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【読書記録】2022年もっとも印象に残った1冊

大学の仲間と興した文芸同人誌「しんきろう」が10周年ということで、かつての仲間うちでLINEグループをこしらえ、なにやかやと意見交換をしています。今回のお題は「2022年もっとも印象に残った1冊」ということで。

『月の番人』(トム・ゴールド/亜紀書房)

絵本サイズの海外コミック。谷町六丁目のブックカフェ「書肆喫茶mori」さんでひと目惚れし、その場で購入しました。

過疎化が進む月のコロニーを守るひとりの警察官のお話。犯罪はゼロだけど、数少ない住人たちはひとりひとり地球に帰っていく。転属希望を出しても、ポンコツなセラピーロボットが送られてくるしまつ。唯一の楽しみはコーヒーとドーナツ。閉館間際の博物館を抜け出して彷徨うニーム・アームストロング船長の自動ロボット。静謐な月面にもときおり発生する会話の軽妙さ。そして最後の人たちを乗せた地球行きのシャトル……。「パーティが終わってみんなが家に帰っていくのを見てるみたいな感じだ」。
たむらしげるさんのような絵柄のシンプルな二色刷りが、ささやかな絶望と日常のあわいをユーモアに描き、主人公の表情からはどんな驚きも悲しみも読み取れないけれど、頼みの綱のドーナツスタンドがエラーを起こしたときだけ眉がひそめられるのがよい。

この世界観がいかにわたし好みであるか、ゴタンダクニオの代表作「月の中にいる男」(2006年~)をご存知のかたならわかってくださると思います。

ニューYCにて

蛇足ですが、読書メーターにつけている記録から、去年読み了えたものを列挙しておきます。下半期はほとんど読む時間がありませんでしたね。

2022年
2月
『一冊でわかるロシア史』(関 眞興/河出書房新社)
3月
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹/新潮社)
4月
『つむじ風食堂の夜』(吉田篤弘/ちくま文庫)
5月
『ノラや』(内田百閒/中公文庫)
6月
『宇宙のあいさつ』(星新一/ハヤカワ文庫)
『バベットの晩餐会』(イサク・ディネーセン/ちくま文庫)
7月
『星の街から―誰でもなれる宇宙飛行士訓練日記』(菊地涼子/小学館)
10月
『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』(奈倉有里/イースト・プレス)
11月
『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』(益田ミリ/幻冬舎文庫)
『月の番人』(トム・ゴールド/亜紀書房)

詩集は少しずつ読んでいるので、読了記録がつけられていません。
『竹中郁詩集』(竹中郁/現代詩文庫)、『パスタで巻いた靴』(素潜り旬/港の人)、『左川ちか全集』(左川ちか/書肆侃侃房)、『二ーネ詩集 自分のことができたら』(大塚久生/点滅社)などを購いました。
ほか絵本では『星の帆船』(ウィリアム・M.ティムリン/立風書房)、『世界魔法道具の大図鑑』(ピエルドメニコ・バッカラリオ他/西村書店)、『にちようび』『とおいとおいおか』『ほしがながれてクリスマス』(谷内こうた/至光社)など。

これでも年末に整頓したのです

(毎年言っているような気もしますが)2023年の抱負のひとつは積読の消化。
かといって読みたい本があれば片っ端から読書メーターに登録していくようにしているので、フリー電子ZINE「蟄居通信」の本紹介の端っこに、今年は未読本コーナーを設けようかとも考えています。
(蟄居通信についてはこちら。)

今年も素晴らしい1冊に出会えますように。


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