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体験は、どこでもいいわけじゃなく、誰でもいいわけじゃなく、いつでもいいわけじゃない。

先日、Facebookにこんな投稿をした。
2022シーズン、長野のスキー場でリフト券を半額にするよってニュースを見ての投稿。

https://www.facebook.com/gotomegu/posts/4693785873999041

うーん。 値段を安く、安く。 安易に価格を下げて需要を掘り起こそうとする行為が、デフレを加速させている。 もちろん、同じものなら高いよりは安いほうがうれしいのだけれど、それが自分たちの首を絞めていくきっかけになってるんじゃないの? 価格を安くする以外に、もっといい手立てはなかったのか。 検討をしたのか。

Posted by 後藤 めぐみ on Tuesday, October 26, 2021

コメント欄にも書いたけれど、ただでさえ来る人に対して割引するよりも、今来ていない人に来てもらう工夫が必要なんじゃないか、という話。

今、お給料が上がらないって困っている人たちがたくさんいる。
なぜお給料が上がらないかというと、安く、安く値段を下げることしかやってこなかったから。

自分の商品やサービスを選んでもらおうとする場合、
 ①その商品やサービスでなければならないから選ぶ
 ②他と一緒だから安いほうを選ぶ
どちらかだと思う。

このふたつは方向性がまるで違う。
①はより価値を上げていて、②は価値を下げている。
②はすぐに選ばれる理由になるけれど、安易だし、価格合戦となるので業界全体が疲弊してしまう。

そんなことを考えていたら、長野の南木曽で宿泊とセットになったアクティビティをやっている安藤太郎さんから連絡をもらった。

その時に話したことをまとめて、アクティビティの体験を①の方向へ舵取りする方法を考えてみた。

体験で大切なことは
ひと × 空間 × 演出


① ひと

誰にガイドしてもらうかで、体験が大きく変わる。
まずはひとありき。

例えば、ニセコへスノースポーツをしに行くとする。
交通費や宿を節約しても、ガイドはこの人と思える人に頼みたい。
体験の質がまるで違うからだ。
だから、その時、その瞬間で、最高の場所へ連れてってくれるひとにお願いするのだ。
現地で確実に楽しませてくれるガイドの存在は大きい。

全国で「ここへ行くならこのガイド」のネットワークがあるのが理想。
自分の場合、熊野で水遊びをするなら佐竹さん。
全国の滝を見に行くなら坂崎さん。
みたいなかんじか。

ガイドに価値が上がれば、ガイドを目指す人も増えるし、増えるにしたがって技術を上げる、勉強するなど、質も上がっていくだろう。
そうなってくると、ガイドをお願いする価値もさらに上がる。

ガイドを育てるしくみがあってもいい。
アクティビティの技術だけではなくて、参加者に対応する能力、気配り、案内の内容も。
また、カリキュラムには写真撮影の技術も必ず入れる。
写真はとても重要なアイテムだからだ。

② 空間

どんな場所へ案内するか。
そこに価値が出てくる。

ポイントは、
 非日常感
 タイミング
 背景
の三つ。

<非日常感>
太郎さんがやっている場所は、かなりの過疎地で住む人も訪ねる人も少ない。
逆にそこが強みとなっている。
他にひとが来ないので、その景色や自然を独占できる。
だからこそ印象が強く、遠くて不便な場所でも「また訪ねたい」になる。

日常と違う環境に行くほど、体験の価値が上がる。
上記の「プライベート感」もそのうちのひとつだけれど、それ以外でも
水の上(カヤックやSUP)、標高の高い山(ハワイの星を観測するツアー)、水の中(ダイビング)、氷や雪の中(スノースポーツ、スノーキャンプ)、真っ暗・・など日常とかけ離れているほど印象が強い。

<タイミング>
一年間のいつの季節なのか、一日のうちのどの時間なのか。
そのベストの時間に案内できると、最高の体験をしてもらえる。

自分がやっている「朝カヤック」もそういう意味では、非日常感(環境×時間)があるんだと思う。

<背景>
その土地の持っている歴史、地質や植生も含めた土地のチカラ。
ストーリー。
過去があるほど、他にはまねのできない唯一の場所となれる。

そのためには、しっかり調べること。
古くからの習慣や歴史上起こったこと、その土地にしか生えていない植物や動物など、地域に根差した「他にはない」がたくさんあるほど、強みになる。

カヤックスクールの常連さんAさんは、転職して数年前からガイド業をしている。
今はご指名があるほどの人気ガイドだ。
とにかくその調査量がすごい。
「へー!」と感心するような、地元のひとですら知らない歴史上のことや変わった風習、そこにしかいない生き物の習性など、知識が広くて深い。
そして、参加者や状況に応じていくつかを引き出しからそっと出してくるかんじ。
ついつい知ってることをペラペラと話したくなるのだけれど、Aさんは興味をもちそうなものだけを話すようにしている。
星空や夕焼けを見に行くツアーでは、”日本一無口なガイド”になるらしい。

③演出

どういった演出をしたら、その空間を体験できるのか。
最適な道具、現地でとる食べ物や飲み物の役割は大きい。

例えば、ハラウのヤクさんは、SUPを水を感じるための道具としてとらえている。
目的を果たすためには、できるだけシンプルな道具を使いたいと言っているそうだ。

体験のときに飲むもの、食べるものにもストーリーがあるといい。
太郎さんのツアーでは、古くからお茶の名産地となっている白川が近いので、アクティビティではお茶やほうじ茶を出しているそうだ。
白川のお茶の歴史なども体験のひとつとなる。
自然の中でも匂いが負けないように、お茶を焙じて出すなど工夫している。

ちょっと話は逸れちゃうけど、文化庁は茶道をもっと振興させるために力を入れているそうだ。
お茶を楽しむ文化を見直していくタイミングなのかも。
奥多摩も近くに狭山茶があるので、取り入れやすい場所ではある。
(このあたりはお茶の木が自生していて、庭先でも摘めるけど)

メールのやりとり、参加者を迎える姿勢、体験のあとのサヨナラのたたずまいまで、演出の中に含まれるものはたくさんある。
考えることがいろいろとあるなぁ。

まとめ

その体験をすることで、世の中の見え方がちょっと変わって感じるような。
その体験をともにすることで、一緒に参加したひとどうしがさらにつながっていけるような。
そんな体験を作っていきたいなぁ。

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