見出し画像

経営のOSを造る

 オペレーティングシステム(OSと略す)はコンピュータ用語としてよく耳にします。マイクロソフトのWindows、AppleならiOS、GoogleならAndroidでその上でアプリが動きます。それ自体は何も生み出しませんが、それがあって、アプリを正常に効率的に動かすことができます。普段使っているときだけでなく、異状が発生した場合に処理を行うのもOSの役割です。

 これに倣って、組織運営においても「ビジネスオペレーティングシステム」という概念が導入されています。事業活動の様々なオペレーション、商品企画から開発、製造、営業、販売、あるいは、戦略立案、人材育成、財務などは、その上で動くアプリです。
 会社のリズムを決めるもの、という言い方もします。

 ボルドリッジの概念図では、「核となる価値観と概念」を基盤に、リーダーシップや戦略、顧客、働き手、オペレーションなどのアプリが動いているようにも見えますが、「核となる価値観と概念」だけで事業が動くわけではありません。

 ではビジネスオペレーティングシステムとはどういったものか。

 マット・プランバーグ著「スタートアップ・マネジメント」に「オペレーティングシステムの構築」という章があり、企業のオペレーティングシステムの構成要素が示されていたので、紹介します。

 ここでは、企業のオペレーティングシステムを「規則的な一連の行動とリズムを構築し、チームが日々不確実性と向き合うことが出来るようにするもの」と定義しています。

 その構成要素として、次のものを挙げています。

・主要会議の事前スケジューリング
 次の四半期の取締役会や次年度の戦略会議など主要な会議を事前にスケジューリングし、共有していく
・主要コミュニケーションにおけるフォーマットの一貫性
 社内の主要なレポートやプレゼンテーション資料のフォーマットを一定のフォーマットに絞る
・リーダーシップグループと意思決定プロセスの明確性
 リーダーシップチームを明確にし、階層があるならそれも示す。そのグループには名前をつけ、定例会議やメール送信先リスト (或いはソーシャルメディアのグループリスト) を準備して、社内の誰もがグループにアクセス出来るようにしておく。
・積極的な 「オープンドア・ポリシー」の実践
 スタートアップ企業に存在する不確定要素の上に、閉ざされた経営によって、さらにその要素を増やすようなことがないようにする。質問があれば、それに答える。
・ITシステムとオペレーションの一元化
 業務の目的に集中できるように、メール送信などIT操作が「面倒な作業」とならないようにする。

 スタートアップ企業向けの内容ではあるけれども、一つの例として参考に見てみました。

 ボルドリッジの観点からは、どの組織にも重要な、もう一つの構成要素があります。
 それが「継続的改善」です。

 日々の業務を行う中で、そこに改善の仕組みが組み込まれ、業務の進め方自体を最適なものにしていくものです。同じこと(同じ過ち)を繰り返すのでなく、次に行うときにはもっとうまくやる、当たり前のことですが、それを確実に進めていくための仕組みです。

 スマホのOSで言えば、AIが裏で動いていて、音声認識の精度を話し手の繰り返しの使用によって高めていくようなものです。新たなウィルスを検知してセキュリティを高めていくこともその例といえます。

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、核となる価値観と概念をベースとして、継続的改善の仕組み(あるいは文化)を組織に埋め込むための仕掛けです。

 ビジネス・オペレーティング・システムを構築するという観点からも、ボルドリッジを見ていきたいと考えています。

★★

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。


 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?