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#62 エレファント(2003)

1999年のコロンバイン高校銃乱射事件を題材にガス・ヴァン・サントの銃乱射そのものではなく、日常に潜む狂気をしっかりつかまえてる視線の鋭さが光る名作。

特筆すべきは現役高校生を起用して日常の平凡さ退屈さ、悩み不安、いじめなど学生時代に感じた雰囲気を静かに描いている点。

後半の救いもない不条理さとの対比が効いてくる。喪失感がじわじわと来てしんどい。架空ながら物語性を極力なくしてるから映画は複雑なこちら側の生(なま)の世界を感じる。

だからこそ逆説的にセリフを工夫してストーリーの流れを保ちつつシーンも繋げて物語性を入れる意味も気付かされる。

グラウンド、廊下、生徒が歩いてるだけでここまで引っ張る?と思う長回し。普段ならカットする所をわざと入れる事で観る人の考える時間や現実感を出したと語ってたり、即興を捉える技ありカメラワークに唸り、技巧に乗せられすぎて逆にちゃんと観れていない瞬間も。何回も観た弊害、、紙一重な演出!

・事実と真実
とはいえ、作品の価値を判断する基準は、それがいかに的確に「事実」を伝えているかという点にあるのではなくて、それがいかによく「真実」を語っているかという点に存すべきものであるとどっかの本の一文を考慮すれば、虚構の上の物語といえど、「真実さ」をちゃんと語れば事実以上に印象が強くなり映画の力、絵空事を表現する力を信じられる紛れまない名作。



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