アフターデジタル時代に成功企業が共通して持っている思考法は、OMO(Online-Merges-Offline)という概念。
オンラインとオフラインが融合し一体のものと捉えたうえで、これをオンラインにおける戦い方や競争原理として捉える考え方

前述のとおり、今は「リアルな場所や行動も常時オンラインに接続している環境」が整ってきているので、「オフラインが存在しない状態」を前提として、ビジネスをどう展開していくかを考える必要があるということ。

行動データや接点を正しく使うことができないと、世界的なデジタル企業に太刀打ちできない時代になってしまったということ。

著者が中国企業を訪問した際に、「なぜオンライン企業なのに、実店舗もやるのか?」という質問をした時のエピソードがとても印象的だった。

「オンラインとかオフラインとか、そのようにチャネルで分けて考えてはいないんですよ…そもそもそういうチャネルで分けた考え方は、すごく企業目線だと思っています。今の時代は、OMOともいわれるように、オンラインとオフラインは既に溶け合って違いはなくなりつつあると考えるのが当たり前なんです。顧客はチャネルで考えず、その時一番便利な方法を選びたいだけですから
「我々にとってはモバイルもPCもコンビニも、ただのユーザーインターフェースでしかありません。
・・・
顧客は『オンラインとかオフラインとか』といちいち考えておらず、 その時最も便利な方法で買いたいだけなので、我々は様々な選択肢を提供することが大事だと思っています。そのために無人コンビニも展開しているのです」

これまでのO2Oというのはあくまで企業視点の考え方だったのに対して、OMOは徹底して顧客視点に振り切った考え方というのが大きな違い。


■OMO転換におけるポイントと注意点

OMOでのポイント

・ユーザーが必要な状況に合わせて、一番便利なチャネルを自由に行き来できること
・データとUXをプロダクトに返すこと
・リアルも含めた高速改善をすること

OMOでのよくある失敗例

・効率とテクノロジー中心の無人化
日本でも店舗の無人化が話題になっていたが、無人化すること自体には大して意味はない。OMOの観点で考えると、今後はリアルな行動データをいかに集め解析していくかという視点が大事。

本質的ではないオンライン技術の部分的導入
日本で起こりがちな逆OMO現象。「無人店舗やデジタル技術の導入」ことを起点に考えがちだが、最も重要なのは、取得したデータをいかに顧客ごとに繋げて考えられるか。そのためには、すべての店舗のデータを扱えるようにならないと意味がない。その準備ができていないのに、一部でオンラインを施策を進めようとする。

・顧客属性データがあれば何かできるという幻想
顧客属性データはあるに超したことはないが、それだけたくさん持っていても価値がない。そこに行動データが繋がって初めて「最適なタイミングで最適なものを」の世界観に近づける。

・オフラインを主軸に、今後はオンラインもしっかり活用したい
そもそもオンラインとオフラインを分けて考えることから脱却する必要がある。顧客はオフライン、オンラインどちらで買おうと意識することなく一番便利な状態をいつでも選択できることが重要。


■日本企業はどうデジタルトランスフォーメーションをすべき?

アフターデジタル時代における競争原理は2つ。

(1)高頻度接点による行動データとエクスペリエンス品質のループを回すこと。 

・いかに顧客と高頻度の接点をつくれるか
・その結果、いかにスピーディにUXに反映していけるか

よいエクスペリエンスを提供する着眼点として、接点をハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの3つに分けて、それぞれ対応内容や頻度を使い分けることがおすすめされている。

直近でいうと、各種決済系のサービスがテックタッチにおける頻度を高めるために、立て続けに施策展開しているのだろうなと思います。

また、このテックタッチが少ない人材や不動産といった既存事業においては、この考え方を取り入れていくことで、また違ったビジネス展開の可能性が多いにあるとも感じます。

(2)ターゲットだけでなく、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション形態で提供する

・「顧客理解」と「即時性」をより高めていくこと
・そのためには、テクノロジーの力が重要。予測精度の向上、できるだけ速く多くの情報を処理できることが必須。

平安保険の社内データプラットフォーム「LCCH」が代表例。顧客ごとに過去のやり取りや行動を収集しカルテ化されており、顧客が好むであろうサービスまで予測されている。これにより、単一接点型から常時寄り添い型になる。


■アフターデジタルがもたらす産業構造の変化

一昔前までは、今ある商品を売り切ればよかったので、メーカー主導で、流通や小売店が付属して存在するという構造だった。

しかし、単一接点型から常時寄り添い型になることで、「中長期的にデータをやり取りできること」が大事になってくる。そうすると、購買データをより多く持ち、それを顧客IDと繋げられるプラットフォーマーがトップに君臨する図式が生まれる。

つまり決済のプラットフォーマーが最上位にくる。だから各社こぞってそのポジションを確保しようとしている。

ここで重要なのは、「どういうポジションをとるのか?」という視点。
決済プラットフォーマーを目指すにしても、ユーザーから見た必然性や資金力など加味したうえで、売り手買い手双方に十分なインセンティブを提供できなくてはならない。その点を各社がどう考えているのか気になる。


■まとめ・今後どう活かせそうか

大事なところを再度まとめ。
・オフラインとオンラインは融合していく。オンラインをベースにオフラインを位置付ける視点転換を行おう。
・顧客起点のOMOでビジネスを考えよう。
・データを取得すること、そしてそれをUXのスピーディな改善に使い、さらにデータを取得できるようにしよう。
・既存事業でもアフターデジタル時代へのシフトはできる。

世の中まだまだオンラインで完結できない事業は多い。
わたしはいま人材系の事業に携わっていますが、まだまだオフラインがとても強い領域だなと感じているし、どうしてもわかりやすい顕在層に対してのみピンポイントで接点をもつような構造になりがちです。

本書における平安保険の例を見て、現時点でまだオフラインが強い既存事業においてもまだまだ変革のチャンスが多いにあるなと感じました。

これまで接点を持てなかったポイントでどう顧客と接点をもち、データ化し改善に活かしていくのか。そして顧客体験を改善し、企業に対する「すき」を増やすのか。

間違ってはいけないのは、目的はデータをとることでも自動化することでもなく、「顧客視点で考え抜けるか」ということ。

興味をもった方はぜひ読んでみてください^_^



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Yatsuka / マーケ

好奇心で生きている。知らないことを知ること、やったことないことやるのが割と生きがい。

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読んだ本の書評をかいていきます。マーケティング系の本が多めですが、気になる本はジャンル問わず読みます。
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