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夢のあとに

いつかの私

「いってらっしゃい」

そう言って、きみを見送った日のことを、
ふと思い出すことがあった。

帰り道、雲の隙間から、かすかに光る星くずを見上げながら、
つらい事があったときは、ふと。
その日のことを思い出すことがあった。

あの選択に、後悔はない。
やり直したいと、思っているわけじゃない。

それでも。

あのとき、別の選択をしていたら、
私は今ごろ、きみと幸せに暮らしていたのだろうか?

そう思うことは、あった。

つらい事があるたび、あなたを思い出した。

あのとき、別の道を選んだあなたわたしを、
私は、夢にみていた。

いざな

カーテンの隙間から零れる、強い日差しで目が覚めた。
枕元に転がった時計を手に取る。
9時過ぎ。

髪をかき上げながら、重だるい身体を起こす。
もう少し寝ていたかったけれど、ばらばらと床に脱ぎ捨てられた服を見て、ため息をつく。

「さすがに今日は洗わないとな…」

オフィスカジュアルな洋服を拾い上げながら洗面所に向かい、洗濯機に投げ入れる。

久しぶりに晴れたな、と思った。

ガタガタと揺れる音を聞きながら、
ベッドに寝転び、何度も読んだ漫画を手に取る。

強くなり始めた日差しが、背中を暖める。

仕事は激務だけど、充実している。つらいときもあるけれど、仕事が嫌いだと思ったことは一度もない。

――でも、この働き方って、いつまで続けられるんだろう?

次の巻を取ろうと本棚に手を伸ばそうとしたとき、遠くから聞きなれた電子音ブザーが聞こえた。

そのまま伸びをしてベッドから跳ね起き、山盛りの洗濯物をかごにつめて、ベランダの窓を開ける。

日差しは強いが、秋めく爽やかな風が吹き抜ける。
その傍らには、小さな金木犀の植木鉢。

1週間ぶりの太陽の光。
橙色の小さな花の香りを感じながら、狭いベランダに上半身を投げ出す。

秋になると、どこからともなく香る金木犀が大好きで、
いつか育てたいと、ずっと思っていた。

毎年タイミングを逃してきて、
ようやく手に入れた鉢植えを、マンションのベランダで育てて3年目。

ようやくつぼみが出てきて、まばらに花が咲き始めたところだった。

揺れる衣服の隙間から見える、澄んだ青空。
ささやかな香りと、陽光にあふれるベランダで、
私はいつの間にか、眠りに落ちていた。

邂逅

…さん、…ーさん!

誰かの声が聞こえる。

ふと香る金木犀。
目を開けると、小さな男の子がお腹の上に乗っていた。

おかーさん!

まどろんでいた意識が急にクリアになる。

…おかあさん?

―誰、の?

おとーさん!
おかーさんおきた!!

見知らぬ男の子は部屋の奥に向かって走っていく。

身体を起こすと、金木犀の鉢。
だがベランダの床はトタンではなくコンクリートになっていた。
そして視線の先には、子供サイズの洗濯物。

まったく知らない景色。

身体を起こし、辺りをきょろきょろと見回していると、
再び足音が聞こえる。今度は二人ぶん。

「疲れがたまってるんじゃない?大丈夫?」

男の子と一緒に、私を見つめる懐かしい瞳。

10年経っても、はっきりと憶えている。

それは遠い昔、私が恋した人だった。

遠い記憶

彼は、大学の同級生だった。

同じ夢をみる仲間。

別段、端正な顔立ちだったわけでも、男らしさにあふれる人でもなかった。
色白でやせていて骨ばっているひと。ひょうきんで冗談も言うけれど、どこか陰のみえるひと。

真面目な人じゃなかったけれど、
石橋を叩いて渡るような生き方をしてきた私にとって、
その存在はまぶしく、輝いて見えた。

学校帰りに何度も飲みに行って、同じ夢の話をする中、
彼はいつも、ぽつぽつと、家族の愚痴を話すのだった。

家族の不和。医者の道を歩む優秀な兄姉と、落ちこぼれの自分。会話のない家族。家にいるだけで感じる、よどんだ空気。

『じゃあ家を出ればいいんじゃない?』

何度目かの夜、私は軽はずみに、そう言ってしまったのだ。

愚痴を聞いているのが、嫌なわけじゃなかった。
でも、言っているだけでは、何も変わらないでしょ?

彼が本当にそうした結果、どうなるのか考えもせずに。

卒業研究が始まり、研究室にこもる日が続く中、
人づてに、彼が大学に来ていないことを知った。

聞けば、家を出てマンガ喫茶、公園のベンチ、友人の家を転々としているらしかった。

私のせいだ、と思った。

必死に彼に連絡を取り、無理やり会う約束を取り付けて、
彼に言った。

私のせいで、家を出ることになってしまったんじゃないかと。

彼は首を振り、疲れた顔で笑った。
いずれこうなっていたと思う、と。

そのころ私は、まだ実家に暮らしていた。
実家を出て、彼と一緒に暮らす選択肢もあった。
でも、私にはその道を選べなかった。

今歩いている道を外れたくなかった。
この道をこのまままっすぐ歩けば、間違いなく、私の夢が手に届くところにあった。
私は不器用で、二つを同時に選ぶことはできない人間だった。

――それは10年経った、今でも変わらない。

その後も、何度か彼に合い、嫌がる彼に食料やお金を渡した。
そうすればきっと、この関係が続くと思っていた。
幼い私は、それ以外に好意を表現する手段を知らなかったから。

そしてある日、彼は
「遠いところで知人の仕事を手伝うことになったから、しばらく会えない。」
と言った。

私は素直に頷き、
「わかった、いってらっしゃい。」と言った。

それが、彼との最後になった。

お金を返してほしいと思ったことは一度もない。
でも彼なら、お金を返すために、きっと会いに来てくれると信じていた。
だから、いずれまた帰ってくるのだと思っていた。
だから、さよならも言わなかった。

同じ夢を追っているから、
また会えると思っていた。

家を捨てた彼に、夢を追う気力などあるはずがなかったのに。

あのときの私は、
彼の選択を尊重することが、彼のためになるのだと思っていた。
『一緒に暮らそう』と言う勇気もなかった。

本当は『離れるのは嫌』『そばにいたい』と思っていた自分に気づいたのは、それから何年も後だった。

それでも、
自分の人生を捨てて、彼の人生を背負う勇気は、私にはなかった。

幼いころから夢みてきた未来のほうが、
彼よりも、私は大事だったのだ。

夢の世界

わたしは彼と結婚し、専業主婦となり、二人の子供をもうけていた。

息子は2歳。
長女は小学校に上がったばかりで、今は公園に友達と遊びに行っているようだった。

これが、私の望んだ世界か、と思った。

きみのいる世界。
きみの手を取った未来。

涙がこぼれ落ちそうになるのをこらえ、洗面所で顔を洗った。

チャイムが鳴る。

見知らぬ女性。PTAの仕事があるらしく、家まで迎えに来てくれたという。
彼に子どもを頼み、急いで玄関を出る。

そうだよな、子供が小学生で、主婦なんだから、PTAの仕事もしてるよな。

話を聞くと、「子ども110番の家」のステッカーを貼ってもらっている家を回って粗品を配るという。

そんな仕事があるのか。ていうか、年度末でも何でもないけど、今の時期にやるものなの?
ていうかそもそも、普通に彼は家にいたけど、今日って休日なの?平日休みの仕事なのか?

山のように疑問が浮かんでは消えた。

家庭を持つということ

1時間ちょっとであいさつ回りは終わった。

迎えに来てくれたこの女性と私は同じマンションで仲が良いらしく、娘同士が公園で遊んでいるから一緒に迎えに行こう、ということになった。
いわゆる「ママ友」か。

―ああ、コミュ障で友人の少ない私でも、子供が生まれれば、ちゃんと人間関係うまく構築できるんだ。

昔から、女子同士の「グループ」的な付き合いが苦手だった。

小学校、中学校、高校。社会人になる前の私にとっては「グループ」が世界のすべてだった。
「グループ」から外れないように、常に周りの顔色をうかがい、八方美人に生きていた。

自分というものがなく、流されるままに生きていた自分。
絶対にあの頃には戻りたくないと思っていたのに。

―わたし、うまくやれてるんだ。

ほっと胸をなでおろした。

公園に行くと、他にも何人かの母親たちが集まって話をしていて、そこに混ざる。

ごくり、と息をのむ。

これが「ママ友グループ」ってやつか。

笑顔の建前の下に隠した本音。先生や、その場にいない人のうわさ話。自慢、優越感、卑下、嫉妬。

こんな「グループ」、死ぬほど嫌だったはずなのに。
学生時代の、女の子同士の人間関係なんて、二度とするものかと思っていたはずなのに。 

今の私にも、同じことができるのだろうか?
子供が生まれたから、変わることができたのだろうか?

「ママ―おなかすいたー!」

とたとた、と駆けてきて、私の両足に抱きつく、ちいさな女の子。

「ひかるちゃん、お腹すいちゃったんだね~」
 
と、一緒にあいさつ回りに付き合ってくれた女性ひとが言う。

ああ、娘の名前は「ひかる」にしたのか。どんな字書くんだろう?結婚もしていないくせに、子供ができたら「ゆうり」にしたいなって思ってたんだけど、「ひかる」にしたんだ。彼の好みだろうか?

ーこれは、この会話から離脱できるチャンスかもしれない。 

「ひかるお腹すいちゃったみたいだから、帰りますね。」
「私も今日は疲れたし、帰ってゆっくりするわ。みさきー!帰るよー!」

そういえば、この女性ひとの名前も知らない。子供が「みさき」ってことは、「みさきちゃんママ」ってことでいいんだよね。

「じゃ、またねー」「また来週」
 
そういって「ママ友グループ」から離脱した。
たぶん今ごろ、いなくなった私たちの噂話をしてるんだろうな、きっと。 

それぞれ子供と手を繋ぎながら、「みさきちゃんママ」と、たわいのない雑談をする。

この人とは、話していても苦痛じゃないな。と思った。 

「ママ友」とは、何かとグループで集まり、表面上は笑顔で付き合いながら、その場にいない人のうわさ話に花を咲かせる、そういうものだと思っていた。

でもこの女性ひとはそうじゃないみたい。
他人の噂話をするわけでもなく、家族や家事などの、自分主体の話。
社会人になってからできた、数少ない友人たちとタイプが似ている。

こういう人もいるんだ。

そうだよね。

社会人になっても、毎日グループでランチに行って仕事の愚痴を言う人たちもいれば、ランチは一人で、という人もいたし、気の合う人と仕事以外の話で盛り上がる人もいる。

「ママ友」だって、同じなんだ。

エレベーターで「みさきちゃんママ」と別れ、家に帰る。
 
何でもない今日の出来事を楽しそうに話す「ひかる」。

なんだか心が温かい。
子どもが苦手で、同じ空間にいることさえ苦痛だったはずなのに。

人って変わるんだな。と、改めて思う。
それとも、彼との子どもだからだろうか?

そういえば、以前父も言っていたっけ。
「子どもは嫌いだけど、自分の子供はかわいい」と。

迷うことなく玄関にたどり着いて、ドアを開ける。

自分の部屋がどこかも知らないのに、意外と帰れるもんなんだな。
帰巣本能、ってやつだろうか。

ふわっと、美味しそうな香りが漂ってくる。

ーそういえば、料理上手かったっけ。

「私が働くから、主夫になってくれない?」なんて、
冗談めかして話したこともあったなあ。

広くはないが、そこそこきれいな部屋。しかもこの時代に、共働きではない。大学にもろくに通っていなかったのに、彼はいったい何の仕事をしてるんだろう? 

「ただいま」「ただいまー!」

ふたつの声に反応して、どたどたと男の子が駆けてくる。
「おかえりー!」

 そして、うしろからゆっくりと現れる、懐かしい彼の顔。
「おかえり。」

 こんな人生が、私にあったんだ。

 あのとき、その手を取っていたら、こんな人生がありえたんだ。
 愛しい人が、笑顔で迎えてくれるだけで、
 こんなに幸せな気持ちになるんだ。

 また涙があふれそうになり、目線を外して玄関の靴をそろえる。
「ご飯作ってくれてたんだ。ありがとう」

「もうご飯にする?」
「うん、ひかるもお腹空いてるみたいだから。私も手伝う。」

夢のような世界。

愛しい人と、その子供たちと囲む食卓。

これまでずっと、仕事一筋の生き方をしてきた。
ずっとやりたかったことを、仕事にできた喜び。仕事は楽しかった。
スキルアップしたとき、責任のある仕事を任せてもらえたとき、
自分が成長していくことが嬉しくて、仕事をしてきた。

幸せは、努力する人に与えられるものだ。

そう思っていた。

でも。

ただ、笑い合うだけでいい。
愛する人と一緒にいるだけで、
愛する人たちと笑い合うだけで、幸せになれるんだ。

あのときの選択は、後悔していない。
でも、もし、あのとき、きみと一緒に生きる選択をしていたら。

私は――

見つけた後悔

気が付くと、すっかり夜になっていた。

晩御飯の後、遊び疲れた子供たちは彼と一緒にお風呂へ。

その間に食器を洗い、ざっくりと片付けられたおもちゃ箱を持って、押し入れを開ける。
扉を開けると、マンガを入れた段ボールが何箱も詰まっていた。
 
確かに、これとかこれとか、子供の教育にはちょっと悪そうだからなぁ…。本棚に入れるわけにはいかないし、確かにここにしまうしかないか。と思っていると、
一番奥に、隠されるように大きなダンボールが置かれていた。
厚いほこりを被っていたが、何となく中身が気になって、そっとフタを開ける。

そこには、わたしが捨てた夢が詰まっていた。

子供のころからの夢。それを叶えるために、勉強して、高校に行って、大学に行った。たくさんの教科書と、専門書と、手書きのノート。
段ボールいっぱいに、キレイに納められていた。

――捨てられなかったんだね。 

愛する人、愛する家族。幸せな未来。

でも、そうだったね。
この人生を選ぶということは、夢を捨てるということだったんだ。

段ボールは一番奥にしまわれていたけれど、フタにはガムテープが剥がされた跡。何度も上に物を乗せたのか、上部は破れかかって凹んでいた。

時間を見つけて読み返していたのかな?
もしかして、いつか、役に立つ日が来るんじゃないかって。

でも、子育て、家事、日々の仕事に忙殺されて。次第に思い出すこともなくなったんだろう。

それでも、捨てることはしなかった。

捨てられなかったんだ。

そうだよね。

目からあふれ出たものを、こすらないようにそっと抑える。 

人間関係、子供とだけで過ごす日中。子供の夜泣き、かんしゃく、ケンカ。
大変なことだってたくさんある。

家族がいるからそれで幸せ、なんかじゃない。
体力と精神を削って、全力で生きたうえでの幸せなんだ。

そうか。

――あなたも、私のことを思い出していたの?

あのとき、彼ではなく、夢を選んでいたら、
わたしは今ごろ、幸せに暮らしていたんだろうか、と。

さよなら

お風呂あがり、子供の寝支度、寝かしつけをしていたらあっという間に一日が終わった。

リビングのソファで、彼の隣に座ってテレビを見る。

そうだよね。
家庭を持つって、そういうことなんだ。

実家に置いておくこともできたのに、
この家にまで持ってきて、押し入れにそっとしまわれた私の夢。

そう。

きみといる未来を選ぶということは、
私の夢を、あきらめるということなんだ。

などと難しい顔をして黙っている私を見て、

「そろそろ寝る?」

彼が言った。

そうか。
そうだよな。夫婦なんだから。

そうだね、と頷いて、一緒に寝室に向かう。

下の子はまだ2歳なのに、子供と寝室は別なんだ。
けっこう西洋風の子育てなんだな…という感想を浮かべつつ、
ベッドに座る。

聞きたいことはたくさんあった。

いつ結婚したのか?
どうして結婚することにしたのか?
どうやって両親を説得したのか?
私は専業主婦みたいだけど、きみはどうやって、私を養うだけの仕事を手にしたのか?

たくさんあったけれど。

部屋の電気を消して、同じ布団に入る。

「ねえ」

暗がりの彼と向き合う。
自然と、涙がこぼれた。

「今、幸せ?」

少しの沈黙の後、彼は言った。

「うん、幸せだよ。」

――その言葉が、聞きたかった。
きみが幸せに暮らしているかどうか、ずっと気になっていた。

二度と会えないとしても、
きみに二度と会えないとしても、
きみが幸せに暮らしていさえすれば、
私は、それでよかった。

「少し、ぎゅっとしてもいい?」

声が震えた。

彼は何も言わず、私を抱き寄せた。

10年前の、あの日のように。

肩を震わせ、
しゃくりあげそうになるのを噛み殺しながら、
久しぶりに、泣いた。


ふと気が付くと、彼の顔を月明かりがやわらかく照らしていた。

そっと、頬に手を寄せる。
あのときよりも健康的な肌色になったし、少し、太ったかな。

愛しいひと。
10年間、つらくなるたびに思い出した、愛しい記憶のひと。

せっかく光が差しているのに、
なんだか視界がゆがんで、きみの顔がよく見えないけれど。

さようなら、私の愛した人。
きみが今、幸せなら、私は、うれしい。

彼の前髪を梳き、額にそっと口づけをした。

夢から醒めて

ぽつ、ぽつと、頬に冷たいしずくが当たる。

金木犀の香り。

目を開けると、いつもの、ブリキのベランダに横たわっていた。

空は鈍く灰色に変わり、
雲の隙間から雨粒が落ちて、頬を伝う暖かいものと混ざっていた。

濡れた顔をぬぐって起き上がり、
ばたばたと生乾きの洗濯物を取り込む。
雨を浴び、散り始めた金木犀の鉢植えをベランダの端に動かして、窓を閉めた。

腑に落ちないところはたくさんあった。
夢だと言われれば、間違いなくそうだと言える。

でも、なんだか、妙にリアルで。
久しぶりに見た、彼の夢だった。

――不器用すぎるでしょ。

と、Tシャツの裾で目元を押さえながら笑った。
 
聞きたいことは山ほどあった。
夢なら、いくらでも聞けたはずなのに。

「今、幸せ?」

なんていう言葉しか出てこなかった。

夢の中でさえ、言えないんだ。

――だから、私は今、ここにいるんだよね。

つらくなるたびに夢みていた、彼との未来。
暖かく、幸せな家庭を手に入れたわたし。

でも私の夢は、段ボール箱に詰められ、押し入れの中に。

つらくなると、いつも思い出した。

もしあのとき、私に夢を捨てる勇気があって、きみの手を取っていたら。
きみのそばにいることを選んでいたら、
今ごろ私は、幸せになっていたんだろうか、と。

でも。

あなたわたしも夢みていたんだよね?
もしわたしが、あのとき、夢を選んでいたら、
わたしの人生はどうなっていたんだろうと。

そう。

人生は所詮、ないものねだりなんだ。

でも。

私にはあなたわたしがいるから。
私が選べなかった未来を、あなたわたしが生きているから。

だから、私が生きよう。
あなたわたしが選べなかった、未来を。

忘れなくていい。
思い出したっていい。
でも、その未来はあなたわたしだけのもの。

あなたわたしに誇れるように、私も生きよう。


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