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風俗嬢のみさきちゃん

林美沙希さんのことを考えているときに、ただ同じ名前だという理由でときどき思い出す女性がいる。
歌舞伎町の風俗嬢だったみさきちゃんのことだ。

若いころ(も)、私は女性にはモテなかったが、風俗嬢と親しくなることには長けていた。
みさきちゃんは、親しくなった最初の風俗嬢だった。

よくいっしょに食事買い物に行った。
店外で会うときは肉体的な関係は一切ない。
私が何か高価なプレゼントをするいうこともなく、仲のよい女友達という感じだった。

平日の朝に突然、「ねぇ、今からディズニーランドに行こうよ」と電話がかかってきたこともある。
当時の私はフリーランスではなく会社勤めのデザイナーだったが、仮病を使って仕事を休みディズニーランドへ遊びに行った。

みさきちゃんが同じ風俗店に勤める仲のいい友達を連れてうちに遊びに来たこともあった。
そのころはボロ屋ながら戸建ての家一人暮らしをしていたから、誰にも遠慮することなく、夜が明けるまで3人で酒を飲んで大騒ぎをした。

「お客さんに松嶋菜々子に似てるって言われた!」と彼女は笑って言った。
系統としては同じかもしれない。似ていないこともない。
ただ、あの上品な雰囲気は一切取り去った状態を想像してもらわないといけない。
ファッションやメイクはいわゆるギャルのような感じで、全身こんがりと日焼けしていた。

好き嫌いをはっきり言うところが、私にはとても付き合いやすかった
気も合うし、いい友達だったと思う。

しかし一般的な尺度でいえば、彼女は「悪い子」だった。
自分の親友の旦那さんと不倫をしていたのである。

あるとき、「気分が悪い。吐きそう。」と電話をかけてきた。
彼女が「カレ」と呼ぶ、親友の旦那さんが浮気をしたのだという。

もう何がなんだかよくわからない
その「親友の旦那さん」という男も相当ひどい
妻の親友と浮気するというのもムチャクチャだが、さらに別の女と浮気をしている。
その浮気を知って傷つく風俗嬢の心情というものにも、なかなか理解が追いつかない。

その後たしか「カレが嫌な顔をするから、もうあんまり電話してこないで」というようなことを言われて、疎遠になっていったと思う。
彼女が今どこで何をしているのかは知らない。

今の私が仕事も失って精神障害者になり、別の「美沙希さん」に夢中になっていると知ったら、きっといっしょに大笑いしてくれるだろうと思う。

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