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2024清明日記

コロナが世界を席巻しはじめてから、不特定多数に接するバスの運転手さんやレジの店員さんとのやり取りの中で、たとえマスクをしていてもお礼の言葉や「どうも」みたいな受け答えにも気おくれするようになって、無言の会釈でやり過ごすのが当たり前みたいになっていた。そんな風に慣れてしまった一方、台湾では数少ない台湾華語を使うためにいかなるチャンスも逃したくなかったから、たとえコンビニのレジでも必ず元気に「你好!」「謝謝!」と言いまくっていた。それどころか、浮かれ具合の最高潮だった日月潭の最終日の朝にねじ込んだサイクリングでは、軽やかに駆けながらすれ違う人全員に「早安(おはよう)!」とさえ言った。確かに海外ではいつもと違う自分になれるかもしれない。けれどその差異を自分の中で違和感として自覚したとき、初めて海外に1週間もいたのに、日本に帰ればあまりにも自然に溶け込んでいく毎日の中で、そこだけでも残せたら日常に抗えるのではないかとすがるような気持ちになった。さすがに見ず知らずの人に片っ端から挨拶するのは不審者すぎるけど、知らない人との間に生まれるコミュニケーションに一瞬だけ活性化する感覚をなんとなく維持している。しかし新しい職場の人は出退勤時の挨拶以外極力言葉を交わさないようにしているのか、「行ってきます」も言わずに外出されると非常な違和感がある。まあいいけど。

去年の今頃セールしていたことをきっかけにAdobeを個人でも導入することにし、InDesignの単体プランを年間契約していたのだけれど、Adobeの値上げで更新するかしないかずっと悩んでいた。去年は3冊つくれたけれど、新しい会社でしばらくは仕事に集中したい気持ちもある。しかし5月の文学フリマ東京が通ったので、9月の大阪のことを考えても増刷は必須だった。1刷を持って退勤後喫茶店に入り、奥付以外に直すべき誤字などを確認したのが木曜。Adobeの更新日は土曜だけれど、自動更新のタイミングがわからなかったため金曜の退勤後に家で修正と確認と入稿を終わらせる。

…まあ、先送りにするよりも早めに着手できてよかったと思おう。

台湾で買ったものを人に渡したり送ったり、自分でも使い始めたりしている。頭痛や肩こりにも効くという白花油や緑油精は職場のお守りにした。転職後初めての週末には台湾茶の封を切り、真新しい茶器で飲み、一つずつお菓子を試した。無印のフレグランスキャンドル(日本未発売)をおろし、同じく日本の無印にはない金柑醤(金柑ソース)を、迪化街で買った蒸籠で蒸した野菜で味わった。新しい職場環境でどうしても疲弊する中、ほどよい気分転換になっている。ささやかな楽しみでかろうじてバランスをとっている。

ベチバーの香り

土曜は友人Eが転職を祝ってくれるというので、友人Kの勤めるおばんざい屋に予約をとっていた。今年は遅い桜がタイミングよく見ごろなので、少し早めに行って高瀬川沿いを歩き、鴨川で本を読んだ。上着は家に置いてきて身軽な日。

店がかなり繁盛していてKとは話せなかったけれど、久しぶりに美味しい日本食に舌鼓をうち、日本酒を味わった。Eとは2件目はカフェにうつり、さまざまな話をした。ちょうど社会的な話になったときに、思考実験のようなていで鳥女の構想についても話してみた。人に話してばかりいないでそろそろ書き出したいのだけれど、と思う。

菜の花のおひたし

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日記

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京都での気ままな暮らしを綴っています。日記ですが、毎日書けないので二十四節気ごと、つまり約15日ごとにつけています。それで「二十四節記」と…

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