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友部正人「あの橋を渡る」

友部正人の4年ぶりのアルバム 「あの橋を渡る」。参加ミュージシャンのクレジットで、おおはた雄一や芳垣安洋や伊賀航といった人たちの名前を見ただけで、これはいい感じの作品に違いないという予感は当たった。

人種差別で分断されたアメリカを鋭い言葉で撃つ4曲目「ただそれだけのこと」。“ブルースは元気がない時には歌えない”と真理を説く6曲目「ブルース」(ヒューバード・サムリン追悼曲?)。マヒトゥ・ザ・ピーポによるまるで霧が漂うような美しいエレクトリック・ギターの音と、幻想的な心象風景の詩が絶妙に重なりあう最終曲「空の鰯」。さすが友部さんという名曲が何曲も。嬉しい。

最も心を打たれたのは、2曲目「一月一日午後一時(高橋さん)」。

“盛岡の街には クラムボンというコーヒー屋がある 万年筆のインクが切れるように 高橋さんは読めない文字になる”という出だしで、亡くなった友人についてまっすぐに想いを綴る歌。コーヒー豆に話しかけるその人の感じや雰囲気が、歌を通してとても伝わってくる。おおはた雄一のギターの優しい旋律もジーンとくる。岩手出身の宮沢賢治の作品にも重ねた“クラムボンが笑ったよ”という印象的な言葉で歌は佳境を迎える。何度聴いても泣ける大名曲。ぜひ買って聴いてみてください。

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