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タイビエンナーレ訪問記(1)

先月(2019年1月)、タイのクラビで開催されているタイビエンナーレ(Thailand Viennale)に行ってきたので、簡単に紹介しておきたいと思います。今回が第1回で、クラビ(Krabi)というタイの南部の観光地が舞台になっています。日本のビエンナーレやトリエンナーレは、地域おこしを目的としていますが、タイビエンナーレも目的は同じようなものかと思います。

クラビという場所は、日本人にはあまり馴染みがないようですが、結構有名な観光地で、ヨーロッパ人(英語を話してなかったので、フランス、ドイツ、ロシア等)やインド人、中国人が沢山来ていました。クラビよりもクラビの沖にあるピピ島(以前、ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」の舞台になりました)の方が有名かもしれません。今回はピピ島は展示エリアになっていませんでしたが、もう有名で敢えてアートで宣伝する必要がないからでしょうか。

アート作品は、エリア的にビーチ地区、クラビタウン地区、自然公園地区の3箇所に大きく分かれて展示されていて、それぞれ結構離れているので、移動には時間がかかります。今回は時間の都合で、ビーチ地区とクラビタウン地区しか行けなかったんですが、この2つの地区の展示について紹介していきます。

まずは、ビーチ地区。アオナンビーチ(Ao Nang Beach)、ノパラッ タラ ビーチ(Noppharat Thara Beach)、ライレイビーチ(Railay Beach)、ポダ島(Poda Island)の4箇所があり、ライレイビーチとポダ島は、それぞれアオナンビーチからボートで渡らないと行けません。ライレイとポダ島のどちらを取るかということで、ポダ島を選んでしまいました。(注:ボートは何人かで乗り合わせるんですが、別にアートの展示を観に来てる訳でない人がほとんどで、ポダ島でゆっくりしたいという意見が多く、ライレイビーチとのハシゴができなくなったという訳です)

まずアオナンビーチの展示では、下に画像を紹介したKamin Lertchaiprasert のNo Sunrise No Sunsetという作品が印象に残りました。外から観ると鏡のようにビーチが映った長いコンテナのようなものがあり、中に入ってみると女性(Yai Sa)の彫刻があります。作者によるとこの女性は、究極の真実を求めて旅立ったパートナーを待ち続ける女性で、愛と待つ事を象徴しているそうです。中にはバンクシーのような絵もあり、外と中の印象のギャップも面白かったです。

続いて、ノパラッ タラ ビーチですが、ここにはいくつか作品が集中していて、ある程度纏めて観れます。(ただ、アオナンビーチから作品まで歩くとちょっと距離があります。タイのビーチでは、トゥクトゥクかバイクの後ろに乗って移動するのがいいようです。)ここで良かったのは冒頭に画像を紹介したMap OfficeのGhost Islandという作品です。ビーチのこの辺りは潮の満ち引きで海になったり、陸になったりするところで、ちょうど行った時は干潮時で、作品の近くまで行けました。この作品が一番、周りの環境に溶け込んでいた感じです。他では、下のAlicja KwadeのBe-Hideという作品がビーチにちょっとした違和感をもたらす感じで良かったんですが、残念なのは会期も後半で作品が割れていたりして完全に本来の姿ではなかった点です。後でも触れますが、サイトスペシフィックな作品をビーチに放置したままだとちょっと無理のある場合もあり、次回以降の課題ではないでしょうか?それとガイドブックにはありながら、未完成で展示されていない作品(Li Wei)もありました。ちょっと残念でした。

次は、ポダ島ですが、ここでは今回のガイドブックの表紙にもなっているAyse Erkmanの下記のPD/MGRTTという作品を楽しみにしていたんですが、実際には設置されていなくて、あくまでイメージ画像だけだという事です。確かに実際設置するとなるとかなり大掛かりな作業になるとは思いますが、このイメージが強過ぎたのでガッカリ度も大きかったです。この作品はマグリットの「ピレネーの城」へのオマージュです。

それ以外では、使われなくなった電話のブースを瞑想のための場所に見立てたLeung Chi Wo のMonuments for Solitudeという作品と巨大なドラムスティックを使ったCamille Normentのpulse - Formationsという作品は少し印象に残ります。

ポダ島自体は、アオナンビーチと比べてとても綺麗なビーチなので、ほとんどの人はビーチでのんびりするために来ているようで、たまにアート作品をなにこれという感じで観ているようでした。また誰もアート作品を管理していないので、Camille Normentの作品でバスタオルを乾かしたりしている人もいて、もう少し説明というか、観光客が楽しめる工夫が必要なようにも感じました。それでも綺麗なビーチでのんびりしながら、アートも楽しめるというのは贅沢な時間の過ごし方ではあると思います。

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