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その体験の裏側に、物語は見えるか

先日、奥多摩でワサビ体験をやっている、東京ワサビのツアーに参加しました。

もう、いろんな意味ですばらしい体験。アドベンチャーツーリズムの見本みたいな内容でした。

体験の裏側にある切実さ

ガイドをしてくれたのは、タツヤさん。

冬でもノースリーブなのだ

タツヤさんは、これまで国内の農業や漁業のお手伝いをいくつかやってきたそうです。そのときに感じたのが、一次産業はこのままだとやばい!ってことでした。
労働が過酷な割には、利益が出ない。だから、続けるのがどんどん難しくなるし、なり手がいない。
だから農産物に価値をしっかりつけて販売していくのが、続いていく農業になるんじゃないかと、考えたそうです。

これって、林業でも共通して言えることですね。

もうひとつは、廃れゆく技術をつなぎたい。高齢化でやり手が減って、ずっとその土地で伝わってきた工夫が途切れてしまうという危機感です。
技術は、直に教わるのがいちばん伝わります。一度途切れてしまうと、細かなノウハウを取り戻すのは、なかなか難しいです。
だから、それを次の世代に手渡ししたいと考えたそうです。

五感で味わうワサビ体験

集合場所から車に乗って移動。車を降りてから、歩きながら小さな橋を渡ったり、清流を見たり。軽いトレッキングをしながらワサビ田へ向かいます。そこには、予想よりもはるか上をゆく景色が広がっていました。

ふたりでワサビを表現してみました!

高いし、広い。しかも、美しい。

3年前の秋にあった台風19号で、奥多摩でもたくさんのワサビ田が崩れてしまいました。重機が入らない狭い土地なので、すべて人力で修復したそうです! 抱えられそうにない大きな石もあるので、ものすごい技術と労力だと思います。

ワサビ体験のために、細かな工夫をしています。
例えば、石垣をトタン板で覆わないこと。
通常は、水しぶきが下の段へ飛ばないように覆ってしまうそうです。ワサビに当たってしまうと、品質が悪くなるからです。
生産量は減ってしまうのですが、水しぶきがかかる部分にはワサビを植えずに、石垣を見てもらうようにしているそうです。

このロケーションで食べたワサビ丼は、最高でした!

沢の音に囲まれて食べるワサビ丼

ワサビ丼はとてもシンプル。白いごはんにおかかをのせて、摺ったワサビをその上に。チョロリとお醤油をたらすだけ。

東京ワサビオリジナルのおろし金。目が細かくてワサビの味を損ないません

採れたてのワサビは、もっちりして粘り気があります。これは1年半をかけてゆっくり育つ奥多摩産ワサビの特徴です。暖かいところで早く育つワサビと違いがあります。
口に入れて、まずツーンと鼻の奥に刺激があります。その向こう側に甘みを感じます。この甘みは、採れたてじゃないと味わえないそうです。

ワサビ田のわきを上へ上へと登りながら、同じ敷地でも高い場所のほうがミネラルが得られておいしいワサビになるとか、品種がいっぱいあるとか、ワサビについて知るのも、楽しかったです。

体験の裏側にあるストーリーの大切さ

今回のワサビ体験では、日本全国の一次産業の問題、そして技術が継承されない現状。ワサビを通して伝わってきました。そこが見え隠れしているので、単に、楽しい!おいしい!だけではない、すばらしい体験に感じられたのだと思います。

ふりかえって自分のカヤック体験はどうなんだろう?
山のこと、水のこと。もっと伝わる工夫をすべきだな、と改めて感じたのでした。

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