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小・中学生グラレコ授業!文科省ジュニアドクター育成塾での挑戦〜描く力の未来〜

こちらは、グラフィックレコーディング Advent Calendar 2018の記事です。

私はデザイナーとして働きながら、全国の学校で「見える化」をテーマにグラフィックレコーディング (通称:グラレコ)を活かしたコミュニケーションデザイン授業の講師をしてます。3年前にSchooでグラレコ授業もしました。2018年は金沢工業大学、明治大学、ジュニアドクター育成塾(愛媛大学)、早稲田大学WBS、帝京大学、千葉大学の全6校で授業を開催しました。

2017年に投稿した下の記事で「小学校で授業をしたい」と野望を書いたんですが、2018年夏、愛媛大学での文部科学省ジュニアドクター育成塾を通してついに小学生・中学生対象の授業が実現しました。(やったー!!)


そこで、授業内容と学びをふり返り、なぜ子どもたちに「描く」を伝えて教育に関わるのか、根っこ部分をまとめました。

もくじ
・ジュニアドクター育成塾とは
・ジュニアドクター育成塾でグラレコ授業ってどんなことしたの?(映像)
・なぜ小・中学生向けにグラレコ授業をすることになったのか
・ワークショップのポイントとアンケート結果
・「教育×見える化」のこれから 〜描く力の未来〜
・最後に、グラレコ Advent Calendar 2018を立ち上げて学んだこと


ジュニアドクター育成塾とは

ジュニアドクター育成塾とは、文部科学省が科学技術の未来を担う人材育成を目的に子ども達に向けて研究的に行ってる取り組みで、小学校5年生から中学校3年生を対象にした国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受けて実施される研究人材育成事業です。その一環として今回の授業は開催されました。(愛媛大学のnoteに詳しい説明が書かれてます。)


ジュニアドクター育成塾でグラレコ授業ってどんなことしたの?(映像)

塾生の小・中学生40名、その保護者40名、愛媛大学スタッフの皆さんで4時間楽しく描き続けました。当日の授業を愛媛CATV局さんが取材してくれましてYouTubeに載せてくれています!授業内容やグラレコ授業を取り入れた理由も映像内で説明があるので観ていただけると嬉しいです。※2分ちょっとでナレーションが入ってます(音あり)

また、ジュニアドクター育成塾愛媛大学公式ページでも授業内容記録や講師インタビューを載せていただきました。

↑愛媛新聞社さんも授業について新聞記事を書いてくれました。

↑講師インタビューも受けました。デザイナーやグラレコのお仕事についてお話しました。


なぜ小・中学生向け授業をすることになったのか

ジュニアドクター育成塾事務局長である愛媛大学の大橋淳史先生からお声がけいただいたのがきっかけでした。「子ども達は板書を写す機会は多いが、考えやイメージをアウトプットする機会が少なく、聞きながら考えをまとめていく表現手段にグラレコを使えないか」といった課題感を受け、「頭の中を見える化」をテーマにワークを作りました。


ワークショップのポイントとアンケート結果

授業で特に子ども達の反応が面白かったワークを実際の授業風景とアンケート結果を使い、ふり返ってみます。

チームでキャラクターを作ろうワーク

顔の各パーツを一人一人順番に描いてチームで1つのキャラクターにするアイスブレイクワークです。絵を見せて話しながら笑いが飛び交い盛り上がりました!

各チーム不思議なキャラが生まれましたが特徴や特性も細かく説明できていて驚きでした。一緒にひとつの偶発的なものを作ることでペンを動かす抵抗が薄れていきました。


人間イラスト創作ワーク

ロール紙を使ってお互いの絵を見ながら描けるようにし、自由に新しい人間(のような生き物)を描いてもらいました。腕が長くパンチしている絵がその隣の子のスペースまで伸びて、それ見た別の子がパンチされて泣いている表情の人を近くに描いたり、お互い隣り合ってなければ生まれなかった偶然の産物ができました。


アイコン思考ワーク

クイズ形式で身近な物をアイコンで表現するワークです。急に教室の周りのアイコンや物を観察し始める子もいました。今日から世の中にあるアイコンにたくさん気付き発見していってくれそうです。


5W1Hプロセスお絵描きワーク

5W1Hに分け順番に描いていき情景イラストを完成させるワークです。「夏休みの海の大事件」をテーマにそれぞれ独自の巨大生物を描いてくれました。巨大生物に横から追いかけられてる絵を描く人がほとんどな中、後ろから迫ってくるダイナミックな構図で描いてくれる子もいたり、襲われている描写をさらに囲むようにサメの口を画面の外側に描いた子もいて映像作家のようでした。


世界観スケッチワーク

ペアになって「理想の未来の学校」をテーマにお互いの脳内マップを交換して世界観を描いてもらいました。漫画のようにシーンごとに描く子もいるし、全体の空間を描写する子もいました。

「違うねん!」って言ってお互い描きながら説明するペアもいたり、理想とは別に描き手が勝手に付け加えたものを面白がり採用してる子もいました。相手を否定するのではなく「どう違うか」を描きながら話し合い立て直せる、相手の理想に近づけるためのステップが自然と生まれていました。これを味わってほしいワークでしたし、大人にこそ改めて必要な体験かもしれないなとも思いました。


こんな装置あったらいいな大発明ワーク

発明家になったつもりで新しい装置の設計図を描いてもらうワークです。

Amazonとブックオフが合わさったようなサービス設計まで考える子や、

「全自動髪の毛セット装置」という身近な生活に役立つものを考えてくれる子や、

クーラーから寒いギャグなどの涼しくなるような言葉が、暖房からは暖かい言葉が流れてくるというエモくておしゃれな装置を考えてくれた子までいました。コンセプトが素敵!!

ひとりひとり全然違う装置を考えてくれて、シェアタイムには感想やコメントが飛び交いました。


ゴール見える化ロードマップ

「この塾を終えて一年後の姿(理想の姿)」をテーマに受講生に描いてもらい、保護者の方にも同じテーマで子について描いてもらい、持ち帰って親子で絵を見せ合って話してお互いのギャップに気づいて欲しいと思って入れたワークです。

受けて終わりではなく、子ども達とその保護者のみなさんにとって少しでも未来につながるワークになっていたら幸いです。

休憩時間には保護者席の各テーブルもまわりましたが、元々グラレコを知ってくれていた方もいました。保護者の皆さんは見学予定でしたが全員が一緒にワークをやってくれました。意欲の高さが子どもに一歩も劣らずで嬉しかったです。

また、全てのワークにおいてグループシェアの時間を必ず取りました。描いたものを一人で描きっぱなしにせず、何をどう考え描いたかを見せながら説明するという体験をしてもらいました。そのせいか、最後のロードマップワークでは最初に比べみんなしっかり説明できるようになっていてこんな短時間なのに別人のように急成長するのか!と驚きました。

この教室は4時間通して、描いて共有することが当たり前の世界になってました。それが何より嬉しいし、最後まで意欲高く取り組んでくれる姿に感動しました。授業スタート時からペンを走らせるごとにみんなの笑顔が増え、描いてる最中もお互いあーだこーだと乱入したり会話が自然と生まれるようになっていて、理想の空間がそこにはありました。自由に「描く」ことは大人になり否定されてきたこともありますが、目の前の子どもたちを通し自分自身が映し出されたようで嬉しくて少し泣きそうになりました。


授業後のアンケート結果について

受講生の85%がグラフィックレコーディングを知らない中での授業でしたが、満足度としては5段階でも4以上の高い評価を多くいただけました。

他にも「学んだこと」の自由回答には予想以上に多くのことを感じ取ってくれたようです!

主にどのようなことを学べたと思いますか。(抜粋)
・言葉で伝わらない自分の価値観が表せるのはすごくいいことだと感じた。
・言葉だけより絵といっしょに伝えた方が、相手により正確に伝わりやすいと学びました。自分の頭の中を整理したり、言葉の通じない外国人の方との交流に活かせそうだと思いました。
・ 絵を使って自分の考えや情報をまとめてほかの人に伝えたり自分が迷った時に自分の気持ちを確かめるのにいかせそう。
・口では伝えられないことも絵を使うことで分かりやすく伝えることができる。
・今までは、文章でどれだけ表現をできるかというのが注目されていたがこれからの時代は世界どこでも共通して使える絵が重要になっていくんじゃないかと思った。
・みんなの思っていることをみえるようにすることで、意見をまとめやすくするのに役立ちそうです。

授業フィードバックの回答には、絵を描く楽しさを感じてくれた子が多く、さらにこんなことしたかったという要望もいただけました!

授業全体についてフィードバック(抜粋)
・こんなに楽しく絵を描いたのは初めてでした!ありがとうございました!!
・技術を教えともらってから、すぐに実践することが出来てとても身につきました。
・すごくわかりやすい授業で楽しかったです。絵をかくことと、字も書くことも苦手ですがペンの持ち方で絵や文字も変わってくることなど今まで教えてもらっていない当たり前のようなことを教えてもらってすごくためになりました。授業の進め方もあきることなく楽しめました。ありがとうございました。
・絵を描いた紙を持って帰って家族に絵をみせて話し合いたかったです。
・もともとある機能的なものにデザインを加えて、付加価値を高めるような開発をしたい。たとえば、文房具や身の回りのものを使い易くて楽しめるものにしたい。

開始から最後まで、子どもたちの発想や考え方に驚きと感動の連続でした。お声がけいただきました愛媛大学の大橋先生、助手の岡本さん、愛媛大学の学生スタッフのみなさん、イベント会社の皆様、愛媛CATVの皆様、愛媛新聞社の記者様、そして参加してくれた小学生・中学生の受講生のみなさんとその保護者の皆様、ありがとうございました!


「教育×見える化」のこれから 〜描く力の未来〜

「頭の中を見える化」というテーマで授業を実施してきましたが、私はいつも、”描いて共有することが当たり前の世界になることでもっと誰もが『想いを見える化』できたらいいな”と考えてます。

「描く(えがく)」というのは何も紙にペンで描くことだけを言っている訳ではなく、コミュニケーションを取るための表現方法という意味で使ってます。この「描く」は、人によってはグラフィックではなく文章だったりプログラミングだったり身体の動きであるパフォーミングだったりさまざまです。

未来ではAIが頭の中で想像したものを全て現実にビジョンとして映像や空間上に表現し他の人にそのまま伝えられるかもしれません。しかし、それをどう頭の中で描くのかその想いはどこから来るのかという部分はやはり人間だからこそできる重要な部分、素敵な部分だと思うのです。たとえどんなに手段は変わろうとも人間が想いを持って描く力は未来をつくることに繋がると私は信じています。

だからこそ、この「描く」が技術手段としてどんな方法に置き換わろうともそれそのものを忘れないため、自分と自分以外とでコミュニケーションが取れる人であるために「見える化」の教育が重要であると考えてます。私にとって未来の子どもに対して何かできる描く手段はグラレコをきっかけとした描く体験の提供なので、今後もチャレンジし続けたいと思います!

これらの経験を活かし、ビジュアルファシリテーションチーム「BRUSH」の一員として新宿区落合第六小学校で実施した「おえかきシンキング」授業のお手伝いもしてます。


最後に、グラレコ Advent Calendar 2018を立ち上げて学んだこと

この記事に書いたような1年の活動振り返りをシェアできたら面白そうと思いグラレコのアドベントカレンダーを作ってみたのですが、3日で25枠全て埋まりツイッターでもさまざまな声をいただけて嬉しかったです!

他の人の記事を読むことで私一人でふり返るより多くの気付きがありました。カレンダー参加者の方と実際にお会いすることもありました。一人でたくさん考えることも大切ですが、アウトプットして多くの人と共有し語れると楽しいし新しい興味にもつながると思います。カレンダーに参加していただいた方にも少しでもそう思ってもらえてたら嬉しいです。来年もこのカレンダーがどこかしらから立ち上がるといいな〜と密かに思ってます。

カレンダー参加者の方、そしてこの長い文章を最後まで読んでいただきました方に心から感謝です。ありがとうございます!!よいお年を!

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最後まで読んでいただきありがとうございます!グラレコを活用した「見える化」教育活動をしているのでよかったら他の記事も読んでもらえたら嬉しいです🙏