「1回もライブ見に行ったことないけどファンでいていいですか?」
実家から自転車で5分ぐらいのところに本もゲームもCDも扱っている古本屋があった。
中学生になってカラオケにハマり出した少年がもっといろんな曲を聴きたいと思うのは当然で、毎週カウントダウンTVで気になった曲をかたっぱしからTSUTAYAで借り、ピンときたアーティストの過去作品をその古本屋で買い漁っていた。
気になるジャケット、良さそうな名前を見つけて買ったりと、おみくじ感覚で好きになった曲もたくさんある。
お小遣いは月3000円でカラオケは1回500円〜1000円。
当時のDAMには0から点数が増えていくタイプの採点があり新記録を出すと1時間無料券がもらえた。
GLAYのTogetherというやたらとサビが長い曲で毎月商品をゲットしていた。サビは得点が上がりやすいシステムだったのだ。
とはいえ他にも駄菓子屋に行ったり、遊戯王やマジックザギャザリングのカード集めに一生懸命で、新品のCDなどそうそう買えたものではなかった。
いつしか曲を作るようになり、ライブで対価をいただく側になった。そしてアーティストに収益が入る応援をしてくれている「お客さん」がいないと続けていけないと知った。
人は高いものを買うと元を取ろうとする心理があって8000円払って行ったライブが正直微妙だったとしても「こんなに払ったんだから…」という気持ちが記憶に作用して本当に良かったことにしてしまう。
あの日の僕は「お客さん」ではなかった。いくら中古で買っても印税は入らない。かろうじてカラオケの収益ぐらいだ。ライブにも行けない。
でも中学生の100円は大人の1000円ぐらいの価値があって、本当にアーティストや曲が大好きだった。中古で買ったCDも何度も何度も飽きるまで聴いた。
それはきっと「ファン」というやつだった。
TAKUIというシンガーソングライターが大好きで、たまに見つかる中古CDをコツコツと集めていた。そして中学の時に欲しかったアルバムを高校生になって初めてCDショップで買うことができた。
数年越しで僕は初めて「お客さん」になり、専門学生になって初めてライブにもいくことができたのだ。
余裕がなくなった時つい「お客さん」としての応援を全員に強要したくなる弱い自分がいる。
きっとその時「ファン」でいてくれた人は悲しかったんだろうと思う。
チケット代が高くてなかなかライブに来れないけど、がんばって交通費を捻出して無料ライブに来てくれる人、CDを買うお金がないけどYoutubeでたくさん曲を聴いてくれている人。
あの日の僕と同じなんだろう。
楽しんで帰ってもらいたい。日常の中で僕の曲を思い出してほしい。「お客さんじゃないファン」にも心からありがとうと伝えたい。今はそう思う。いやずっと思っていた。
だからこそ「お客さん」の存在が必要なのだと改めて思った。
「1回もライブ見に行ったことないけどファンでいていいですか?」
もちろんだ。好きになることに資格なんていらない。
だけどもしきっかけが作れたその時、「お客さん」になってグレードアップした応援を見せてもらえるのを楽しみにしていようと思う。
もちろん僕も「応援して良かった!」と思ってもらえるようにやり続けていく。
[この記事の元になったツイート]
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