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魔法使いになる方法

手から火を出したり、空を飛んだり、物理法則を無視した御業「魔法」。
私は未だそれを見た事がない。まぁ実際にそういうファンタジーな魔法が使えたとしても現代社会には自由に火を使える道具も、空飛ぶ乗り物もある。遠くの何万にも及ぶ人の声を瞬時に聞き取れるSNSや、今と言う時間を切り抜いて永遠に保存する写真、古代の人が夢想し、魔女や錬金術師が身を削って研究した魔法を誰でも使える時代になっている。古代の魔女や錬金術師が身を削って研究した魔法は今や誰でも使用する事が出来る。

魔法の本質

古代の魔法使いが火をなぜ望んだのか、空飛ぶ事を何故夢想したのかを考えると魔法の本心が見えて来る。昨今の魔法をテーマにしたアニメや小説では火を自在に操れる術者は十中八九、その火で温まったり調理をしない。空を飛べても旅行をしない。自分と思想や姿の違う者を焼く為に使用される。人を見下ろすために空に留まる。
かつての魔法は「もっと早く火が起こせたらな」「この大地に先に何があるのかな」そういった物だったはずだ。魔法とは人の夢や願望のような物であると言い換える事が出来る。この現代社会において魔法が存在しないという思考は豊かになった暮らしの象徴でもあり、同時に貧しくなった創造力であるとも言える。誰しもが魔法使いになれたが、魔力を失ってしまった。
それでも人間にはまだ魔法が残っている。それは言葉である。
魔法と呼ぶには皆のイメージからかけ離れているかもしないが言葉はすべてを叶える力を持つ。物質界を除くすべての事象の組成は言葉にあると言って過言ではない。次章からは言葉の持つ魔力の基礎、応用について解説して参りたい。

言葉の持つ力

「頑張れ!」「ありがとう」「ごめんなさい」これらには言語としての意味の他に不思議にな力があるという事を直感的に理解できるかと思う。この直感で感じるレベルが高ければ高い程、あなたには魔法適正がある。
言葉は言ってしまえば50音で組み合わされたただの短い音であるが、これが人間に耳に入って知覚した瞬間に様々な心が生まれる。さらに単語を組み合わせて自己の行動を宣言し望んだ事象を引き起こしたり、他者に過去や未来について教える事が出来る。
特別な事情がない限り、おおよそ全ての人間に備わる能力であるがこれを使いこなすのは至難。ほとんどの人が言葉を「音」に近い形で使用している。

ポジティブとネガティブ

魔法において最も重要とされるのが精神的な部分である。ゲームなどではMP(マジックポイント)などと表記されるこの精神力は言葉と言う魔法を使う上でも非常に重要な部分である。
魔法は白と黒、陰と陽、天と地、相反する二つの力を分けて呼称する。直感的に「正」とする方、(白魔法や陽術、天道)よりも直感的に「負」とする方、(黒魔法、陰術、地道)の方が強く、反動も大きい。故に混同して使用するとリスク管理が難しくなる。
言葉という魔法も例に漏れず、ポジティブな言葉よりもネガティブな言葉の方がはるかに作用が強い。褒められて嬉しい気持ちより、傷つけられて悲しい気持ちの方が強いと言えばわかり易いかと思う。昨今の「炎上」や「ネットリンチ」などは呪いの類の魔法であると言える。
先に書いたMPはポジティブな言葉で大量に消費するが、最大値は徐々に上がって行く。ネガティブな言葉はMPの消費量こそ少ないし一時的に回復はするが最大値は使えば使う程に減って行く。ストレスやしがらみから解放された時にポジティブな言葉をたくさん使用している人は精神力が大幅に上がり、前向きに幸せを感じる事が出来る。逆にネガティブな言葉を乱用した者は目の前の幸せを感じるだけの精神最大値は失っている事だろう。
「幸せそうだね」と言われてもピンと来ない人は知らず知らずのうちに負の属性の言葉を使ってしまっているのかもしれない。
かといって正の言葉ばかりではうさん臭いし、精神力の消費が激しい。陰陽併せて魔法力、MPであると覚えて頂きたい。MPの最大値が高くても残量が少なければ意味がないし、最大値が低くても完全回復していれば白魔法を上回る威力を出せたりする。バランスが大切。ふとした拍子に転んだ時「とても痛いけど地面さんは悪くないよ!」なんて咄嗟に出ないし、変な人だと思われかねない。「くそが!」くらいの方が自然であるし、MPはそういう生きやすさにもつながって来る。すべてに当てはまらないが基本的にはポジティブは他人に、ネガティブは自分とすれば問題ない。

魔法の応用

白魔法、黒魔法、MPの概念、ざっくりでいいので理解してもらえると応用魔法が使用できる。普段黒魔法ばかり使う人「A」がいるとしよう。このAのMPを最大値50、保有MP50の50/50とする。このAが白魔法を使った時、50のMPを消費して言葉に魔力を上乗せできる。これが所謂「ツンデレ」である。逆に白魔法ばかり使う「B」がいるとする。BのMPの最大値は160、白魔法は消費が激しいので保有MPは30、30/160とする。同じ言葉を使っても威力は30しか出ない。
逆も然りで、普段優しい人がブチ切れると恐ろしいのはMP最大値を使用する威力の高い黒魔法である。
高い最大値と保有MPのバランス関係を自己分析し、備える事ができればこういった応用が出来ようになる。

詠唱

概念が理解出来たらあとは呪文を唱えるだけ。最後に詠唱する呪文をいくつか紹介して終わりたい。そのまま詠唱しても良いし、上級魔法使いならばいとも簡単にアレンジできる事だろう。

「ありがとう」

白魔法の奥義にして、基本の詠唱。相手への感謝という基本的な使い方はもちろん、MP最大値の高い高ランク魔術師になると「断る」といった真逆の事象にも対応させる。黒魔術師が使えばツンデレの法則により一撃必殺とも言える威力を発揮する。

「おどれ、やってもたんど!ゴラァ!」

関西地方に住む黒魔術師が主に使う。術師によって多くアレンジが加えられており、この詠唱も古の魔法になりつつある。高位術者になれば「お?」のみの詠唱破棄という技も使える。MP消費はほとんどないがMPの最大値は確実に減って行くので禁呪に指定する者もいる

「許す」

「許す」だけでは呪文にはならないので他の言葉と組み合わせる必要があるが最高位術者でないと扱えない高位呪文。この呪文は白と黒の両方の性質をもっており、相手の良心を揺さぶり、酷い後悔を引き起こすと同時に癒しを与える。MPのほとんど使い疲弊するが、後に得られるMPの最大値上昇には目を見張る物がある。イエスキリストが使い手だったとされるが諸説ある。

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