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事業推進のための三つのスキルを育てる

ごきげんよう

ニュースを見ていたら今日イスタンブールに世界最大の空港がオープンしたそうです。
エアポートおじさんの僕は会社の若者との雑談で「世界最大のイスタンブール空港。行ってみたいね。飛んでイスタンブールだね。」と言ったのですが、例によってまったく反応がないのでなんとか反応してもらおうと「そういえば、サザンオールスターズの『勝手にシンドバット』って、あれ。当時ヒットしていた『勝手にしやがれ』と『飛んでイスタンブール』からパクって名前つけたんだよ?知ってた?」と更にたたみかけたのですが、「シンドバットはどこから来たんですか?」と若者に聞き返され、曖昧な記憶で喋ったら意図せずフェイクニュースを流していました。
いやぁフェイクニュースってこうやって出来るんですね。

さて、観客席の空気も冷え切ったところで今日のお話です。

>事業推進のための三つのスキルを育てる

ここ数年は自分が新規事業立ち上げをするだけでなく、新しい事業へのチャレンジを組織的に行うにはどうすればよいかについて思いを巡らせることが多くなりました。
その中で「処理のスピード」「正確性」「論理的思考」とも、「創造性」や「発想力」といった所謂「仕事ができる!」というわかりやすいスキルとまた少し視点が違ったスキルが重要なんだなと思うようになってきました。

僕の会社にも月並みですが社内公募制度というのがありますし、自分から手を挙げて新しいことに取り組みたい人は積極的に応援してきたつもりです。
当社も創業してから十数年となっていますが、常に新しい事業と価値を創造できることを目指してはおり、事業を創るとはとにもかくにもメンバーの主体的な参画が大事だと思っています。
手を挙げる人を募ってみたりすると閑古鳥ということはないのですが、もう少し盛り上がってくれたらいいのになとは思います。
まぁ皆日々の業務も忙しいので仕方ないですよね。他の会社の人たちに聞いても同じような課題は抱えているとのことでした。
事業を創るというと大げさですが、どんな仕事でも「やらされ仕事」と「主体的に取り組む仕事」では全然結果も変わってくるのではないかとは思います。
その動機が「興味」「わくわく」「新たな体験をしたいという欲求」といったものでも、「危機感」といったものでもなんでもいいのですが、とにかく自分でやってみようとコミットできるのは立派なスキルだと思います。
というわけで一つ目は「主体的に物事にかかわろうとするスキル」。

二つ目は「個人をチームにするスキル」です。一人でできる仕事には限界があるので何かやろうとすればチームを作らないといけません。
同じ目的に向かって共に力をあわせ、励ましあって上手くいったら共に喜べるような仲間を集め、束ねないといけませんよね。
そういうチームを自ら組成したり、自らの役割を見つけて参画し、ミッションを達成するために最適な個人が協力できるチームを作り盛り上げるスキルです。

そして、三つ目は「議論して物事を決めるスキル」です。テーブルの上に意見と事実を乗せて、フラットに議論して、物事をサクサクと進めていくというスキルです。
手分けして物事にあたっていれば個々人が持つ事実を情報としてテーブルの上に載せ、解決するためのアイデアを皆で出し合った方がよいでしょう。
もちろん、誰かが出したアイデアに対して、個々人が持つ情報を出し合ってアイデアの「筋の良さ」を検証することも必要ですよね。
これらをスピーディーに行うことがとても大切だと思います。

でも、実際の仕事はどうでしょうか?
なかなかうまくできてないものですよね。
仕事というのは手順が定義されているものが上から指示されて落ちてきて、正確に早くやることで評価されるもので、別に指示されたことをやるだけ。だって余計なことをしたらむしろ怒るでしょ?と思っていないでしょうか?
チーム、チームというけど人事権があるわけじゃないんだから、行けと言われた所に行って、そこに居る人たちとせいぜい仕事に支障のない範囲でうまくやればいいんでしょ?空気読んでやってんのにそれ以上にまだなんか求めるの?と思っていないでしょうか?
フラットな議論というけれど、エライ人のアイデアを批判したら根に持って後から意地悪されたらどうするんですか?自分が苦労して手に入れたアイデアを他のバカになぜ教えてやらねばならないんですか?議論って、勝つのは意見をゴリ押しして周りをバカだと決めつける人だし、負けた人は拗ねるし、フラットに議論なんて幻想じゃないんですか?と思ってないでしょうか?

いろいろ考えていたのですが、この三つのスキル、僕も十分に持ってるとは言えません。
なんでこんなことになるのかな、、と、よくよく考えたら物心ついた子供の頃から一度として僕はこれらを習ったことないな。と思い至りました。

私も小学生のころ公文式の塾に通いましたが、我が国では「より早く」「より正確に」処理するというのは、ドリルを学校がやらせたり、親が苦しい家計から月謝ひねり出して公文行かせてまで叩き込むのに、先の三つのスキルはからっきし練習も試験も経ずに大人になってしまった気がします。

どうすれば、このスキルを身につけることができるのでしょうか?
僕が思案していた中で、この3つのスキルを育てるために必要なアプローチとして大事だなと思うのは「勝ち慣れ、負け慣れ」です。

以前国際的な教育プログラム、国際バカロレアのPYP(3歳~の幼年プログラム)過程の幼稚園を見学したときに、すごく印象に残った内容がありました。
それはクラスでゲームをする際の2チームへの分け方でした。
まずリーダーをしたい子を挙手させて2人選びます。そしてその2人が次の仲間を一人づつ指名します。Aチーム2人とBチーム2人になったら各チーム2人で相談し次の仲間に加える子を指名するのです。それを繰り返してクラスを2つのチームに分けます。
なぜ印象に残ってるかというと、僕自身が子供の頃はクラスの人気者からは程遠い子供で、こんなことされたら最後の最後に余りものみたいになってみじめな気分になるだろうなと思ったからです。
見ていると子供たちはまさに「子供」なので容赦はありません。まず積極的な子がリーダーをしてどんどん自分の仲良しの子を指名していきます。
そしてどんどん進んでいくと最後の方はどうやら内気な子や、転園してきて間が無くまだ友達がいない子が残ってるのは明らかです。
どうなるんだろう。。。とものすごく不安に思った次の瞬間。「こっちにおいでよ!」と両方のチームから満面の笑顔で手が差し伸べられます。屈託のない笑顔があふれて、不安におもっていたであろう残っていた子もパッと顔が明るくなりました。
僕らが子供の頃はクラスを2チームに分けるといえば大体、出席番号順で偶数奇数とか、背の順番で交互に分かれるとかそういう感じだった覚えがあります。
先生が決めてくれていました。おそらくでないとツライ思いをする子が出るからでしょう。

このやり方はおそらくPYPというよりはその先生のやり方だったとは思うのですが、上位者が配置を行い平等に取り扱われるやり方とは決定的に違うということと、ゲーム自体の内容よりこの何気ないチームの作り方のプロセスの方に「自分が学んでこなかったこと」を凄く感じたのを覚えています。
僕は40代ですからもう我が国の教育を語るには体験が古すぎるとは思いますが、団体競技、個人競技はあってもミッションに応じたチームを主体的に作るといったことが頻繁に行われた記憶はなく、受験や就活などといった人生における節目のガチンコ勝負も基本個人戦です。
リーダーシップやチームビルディングについて学ぶ機会乏しく、ともすれば「みんな平等」とか「みんなそれぞれ個性があってよい」とかいう言葉が単なるお題目として上滑りしたまま、唐突に個人としての最終決戦がやってくる。そういうもののような気もします。
こんな調子では、勝った人は「オレすげぇ。お前らバカ」、負けた人間は拗ねて「もう勝負なんてしたくない」というマインドに二極化してしまうんじゃないでしょうか。
もっと普段の習慣レベル、たとえばこの幼稚園の何気ないチーム分けのような幼いころから「自分でチームを作りに行く」とか「選ばれる、選ばれなかった」「自分が他の人の役に立つ、立たない」といった言わば小さな勝負事みたいな状況の場数を踏んで、その時々の勝った負けたのような状況をどう受け止め、どうアクションすべきなのかを学ぶことで、「勝負し、負けたら勝った人を称賛し、勝ったら負けた人に手を差し伸べて自分と相対してくれたことに感謝する」ことに慣れ、それがスキルとして身についていくのではないかと思います。
スポーツでもビジネスでも「勝ち癖の大切さ」、「負け癖のダメさ」について語られることは多いですが、「勝ち慣れ、負け慣れの大切さ」について耳にしたことはあまりありません。

私はそれほど海外経験が豊かではありませんので、出羽守になりたくはないのですが、我が国のホワイトカラーの生産性の低さは度々指摘されてるところです。
産業構造が変化する中で、知識の「量」処理の「速さ」「正確性」などを尺度とした勝ち負けの結果だけが心を支配して、大切な結果の受け止め方や後処理が幼稚な人たちの集まりになって組織の生産性が上がってないのではないか?
設計図のあるもの、正解があることをたくさん素早く実行できても、イノベーションを起こしたり、前人未到の事業をカタチにするには非常に非効率な組織になりがちなのではないか?という問題意識を僕は今抱えています。


もちろん、学習に手おくれはないと思います。ですから、僕自身もそうですし、僕がかかわる組織でもこの3つのスキルの訓練と開発を行っていくつもりです。

あの幼稚園児たちの最後に残った仲間に「こっちへおいでよ!」と仲間に引き入れるあの笑顔を大人たちも持つことができればきっとイノベーティブで競争力のある組織になるのではないか?そう思う今日この頃です。

さて、今日のお話はこの辺で。
今日も持ち場でがんばりましょう。


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