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太陽の光と土の調湿。パッシブ建築を学ぶ

最近、エネルギーを使わない建物に興味がある。冬は寝室の温度が低くなり、寒いときには5℃まで下がる。頭が寒い。ネコが鼻水を垂らす(今年は電気アンカを採用)。

そんなこともあって、断熱について知りたくて、こちらを読んだ。

断熱ができていない家は、穴の開いたバケツみたいなもの

温度が逃げて暖冷房にコストがかかる。また死因のひとつ「ヒートショック」も寒暖差によるものだ。家まるごとが快適にすごせる断熱は、経済的にも健康面からもとても大事なのだ。
そもそも家の中が寒いと、活動する気が失せるし。

これを読むまでは知らなかったのだけれど、北海道だけは建築基準が違っていて、高気密高断熱の家じゃないと建てられない。だから本州よりも一歩も二歩も高気密高断熱の建物についての知見が高い。
実際に、北海道ではペアガラスどころか、トリプルガラスが普通らしい。

今住んでいる家を快適にするには、まずは穴を塞ぐことからだ!
たしかに、断熱ができていないまま暖房するのは、地球を暖めているようなもの。どうやったら小さなエネルギーで快適に暮らせるのかをできることから考えてみる。

熱が逃げ出しているのは、窓、壁、天井。まずは窓から熱が逃げないようにするとよさそうだ。

窓をペアガラスにする。予算がなければプラ段などで二重にする。
ちょっと貧乏くさいけど、ぷちぷちで窓ガラスを覆うと、びっくりするくらいに暖かくなる。

その本の感想をFacebookに上げたら、北海道で建築設計をしている石塚和彦さんから、こちらの本を紹介していただいた。

(Amazonのサイトはこちら)
『住まいから暑さ寒さを取り除く』荒谷昇

こちらは断熱が一歩進んでいる北海道の建築家が書いた本。住い手目線だった『断熱が日本を救う~』に比べて、設計者からの断熱について書かれている。

そもそも”暖房”というからには、”房”を暖めることである。

「房」とは建物全体を指す。部屋だけを区切って暖めると、他の部屋との温度差ができて、結露する。壁の内側で結露するとカビの原因となり、建物を傷めてしまう。床下も含めて家全体を温めていくと、低コストでしかも結露せず、長持ちする家となる。
高気密、高断熱にするのが重要。

注意したいのは、「高気密」とは「密閉」とは違って、通気があってこそ。建物は密閉するほどすき間が気になるようになる。そこで徹底してすき間をふさいで密閉する方向へ進んできた。壁や建物の一部に残った冷たい空海委が結露してしまう。壁の中の結露がカビの原因となる。

エコハウスの建築家、丸谷博男氏の講座に参加してみた

そんな本を読んだタイミングで、町田にある「浮輪寮」で開催された、 丸谷 博男 さんの「里山環境建築学校」に参加してきた。

丸谷さんはパッシブ建築の第一人者。エコハウスの本も多数書かれている。
息子さんの丸谷晴道さんが奥多摩へ移住されたのがきっかけで、奥多摩のイベントでお会いすることがたびたびあった。

ちょうど今回のテーマは「寒さと対策」。

快適に住まうためには、
 ① 呼吸する家がいい
 ② 空気で空調するのではなく輻射熱で温めるといい
どちらにも影響しているのが「土」だ。

① 呼吸する

ドライスーツは手首や首からの空気が出入りしないので、暖かい。雨合羽のように袖や襟から空気が出入りすると、スースーして寒さを感じる。外気が入らないように気密性が高いと、温かい。

中の空気は、暖かいまま全体が循環しているといい。ドライスーツのほうが、ドライジャケットとパンツのように分かれているよりも暖かいのと一緒かな。

ゴアテックスのような透湿性の素材は、調湿されて湿度がこもらない。ナイロンのような防水だけのウエアは、内側が結露して不快なのと似ている。家も同様で、調湿してくれる素材でできていると、結露しにくくカビなどが生えず、長持ちする建物となる。

家の場合、調湿してくれるのが土と木。土壁がもっとも調湿の機能が高いのだそうだ。反対に、合板やプラスターボード、ビニールの壁紙は、調湿力がないので密閉はするけれど調湿はしてくれない。

浮輪寮で不思議だったのが、玄関の戸を開け閉めしても冷たい空気が入り込まない。木でできた建具なのに、すき間風を感じない。スースーしないのだ。
その理由は、気圧なのだそう。気圧の高低差ができると、空気が行き来して暖かい空気が逃げていく。これはわたしの仮説なのだけれど、呼吸をする素材であれば、外と中の気圧は同じになるので、すき間風が入りにくいのかもしれない。

山や川をコンクリートで塗り固めて呼吸ができなくなると、周りの植物も動物も弱ってしまうのと一緒で、住環境も水(水蒸気)を緩やかに循環させると快適なのだ。

完全に呼吸を止めてしまう素材や、化石エネルギーを使ってムリヤリ冷暖房するチカラわざが、めぐりめぐって夏は暑く(クーラーの室外機が外気温を上げている)不快にしてしまってるように思う。

衣服にしても、家にしても、すべては相似形。

② 地熱の利用

大地は、夏は涼しくしてくれて、冬は温めてくれる。床下の地面近くの空気を循環させることで、季節による温度変化を和らげて快適な気温に近づけてくれる。

縄文の竪穴住居は、地面の温度を利用していた。日本家屋の土間も同様。そういえば親戚の茅葺屋根の家には土間があって、冬でも寒くなかったように思う。しっとりしていたというか。

土は蓄熱をするので、アイヌの家で一年中ずっと火を絶やさないのは、冬でも蓄熱された地面が室内を温めてくれるからなのだとか。竈で煮炊きするのも、囲炉裏で火を燃やすのも、周りの土をに蓄熱されて、輻射熱でほんのりと温め続ける効果があるのだろう。

雪がある/ない、暑い/寒い、湿度の高低など、地域によって建物の課題は大きく違う。今は金融公庫でローンが組める建築方法がひとつに限られてしまっているので、日本各地にあった様々な建築方法が使えない現状がある。これも今回はじめて知った。
こうやって昔からの知恵が使われなくなってしまうのだなぁ。

***

会場で販売していた丸谷さんの本。ちょうど知りたいことが書かれていて、鼻の穴が開きっぱなし!ぶひぶひ。

丸谷氏の本。「新『そらどまの家』、「古民家から学ぶエコハウスの知恵」」「reform Book」

日本の建築は、江戸時代後半から明治に盛んだった養蚕業によって一気に進化したそうだ。暑すぎたり、寒すぎたりすると蚕が死んでしまう。風通しや太陽の光を取り入れるなどして、いかに蚕にとって快適な空調を作れるのかを考え尽くした建物となったそうだ。
また、蚕は日の長さによって繭を作り始めるので、窓の開閉でコントロールもできるようになっている。

繊維産業が盛んだった明治以降、建物が進化した
竪穴式住居は、土の温度をうまく利用したつくり

自分たちがいかに快適に楽に過ごすよりも、いかに効率よく生産していくかに心血を注ぐところが、すごいなぁって思ってしまう。

考えてみると、西多摩の山間部は日当たりの悪いところに家が建っていることが多い。日当たりのいいところは畑優先なんですよね。自分たちの快適さよりも、実利というか、そういうのを重んじる傾向があるのかもしれないな。

寒冷地では、すでにそうなっていた

山梨の実家は、富士山のふもとにある。標高1000メートル前後なので、厳冬期は-20℃にもなる。それでも気温の高い青梅奥多摩よりも、家の中は快適だ。

先日、妹の家を訪ねたときに、工法についてきいてみた。
最近、このあたりで建てている家は、すでに縁の下の通気がないのだそう。築20年ほどの妹の家も、床下は通気がなく、温度が保たれる工法だった。家の中は吹き抜けになっていて天井が高く、部屋の扉は開け放っている。真冬でも暖房器具1台で、家の中全体が快適に保たれている。

40年ほど前に建て替えた実家の家は、地下室があり、床下は冷えない構造。ペアガラスも入っていて、家の中全体が暖かだ。建物の内側に配管もあるので、凍結の心配もない。うちの父のアイデアで、こうしたのだと思う。(周辺で地下室のある家なんてない(笑))

山梨の寒冷地では、すでに高断熱高機密になっていたのだった。

奥多摩の家は従来通りの縁の下がある家。なので、冬は寒く、夏は湿気てしまう。呼吸する快適な家を建ててみたくなった!

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