お金2.0【書評】分散化される社会で求められるもの

「お金をつかう痛みが前よりなくなったな…」

最近ふと、気が付いた。

1年前くらいからLINE payを使いはじめ、そこからLINE payでほぼ日常的なお金の支払いをすませるようになったことが大きい要因な気がする。

LINE payがあれば大体なんでも買えてしまうので、お札や貨幣がこれまで絶対的に価値のあるもののような感覚でいたけれど、その自信が揺らいでくる。貨幣は「価値がある」という共通認識をみんなが持っているからこそ価値をもっている。元々は物々交換で成り立っていたのを効率あげるために仕組み化したのが「お金」だと考えると、「お金」に代わる何かが出てくるのは、何ら不思議なことでもない気がする。

一方で、その「お金」が要因で苦しんでいるひとがいたり、世の中の争いがうまれているという事実もある。
わたしも漠然とだけど、お金に対する不安は常に抱えている。多くの方が、少なからずそういう気持ちはあるのではないかと思う。

仮想通貨やいま話題のpaypayといった電子決済など、新しいお金の概念がここ数年で登場しているのも感じていたので、「お金の正体って?経済の仕組みって?」というのが気になり、本書を手に取った。


「お金がなにか」の解について、著者は、「お金は「ツール」である」と結論づけている。
お金を「ツール」と認識することで、「人生で本当に何をしたいか?」考えるスタート地点にたつことができるという。

本書を通じて、経済の構造やお金の正体を知ることで、
「お金は絶対的な価値をもつものではない」
というさもあたり前かのことに気が付き、お金に対して抱いていた漠然とした不安が少し和らいだように思う。

お金は生きる手段として、確かに必要。
でも、お金を目的にする人生はあまりに味気ない。
最終的に自分の大事にしたい価値観を突き詰める生き方をするために、お金をツールとして認識し、構造を理解し、そのシステムをうまく使っていくくらいの気持ちで位置付けたいなと思った。


本書では、資本主義の中心的存在である「お金」を軸に、お金や経済とは何なのか、価値とはなにか、現代の中でどうお金とかかわっていくべきか、といった観点で話が展開されていく。全体構成は下記のとおり。

第一章:お金や経済は何なのか、どういう構造をしているのか
第二章:テクノロジーによりお金がどう変化しているのか
第三章:お金を中心とする資本主義から価値主義へ
第四章:お金から解放される生き方
第五章:人類の進化という視点からとらえるお金の姿


「世の中の仕組み」という観点で、個人的に興味深かった点を3つピックアップしてみた。

1.「原理原則」を理解することで見えてくるもの
2. 世の中の仕組みはマトリオ―シカ的
3. 分散化する世界で必要になる存在

1. 「原理原則を理解することで見えてくるもの

経済システムはひとつの大きなネットワークである。よって、経済システムもネットワークの性質に従う。

なかでも経済は「欲望が主要因となるネットワーク」という特徴がある。

持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」には、欲望の構造を理解してつくられた5つの共通点がある。
① インセンティブ
② リアルタイム性
③ 不確実性
④ ヒエラルキー
⑤ コミュニケーション

これに加え、⑥寿命による移動先 ⑦共同幻想 が加わると安定性と持続性が担保される。

この経済システムは、組織戦略やプラットフォーム戦略に当てはめても同じようなことがいえるというのがとても興味深い。

たとえば、会社という組織をひとつの経済システムとしてとらえたとき、よい会社とはこのような感じだろう。
①報酬設計がしっかりしている
②日々変化があり、ほどよい刺激と緊張感がある
③ビジネスの結果に適切な不確実性がある
④頑張れば評価される仕組みがある
⑤フラットに声をかけあえる環境がある
⑦組織内で実現したビジョンが共有されている

TwitterやFacebookといったSNSをひとつの大きな経済システムととらえると、広くつかわれているプラットフォームは同じような構造をしているのがわかる。報酬が金銭的報酬なく「いいね」などの心理的報酬であるのが、現代ならではの特徴でもある。

これらの要素は、今後プラットフォーム戦略を考えるにあたっても、成功確率をあげるチェックリストとして大いに機能しそう。

個人的には「⑦共同幻想という概念」は見えないけれど、最も大きな威力を発揮しうるものだと思う。共同幻想に関して印象的な記述は下記。

コミュニケーションが弾力性のある接着剤だとすれば、世代を超えて引き継がれる共同幻想は、瞬間凍結させる液体窒素のようなものだと言えます。 反対に言えば、「世界を変える」とは、前時代に塗り固められた社会の共同幻想を壊して、そこに新しい幻想を上書きする行為に他なりません。 国家、通貨、宗教、偏差値、学歴、経歴、年収、資産、倫理、権利など、私たちの精神や行動を縛る概念のほぼ全てが人工的に作られた幻想ですが、これらの効力が薄れ、時にはまた別の幻想が誕生し、人々の新たな価値判断の基準になっていきます。


また、上記の経済システムの原理原則は、あらゆるサービスにも展開できる話だとも感じる。むしろ、これからの時代は「GOODなサービス」だけではだめで、こういった「人間の根源的な欲望を満たすためのサービス」といった観点が必要になってくる。
そしてきっとそれらはコピーされにくいので圧倒的な「選ばれる必然性」になるはず。


2. 世の中の仕組みはマトリオ―シカ的

結局、すべてのシステムは自然の原理原則に従っているよという話。

自然の中に社会があり、社会の中に企業があり、企業の中に部署があり、部署の中に人間がいて、人間の中に器官があり、器官の中に細胞があるといった風に。 

「全く関係のよいように見えるようなことでも、実は根底は同じなんだな」と思ったことが何度かある。なので、確かにこういうことだったのかなと妙に納得。

見た目や呼び名は違うけど、そこにある原理原則はおなじで。逆に考えると、物事がうまくいかないときは、自然の摂理に反することをしているのかもしれない。

経済も自然も脳も、いずれも膨大な個体で構成される有機的なネットワークであり、情報やエネルギーを交換しながら全体がまるで1つの生き物のような振る舞いをします。
経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象は「創発」と呼ばれます。今後はこのような構造を使いこなす「創発的思考」とも言える思考体系が必要になってくると考えています。

3. 分散化する世界で必要になる存在

これまでの日本社会では、中央に管理人がいてそのひとが統括しているという構図が当たり前だった。経済システムについても、中央銀行が絶対的な権限を握り、管理してきた。

これがインターネットの力により、オンラインで「直接」かつ「常に」繫がっている状態が実現してきたことで、構造が崩れつつある。
いわゆる「ネットワーク型の社会」への変貌。

では、この分散化が進み絶対的権力がなくなる時代では、何が大きな力をもつようになるのか?

分散化が進んでいくと情報やものの仲介だけでは価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力を持つようになっています。

「個人が力をつけること」が求められ、「個人が力をつけることを支援する存在」が重要になってくるということ。

提案者は、自らネットワークの中心にたつのではなく、あくまでもネットワークが魅力的なものになり活性化していくための場所づくりをすることが求められる。

個人のブランド化が叫ばれている背景も、おそらくここにあるのですね。


さいごに

「お金」という枠にとどまらず、想像していたより大きな視点から世の中を観察し、その中でどう生きていくかを提案してくれる一冊だった。

価値主義の世界ってなんだろう?という方は、ぜひ末章にある「お金から解放される生き方」について、読んでみてほしい。価値主義化する世界で生きていくポイントは、
熱狂できる好きなことを見つけること。
オリジナリティ・個性を活かすこと。
自分の価値を高める働き方をすること。好奇心をもつこと。

人生の意義や目的とは欠落・欲求不満から生まれるものですが、あらゆるものが満たされた世界ではこの人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつあります。
人間は物質的な充足から精神的な充足を求めることに熱心になっていくことは間違いありません。これから誰もが自分の人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上がっていくことになります。
人生の意義の話も踏まえて、価値主義の世界ではどんな働き方や生き方がスタンダードになっていくでしょうか。答えは非常にシンプルで「好きなことに熱中している人ほどうまく行きやすい」世の中に変わっていきます。


資本主義から「価値主義」の時代になっていくなかで、いち個人として自分の人生にどう向き合っていくべきか?そして、いちマーケターとして顧客に提供したいものはなにか?を改めて問い直してみたいなと思う。

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Yatsuka / マーケ

好奇心で生きている。知らないことを知ること、やったことないことやるのが割と生きがい。

読んだ本まとめ

読んだ本の書評をかいていきます。マーケティング系の本が多めですが、気になる本はジャンル問わず読みます。
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