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「品質」についての5つの誤解

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。ボルドリッジはまた、米国マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)の「審査基準」であり、それをもとに自己診断・審査を行い、組織の改善点を見つけ、改善します。

 ボルドリッジに先立つ「品質管理」の研究成果、フィリップ・B・クロスビーの「クオリティ・マネジメント よい品質をタダで手に入れる法」を見ています。 

 その第2章には、多くの人が持っている、「品質」についての5つの誤解が取り上げられています。

「品質」についての誤解1
 品質とは、良いものとか、高級品とか、ぴかぴか光ったものとか、ずっしりと手ごたえのあるものとかを意味している。

フィリップ・B・クロスビー著「クオリティ・マネジメント よい品質をタダで手に入れる法」(小林宏冶監修、1980年、日本能率協会刊)

 良い品質、悪い品質、というように相対的なモノの価値を特徴づけるものとして用いられるます。そしてその「良し」「悪し」が人によって意味するところが異なったりします。これでは「管理」できません。

 この本では、品質を正しく定義することを提案しています。定義は単純で、「品質」を「要求条件との一致」と読み直します。そして、「要求条件(requirements)」を測定可能な項目を表すはっきりした言葉で定義します。

 ここでは「生活の質(Quality of life)」という当時の「新語」を取り上げて、それを、望ましい収入、健康、住環境、行政施策、その他の生活に関わる測定可能な項目を表すはっきりした言葉で要求条件を定義することを、例として示しています。

 品質管理が、製品・サービスの品質に限らず、定義され、管理できることの事例です。

「品質」についての誤解2
品質とは無形のもので測定できない。

 「品質」とは「良さ」だと考え、感情的な議論に走り、品質を確保するための具体的、論理的な行動に向かわなくなるのです。
 この本では、「品質コスト」という概念を取り入れ、不具合から生ずる費用、ものごとを最初から正しくやらなかったために発生する費用を測ることで品質を金額として測定できることを示します。

 当時の研究では、普通の会社では売り上げの15~20%がこれに費やされ、うまく品質を管理している会社では2.5%であり、その差が、品質管理による利益になります。

 品質コストについては、別章に取り上げられていますので、このnoteでも別の機会に紹介したいと思います。

「品質」についての誤解3
品質にも「経済学」がある。

 すなわち、「品質とそのためのコストバランスを考えれば、何もやらない方がよい。」「品質を良くするだけの金がない。」という理屈、品質管理に取り組まない言い訳です。

 これまでの説明の通り、品質の意味をしっかりと定義し、最初から仕事を正しく行うことが、いつでも安上りであると説明すれば、この言い訳は通じなくなります。

「品質」についての誤解4
すべての品質問題は、従業員、とくに製造部門の作業者が原因である。

 製品に欠陥があった場合には、この先入観のために、まず製造部門に向かいます。製造部門に行く道筋にある、経理部門や技術部門、コンピュータ部門や市場開発部門などで欠陥に気づかずに、その前を素通りしてしまいます。

 製造部門でも欠陥を見つけることはできますが、計画や開発の段階で作りこまれる欠陥を除去することはできません。

「品質」についての誤解5
品質部門で品質が作られる。

 品質部門の人たちは、自分たちには会社の品質すべてに対して責任があると感じていて、品質問題は自分たちの責任であるとして、誰かが責任を取ることで、問題が片づけられてしまう状況を指摘しています。

 重要なことは、みんなが品質の向上に対する積極的な態度を持つように方向付けすることです。

 以上のような「品質」についての誤解を示した上で、品質マネジメントがどのように会社の役に立つかという本題に話は進みます。

 「品質」は「要求条件との一致」である、そして、要求条件を具体的にすることで品質は測定できる、は強力な主張です。

 これがあるために、品質の概念を、製品やサービスなどのモノ以外にも拡張することができるわけです。

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 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。



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