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【総研調査レポート】オリンピック・パラリンピックへの意識調査

2020東京オリンピック・パラリンピックまで、いよいよ残り1年を切りました。パラリンピックのチケット申込受付も始まり、報道特集やイベント開催なども開催に向けて盛り上がりを見せています。

ゼネラルパートナーズ(以下、GP)では調査・研究機関「障がい者総合研究所」を運営しており、2017年10月の開催1000日前のタイミングでは「オリンピック・パラリンピックへの意識調査」を実施しています。

この調査では障害のある方々を対象に、オリンピック・パラリンピックや関連する事柄への関心、オリンピック・パラリンピックを通じた障害者への社会の理解について、どのように考えているか伺いました。

そして今回、開催まで残り1年のタイミングにあたり、同様の調査を再度実施してみました。はたして、1000日前と1年前で結果にどのような変化が見られたのでしょうか。

【調査概要】
対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2019年7月4日~25日(有効回答者数:374名)


調査結果

[1] 東京パラリンピックを観戦したいと思っていると回答した人は49%(前回調査時59%より10ポイントダウン)

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[2] 東京オリンピック・パラリンピックによる障害への理解の促進は限定的と考える人は88%(前回調査時87%より1ポイントアップ)
 ●身体障害への理解は進むが、それ以外の障害への理解は進まないと思う人は38%(前回調査時49%より11ポイントダウン)
 ●すべての障害への理解が進まないと思う人は50%(前回調査時38%より12ポイントアップ)

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[3] 東京オリンピック・パラリンピックで、ボランティアなどのスタッフを「務めたい」、「どちらかというと務めたい」と回答した割合は35%(前回調査時44%より9ポイントダウン)

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[4] オリンピック・パラリンピック開催前の関連イベントへ参加したいと回答した割合は43%(前回調査時45%より2ポイントダウン) 

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※アンケート調査実施時は、1000日前の調査と同じ質問項目を送りましたが、結果の公表にあたり一部質問項目の表記を変更しています。


障がい者総合研究所・所長の見解

調査前の予想では、前回調査に比べ観戦意向は上がりつつも、障害理解については現実的にはまだまだだよね、ということで期待度はさほど大きく変わらないだろうと思っていました。
ところが実際にはオリパラ開催時期が迫る中で、観戦意向が下がりました

この背景には、開催間近になって出てくるネガティブな課題などをニュースで耳にする中で感じられる不安、といったことが手伝っているかもしれません。

また、次の質問「オリパラを通じて障害への理解が進むと思うか」という質問にも関係してくると思いますが、障害理解の変化について開催1年を切るこの時期にもかかわらず、1,000日前とあまり大きな変化を実感できていないことが、逆に現実味を帯びて、一種諦念に近い感情が観戦意向を下げる要因の一つになっているかもしれません。

障害理解が進まないと考える理由としては、「見た目での障害を理解、認識するより、見えない障害を認識、認識するのは難しいと思うから」といった声や、「偏見はそう簡単には変わらない」という意見が上がりました。

また、「パラリンピアンと(一般の)障害者は全く別物」、「パラリンピック開催中は、関心をもたれると思うが、理解の向上まではいかないと思う」という声もありました。

一方で、前回調査でも今回調査でも「全ての障害理解が進む」という意見を持つ方も一定数いらっしゃいました。
注目すべきは、障害理解が進むかどうか、という質問に肯定的な回答をした方の中にも、否定的な回答をした方の中にも「パラリンピックで頑張る障害者を知ることはいいことだと思うが、パラリンピックに出られるのはほんの一部の障害者であることも知ってほしい」という意見を持つ方がいるということです。

オリパラというスポーツの祭典で障害者に注目が集まることには一定程度の期待があると同時に、出場する障害者がすべてではなく、ごく一般の障害者もいることにも目を向けてほしいという障害者の願いがある、と見るのがよさそうです。


2020年のその先に向けて

オリパラの開催にあたっては国内外から沢山の人々が東京に集まります。人種、年齢、性別、障害の有無――様々なバックグラウンドを持つ人々がともにスポーツに熱狂する体験を通じて、多くの気づきが生まれる可能性が秘められています。

2020東京大会のコンセプトは、
「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」

オリパラが終わって人々が東京を離れても、その後それぞれの生活は続きます。オリパラで得られた気づきを一過性のものにせず、2020年のその先の生活に活かす過程で、障害理解がさらに進んでいくのかもしれません。


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当社社員であり、パラスイマーとしても活動する矢嶋のインタビュー記事を公開しています。障害当事者である彼女の目線から、日本の障害者のスポーツ活動や障害理解について考えることを紐解きます。
こちらもぜひご覧ください。

2020年の東京パラリンピックでは、沢山の障がい者が日本に集まります。公共交通機関や競技施設では、開催に向けてバリアフリーの整備が進められています。それでも、例えば体格の大きい電動車椅子ユーザーや、集団で移動する車椅子ユーザーを目にした時に、初めて「こんな障がい者がいるんだ」と気付くこともあるんじゃないかと思うのです。私はそのような気づきによる、2020年 “以降” の変化に注目したい。

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