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京都の有名庭園。土中の空気と水の動きで見てみた。

「そうだ、京都へ行こう。」

友人と、外国人観光客が来る前に京都へ行きたいよね。
なんて話題になった。
思いたったが吉日。
さっそく日程を決めて、京都へ行ってきた!

京都への目的は、庭を見に。
よくよく考えてみると、土中環境や大地の再生などを提唱しているおふたりはどちらも造園家。
読んだ本にもこんな一節があった。

追い打ちをかけるようにこんな冊子も届いた。

カード会社の冊子「partner」

そんなわけで、いざ、京都へ。
高速バスで朝5時京都駅着。
さすがの晴れ女。
大雨の予報だったのだけれど、ピーカンの青空が待っていました。

朝5時。京都駅に着いた

市内をめぐるには、バスが便利。
細かに路線があって、しかもあまり待たずに乗れます。
1日乗り放題のパスがあります。
3回乗れば、元が取れる。
きくと、昨年まではもっと安かったのだとか。

京都は歩ける範囲でたくさんの庭があります。
神社仏閣、企業家の別荘などなど、贅を尽くして作られています。
今回は有名な作庭家、七代目小川治兵衛と、重森三玲のふたりの庭を中心に、造園業をやっている知り合いからもおすすめをきいて、めぐりました。


詩仙堂丈山寺

造園業をやっている知り合いのおすすめの庭。
安土桃山~江戸初期。
徳川家康に仕えた武将・文人の石山丈山が作庭。
コンパクトな敷地の中をぐるりと水がめぐっていて、場所ごとに変化のある景色を楽しめる。

入り口の門。砂目がきれい。
建物の東南側にある沢へ、庭全体の水は向かっている。
沢近くは空積の石垣。
起伏があって変化に富んでいる

無鄰菴

多くの造園家の友人から「ここに行け」とおすすめされた。
明治29(1896)年に、七代目小川治兵衛が作庭。
苔の庭は暗くて好きでなく、はじめは芝生で設計したそうだ。
川の源流からはじまり、海までを表現している。
どこからもせせらぎが聞こえるように、水を動かしている。

庭を見ながらゆっくりとお茶することができるのが、すごくいい。

源流にあたる部分。琵琶湖疏水から引いた水がここから流れ出る。サイフォンの原理を利用して水をくみ上げているため、動力は一切使っていない
川の中流部。岩が点在していて、蛇行している。水深がほとんど同じであるが、曲がっている外側、狭くなっているところをもっと深くすると、水が躍動すると思われる。
室内からの眺め。川の下流部。この先もっと緩やかになる。狭くなっているところに流れが当たり、瀬音を作りだしている

知恩院

木造建築の立派な寺院。
巨大な石組で有名な方丈庭園は、見逃してしまった。
納骨堂前にある池。
敷地内の南東、御影堂の山側を外れて池がある。
池は、御影堂へ水が行かないために誘導していると思われる。

ハスの花が咲いていた

青龍苑

七代目小川治兵衛が作庭した。
産寧坂からすぐのところにある。
回遊庭園なのだけれど、残念ながら中を見ることはできなかった。
池の上にさしかかる茶室が涼し気。

山側から水が下りてきているので、山川に見立てると海にあたる部分かな

東福寺方丈庭園

重森三玲の出世作と言われている。
正方形や円柱など、現代的な印象。

ザ・重森三玲ってかんじの石の並べ方
この円柱はかなり深く埋め込まれていそう。左側から来ている水の動きがあたっている。流れは、渡り廊下をくぐって写真右側へ。
渡り廊下右側。こちらは荒々しい岩。横倒しになった岩に沿って流れている。本流は、岩の手前側。
その先。流れは右手前にカーブして、土山の手前を通る。
雨どいが無粋であるなぁ。
流れが当てられている土山。流れはカーブして土山の右側を通る。
土山の先。流れは緩やかに広がって落ち着く。広がりながら右手前へ。四角く刈った植栽は、岩なのか陸地なのか
木がもっと低いと、眺めがよさげ。植栽が満ちた海みたい
市松模様の庭。苔の不規則さがおもしろい

芬陀院

東福寺の一部。
水墨画家の雪舟が作庭、重森三玲により復元された。
雪舟庭園とは、白砂と苔の枯山水。

茶室から眺めた庭
重森三玲っぽい石組

正伝寺

小堀遠州が作庭、重森三玲が修復した。
デビッドボウイが愛した庭らしい。
竜安寺の石庭のオマージュかな。

石庭の裏のようす。水はけが悪そう
雨落ちの小岩の周りがコンクリートで固定されてる。右側後方から水が引き込まれているのだけれど、せき止められて停滞している
せっかくの庭がコンクリートで固められて、門の手前で土の中の水や空気の動きが停滞している。
水の流れは手前右側から左へと向かっている
雨落ちはコンクリートで固定されてしまって、水は浸透しない
塀の瓦の間にすき間がある。空気が抜けるようになっているのか

仁和寺

七代目小川治兵衛が改修。
敷地が広く、源流、滝、海までを表現しているかのよう。
傾斜地ではないので、あまり川のような流れは感じない。
池が主役なかんじ。

奥に滝。
滝側から下流側を眺める

妙心寺大心院

妙心寺はやたらと敷地が広く、お寺全体がひとつの街のよう。
その中の小さな一角に大心院がある。

小さな庭。
建物の間をぬって川が流れているかんじ。
川の上に建物が建ってると言いかえてもいいかも。

いろんな人気の庭の要素をかいつまんでデザインされたみたいだ。

ここは宿坊で、泊まれるみたい。
建物の中には客用のお風呂もトイレもあった。

建物の下を川が流れているイメージ
流れは渡り廊下の下をくぐって建物の反対側へ
白砂が水の流れを表現しているだけでなく、実際に水と空気も同じように下で動いている

どれも植栽や剪定などがすばらしく、みどころ満載な庭。
その中でも土中環境的に特にすばらしいと思ったのは、高台寺と龍安寺だった。

高台寺

思いの外よかったのが、高台寺。
コンクリートで塞ぐことなく、空気通りのいい状態で庭づくりされている。
今回いろいろと見て回ったけれど、水と空気が通った庭造りがされていた。

塀の前の溝も、U字溝で塞がずに、石を並べて水が通るようになっていた。
訊ねると、管理している庭師さんがこだわってやってるとのこと。

竹の景色も、見える景色にこだわって順路を指定。
土地の形が見えるから、冬がオススメなのだとか。
点在するスタッフのかたもとても親切で、また冬に訪ねたい場所。
(庭師さんにもお会いしたい!)

土中の水の流れを止めずに動かしている
急斜面に立つ渡り廊下。
水が湧き出る場所。毎年モリアオガエルが産卵するんだって
適度に目通しのある竹林。すっきりして気持ちいい空間
枯山水も。流れは左から右へ。川のはじまりにも似てる。真ん中に見える岩は、ものすごーく大きな岩で、深く埋まっているんだろうな
塀沿いの雨落ち。塞ぐことなく、すき間のある石組
山門へ。

竜安寺

誰もが知っている、岩と白砂でできた石庭。
有名な庭なんだけれど、誰がいつ作ったのかは不明なんだそうだ。
高校の修学旅行で来た記憶がある。

岩と白砂の枯山水で有名なんだけど、ちゃんと見ると石庭の前後周辺がすばらしい!!!
水の引き入れ方、広げ方、排水の仕方。
一貫して考えられている。

後年、引き継いで手入れしている庭師さんたちもすばらしいんだと思う。
塞ぐことなく、固めることなく、空気と水が通っている。

ここが二日間、京都で巡った中で、最高の庭だった。
すごい作品は、舞台裏がすばらしいのだ。

石庭を囲んでいる塀の裏側。水と空気が抜ける出口がある。これによって石庭の地面下に水と空気の流れが滞らずに、気持ちいい空間ができる
塀の溝。建物側からは見えないのだけれど、空気と水が抜けるような仕掛けがちゃんとある
庭の左側の塀。大きく水が流れるように塀の下をくぐっている、
石庭。平日でも人気。空気と水の抜ける溝は、角にある。こちら側からは見えないように隠されている
石庭正面。流れは右手前からはじまり、左奥方向へと向かっている
岩の手前の苔は、ピローウエーブか。岩に流れが当たると盛り上がりができる。それを表現しているかのようだ
石庭左手前。コンクリートでは固定しておらず、浸透ができるように石が組んだだけの状態に
石庭を囲んでいる塀の裏側。水がしみ込みながら流れていくようになっている
石庭を囲む塀の、さらに手前、谷側。落差があるので、水が停滞せずに動かせる。
石庭の裏はこんなワイルドな庭があるのだ
大きな石組。岩が露出しているところは、大雨などが降ったときに、流れができるんだろうな
その下流側には大きな池。
池はけっこう大きい

誰が作ったのかわからない庭。

裏に背負っている山からの水の引き込み。
それを庭先にぐるっとめぐらせて、門の外へと排出している。
滞らせずに、ちゃんと流れているところがよかった。

「枯山水」は、水を白い砂で表現している庭なんだけれど、竜安寺の白い砂の下は水と空気が確実に流れている。
竜安寺のすごいところは、塀の裏側に回ってみると、庭側から見た水が溜まりそうな場所に、ちゃんと水と空気が抜けられる出口がある。
しかも、コンクリートで固めずに、浸透もしやすい状態で。

白い塀で囲んだ枯山水の庭はよく見かけるけれど、こうやって土中で動いている水や空気を止めずに流していない。
見かけだけをまねしているだけで。

今回めぐった庭では、高台寺と竜安寺の他は、コンクリートで固めたり、空気の動きを止めていたり、U字溝で塞いだり、いろんな流れを止めていた。そこが周りの建物や塀の腐りの原因になっていたり、土がカチカチに硬くなる原因を作りだしていた。

軒の下、雨落ちを見るとわかりやすい。
形ばかりでコンクリートでがちがちに固めてしまって、水の流れと浸透を止めてしまっている。

高台寺のよさは、U字溝やコンクリートは使わずに、石垣の空積みと同様の、すき間が程よくある形で水の通り道を作っているところ。
水をしみ込ませながら流していくので、塀の下や軒の下が処理されている。
固めたいところは三和土を使っていた。

土の中の水と空気の動きがイメージできると、作庭された当初のような水と空気の流れを感じさせる場になるんじゃないのかな。

二日間の庭三昧@京都。
京都は一気にいろんな庭を見られるので、最高だった。
また季節を変えて(紅葉が終わったころ)見に行きたい。





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