サンタカミング絵

サンタクロースはみんなのもとに等しく来ない。

そのサンタクロースは青い服を着ていた。

煙突から入ってくるわけでもなければ深夜にこっそりとプレゼントを置いていくわけでもない。いつもより一段と冷え込む朝、トイレに行きたくてもぞもぞと布団から這い出したところでインターホンが鳴った。

代わりにクロネコがおつかいにくることもあるが、マンションのロビーを映すカメラに今日も彼女は映っていた。

彼女がうちの担当地区になったのは3年ほど前だっただろうか。見た目は端的に言えばギャル。髪は傷んでいて茶髪。目元の化粧は濃いめであまり笑ったところは見たことがない。

Amazonから届いた荷物を受け取った。サインをするときにずっと持ってもらうのも悪いので先に受け取ると、うつむきながら自信のなさそうな声で「ありがとうございます。」と言った。

営業所が近くにあるのかうちの周りには佐川とクロネコの配達員をよく見かける。本当に走って荷物を運んでるのを見るたびに僕にこの仕事はできないだろうなと思う。

ある日仕事に向かう途中に彼女を見かけた。隣には僕がここに住み始めた時から働いている先輩がいた。金髪で背は小さいけど雨の日も風の日も一生懸命働いているのをよく見ていた。

楽しそうに談笑するのを見て、こんな風に笑うんだなとなんだか安心にも似たような感情がわいて、おこがましくも「先輩、ありがとう」みたいな気持ちになった。

だけど結局、今日も笑顔を交わすことなく事務的なやりとりをして終わった。暗い顔で仕事をする彼女だけがクリスマスの浮かれた空気から浮いているような気がした。

サンタクロースはみんなのもとに等しく来ない。


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「サンタさん僕に近くのものを大切にできる気持ちをください。」
「もしくは1億円ぐらいください。税金かからないやつ。」

そんな僕の願いはきっと聞き入れられない。サンタはいい子のもとにしか来ないから、そばにいる人さえ大切にできない悪い子の靴下にはプレゼントなど入っているはずもなく、Amazonで購入してあの子が届けてくれるなんてこともありえない。
というか大人のものには来ない。

そうだとするならいい子と悪い子の境目はどこにあって、大人と子どもの境目はどこにあるのだろうか。僕は最初はいい子だったのにどこからか悪い子になったのか。

空を飛んでくるなんてファンタジーな存在のくせに、成人は20歳からなんて法律にのっとって判断するのだろうか。だとしたらインドネシアやミャンマーの子たちは15歳でもうプレゼントはもらえなくなるのだろうか。

そんな悪態をついたところで僕の性格が直るわけでもなく、クリスマスが終わってから年の瀬まで1週間もないというのにまた人を傷つけて落ち込んだりするのだった。

僕がやさしくないのはサンタがやさしくないからだ。
なんて言い分を無理やり通したいぐらい。


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だいたいサンタクロースはやさしいなんて前提はどうなんだろうか。

世の中には全然怒らなさそうな人が家庭ではDVをしていたり、清純派で売っていたタレントが枕営業をしていたりする。僕らは何も知らないから知ったようなことが言えるのだ。

サンタだって僕と同じかもしれない。子供たちにプレゼントを配るのは自分の承認欲求を満たしたいからかもしれない。「ああ、俺はダメなやつだけどサンタでいる間だけは人の役に立てる」なんて普段は思って生活してるかもしれない。

1番近くで頑張ってくれてるトナカイにバシバシ鞭をうってるかもしれないし、仕事で頭がいっぱいで家族には冷たくしてしまうかもしれない。

大なり小なり誰もがそんな一面や葛藤を抱えているのだろう。

青いサンタがどうしてあまり笑わないのか、なぜあんな顔をしながら3年も続けているのか。派手なメイクで隠しているのは自信のなさだったりするのか。何もわからない。

荷物を受け取るときに楽しい世間話で笑顔や吐き出す場所をプレゼントできるような度量も僕にはない。今日もサインをして荷物を受け取る。

だけど、湧き上がってくるいろんな気持ち。忘れてしまいそうな大事な気持ち。僕はそれを歌にすることができる。あの子にはきっと届かないだろうけど、曲というプレゼントをばらまいていく。

サンタクロースはみんなのもとに等しく来ない。
でもよく見ればプレゼントはいたるところに用意されている。

サンタクロースがいなくても僕らはきっと笑顔になれる。

やさしくされたいトナカイと
やさしくできないサンタの歌ができました。

ぜひ聴いてください:-)

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