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【ライブレポ】LiSA「 LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[eN] 」武道館公演2日目【ネタバレ】

小雨気味の金曜日、それにもかかわらず多くのファンが日本武道館に集まり、しかも当日券も売り切れたという話を耳にした。

文字通りの「満員札止め」となったこの日のライブ、驚かされたのはステージそのもののセッティングだ。この日のステージは、なんと360度に開かれており、演者のうしろには暗幕などが一切なく、バックスタンドに座る観客は、LiSAやバンドメンバーの後ろ姿をバッチリと見ることができた。アンプやスピーカーなどは通常通り置かれているが、アリーナ会場にありがちな巨大画面はなく、ステージ上には5枚のパネル型画面を置き、最小限の舞台が観客を待っていた。

会場真ん中におかれた円形の小ステージと花道、バックスタンドをぐるりと回れる花道が一番に目をひく。武道館という大舞台になるべくお客さんを入れ、そしてどの客席にも近づけるように、そんな真摯な気持ちを感じ取れる。

ライブの始まりは、意外とすんなりとした流れだった、PVが流れるなか、LiSAはフラッと会場中央のステージに現れたのだ。大歓声をひとしきり聞きとどけ、「Believe in myself」のサビ一節をうたい、ライブの幕があがった。

彼女は4曲目「ASH」までステージ中央に立ち、キッチリと歌いきったのだが、その姿にはすこし驚かされた。会場を所狭しと走っては、腕をふりあげて煽りたてる姿をよく知っている身からすれば、この日の彼女、この立ち上がりは、どこか慎重な振る舞いにも見えたのだ。この日3度目となった武道館公演、聖地でのライブをもう一度しっかりとかみしめていたのだろうか。

いや、もしかして・・・と思っていたところ、MCタイムが始まる。実は、この日のライブのキーポイントであったのだと僕はおもう。いつものように観客を煽ったあと、この日のライブ会場の特殊さを話し出す。

「この、後ろにもお客さんいるのはヤバない?バックってことやん?じゃあいつも見てるこっちは……なんていうんやろ?」

と会場中央ステージまで歩いていくLiSA、観客は思い思いに声をあげていくと、

「え?なに?フロント??ええやんフロント、ええやんか~」

と指を指して観客を誉める。パンクバンドのボーカルとして、ライブハウスで生きてきた人間らしく、観客の声を拾い、リスペクトしていく。その姿は、彼女がファンから愛される理由のひとつだろう。しかし、いつのまに彼女は関西弁を丸出しで話すようになったのだろう、アニソンフェスなどでは標準語で話していたように思うのだけども。

「うっし、じゃあバック!!!フロント!!!愛とおもいやりを大切に~」

と彼女のライブおきまりのMCで締めようとしたところ、会場の上手から

「サイド!!!!!!」

との大声が響いた。

おもむろにそちらを見るLiSA、笑いが漏れる会場。

「せやな、サイドや。バックとフロントだと余るからな。でもそれどっちがどっちだか(会場の右左を指さしながら)分からんやんか!(笑)」

とツッコミ、会場中がわらいにつつまれる。

「オッケーわかった、バック!!!フロント!!!サイド!!!愛と思いやりを大切にここに居る皆で最高に楽しんで行きましょうー!ピース!」

と会場を一つにまとめあげる。

5曲目「Rally Go Round」と6曲目「No More Time Machine」が心地よく会場を温め、7曲目「エレクトリリカル」がふりつけ曲だったことも奏功しただろう、さきほどのMCとふりつけを会場中で共有したからこそ、熱気とテンションを受け、LiSAのボルテージやテンションがどんどんとあがっていく。ライブ序盤には立ちっぱなしで唄っていたLiSAは、花道を縦横無尽に歩き、駆け回り、あのクシャクシャとした笑顔を見せてくれるようになっていた。

スタッフからうけとったフード付マントを羽織り、歌い始めた8曲目は「EGOiSTiC SHOOTER」。「怨」の文字が5枚のLED画面に映り、ここまでで一際に大歓声があがる。怒り、妬み、怨み、マッドネスな感情をフルに詰め込んだこの曲の支持する大歓声は、アニソン歌手としては意外かもしれないが女性によるもの。しかも途中途中の大声にあわせて、会場中が大声で叫ぶ、この曲がいかに支持されているかが容易にわかる。

「怨」のパートをおえ、簡単な衣装チェンジをステージ上でおこない、花魁の着物をかなり崩した衣装へチェンジ。傘をもって花道からステージ中央へと赴くと、「Empty MARMAID」がはじまった。

ここまでくると、LiSAのボーカルもその本領を発揮してくる。ファルセットを時折まじえながらも、ハイトーンで張り上げたり、吐息のように漏れた小さくしてみり、若干かすれ気味な持ち前の歌声で描く歌詞世界を、声量の大小と歌い口のちょっとした変化で、凄まじくドラマティックに響かせてくれる。

小柄な体格を存分に振り回し、さまざまな衣装も着こなす。自分をより大きく見せようとするし、ばっちりハマる。もうすっかりアリーナクラスのライブでの魅せ方にもなれ、この大会場すらももはやライブハウスのように掌握してしまえるのだ。

LiSA退場し、PVがふたたび流れだし、小休止の時間になる。PVが終わると同時にキーボードの優しき独奏がはじまり、後ろのLED画面には『円』の一文字が浮かび上がる。

ステージに現れたのは、シンデレラか!?と見まがうほどの純白のドレス。それに併せて、次々と白のペンライトが灯されて、屈指のバラード曲「シルシ」を歌う。さまざまな舞台で歌いつづけてきたこの曲、彼女は歌い終わったあとに、あることを必ずする。歌い終わったら、深々と一礼をする、それも10秒近いほど長いあいだ、彼女は微動だにもしない。ライブ初披露していたころから変わらないこの儀礼は、彼女がこの曲にこめた「感謝の気持ち」の表れなのだ。

ドレス姿にエレキギターを引っさげて、彼女はMCを始めた。

「ワンマンライブとしては三年ぶりの武道館、いろんな思い出がある。歌手を目指すぞと思ってから、目指す場所のひとつでした。最初の武道館は最悪でした。本当に広くて、みんなが遠くて、不安ばかりだった。今日はこんなに近くにいる!と感じる。武道館は怖い!魔物がいる!というんですけど、みんな知らないか。4年ぶりに、いや15年くらい夢にきてた場所に、こんなフロント、サイドに、バックにも人がいる武道館に立てるなんて、思ってなかったです。」
「こうして長いあいだ活動をしてくると、ギターも弾けるようになったんです。学生のときに弾いたとき、お母さんに三味線かと思ったと思ったとかいわれて、絶対弾いてやるもんか!と思ったんですけど。いまから弾きます。」

そういって始めた13曲目は「WiLL ~無色透明~」 二人のギタリストは大きく音を鳴らすことなく、バッキングギターはLiSAが奏でるギターサウンド、文字通り彼女の音と声が武道館に充満する。

つづく「Hi FiVE!」で360度に広がったステージからセンターステージを走り回ったあと、LiSAは退場。衣装交換した姿は、黒ショートスカート、金のラメがはいった黒ジャケをきめこんで、<ロックヒロインLiSA>のモードへと移っていく。

LED画面は『演』と映し出し、「ROCK-mode」「Thrill, Risk, Heartless」「Psychedelic Drive」とロックチューンを立て続けに放つ。黒ジャケットを半分ぬいで、体をくねらせるポーズから漂うエロさや雰囲気もそうだが、彼女のショーマン、いやショーアクトレスとしてのカッコよさで会場を持ち上げていく。

「演」から『宴』へと文字が移り、「crossing field」のイントロが流れた瞬間、この日一番の大歓声が彼女へと向けられる。彼女を一躍スターダムへと押し上げたこの曲なくして、やはり彼女のライブは締まらない。 ときおり原曲とは違ったドラムパターンをドラマーが叩けば、すこしずつ原曲とはちがったフェイクをボーカルにいれて、彼女は熱唱してみせる。

「一緒に歌って!」とLiSAが叫び、ほんの数言葉口ずさんだ瞬間に、観客は彼女に倣って「Catch The Moment」のサビを歌い出す。「一瞬でもこの瞬間を逃さず、精一杯生きていたい」という願いをLiSAはこの曲に込めたというが、この大合唱は、その気持ちに少しでも答え、僕らも同じように生きていきたいというファンからの返事のようにも聞こえる。

音に埋もれず、ズバンと言葉を届けてくれる歌声の強さ、彼女のライブをみるたびにその強さにいつも驚かされる。これほどはっきりと言葉が聞こえるボーカルも多くはないし、しかもライブ終盤になればなるほど、歌声は力をなくして聞こえなくなるもの。だが不思議なことに、彼女の場合はどんどんとはっきりと聞こえてくるのだ。そしてこういったエモーショナルな瞬間に、彼女の精一杯の歌声が一番に響いてくるのだから、なんて美しい瞬間なんだろうと思わざるを得ない。

本編最後の曲は「Mr.Launcher」、緑のペンライトの光のなかで、彼女は会場を歩き回って歌いおさめた。

LiSAがいったん退場すると同時に、PVが流れ始める。映像ではLiSAがいろいろと語っていたが、印象的なのはこの言葉だ

「 Believe in myself を、毎回毎回違う曲、違うライブ、違った形で伝え続けてるだけなんだろうなって思うんです。」

この日最初に一節だけ歌われた「Believe in myself」は、彼女のデビューEPの1曲目になる曲だ。ともすれば、この言葉は薬でもあろうし、毒でもあろう。初志貫徹、志を達成するという意味で捉えれば非常にプラスであるが、意地悪く捉えてしまえば、最初からいままで何も変わりなく過ごしてきた、という意味になってしまう。

画面に「縁」の文字が浮かび上がり、アンコール1曲目として選ばれたのは「Believe in ourselves」、今回発売されたベストアルバムに収録された新曲だ。同時にこの曲は(本人のコメントなどはみていないが) 「Believe in myself」を歌い上げた7年後のいまだから歌える続章として刻まれた1曲でもある。
「自分自身を信じて走って 一個だって譲らなかったから 最高の今日、明日があるんだ だからいこう キミと一緒に」
問答無用だが、ここでいうキミは、歌詞上に出てきている愛しているひとや彼氏彼女ではなく、他でもないLiSAのファンに向けられている。そして 「Believe in ourselves」とは「自分とファンたちを信じる」ということだ。

この日最大のハイライトは、この曲を歌い終わった瞬間から始まった。会場真ん中におかれた小ステージをグルグルと歩きながら、LiSAはマイクを通さず叫びだした。途中からマイクを通して、「最高!超最高!みんなほんと最高!」とさけんだあと、大ステージへと戻った直後に、大号泣したのだ。

涙声がマイクを通して響き、ファンからは大声援が飛ぶ。泣いて泣いて泣いて、泣き止んだ10秒後、彼女は少し長めのMCをしたのだが・・・ここはカットしておきたい。

ぼくの薄っすらと感じていた予感は的中した。この日の彼女は、きっと3度目となる武道館公演にたいし、少しだけナーバスな形で突入していったのだろうとおもう。4曲目が終わるまでステージのまんなかでずっと立ったまま唄っていたのが、その証拠になりえる。直後のMCでファンとふれあい、ライブが経過していくごとに緊張がほぐれたことで、思わず「最初の武道館はダメダメだった」と正直に告白もしてしまったわけだ。

そして、ファンとの掛け合いなどで緊張を解くきっかけをもらい、「Believe in ourselves」を歌い上げた瞬間・・・さまざまな気持ちが駆け巡ったのは、想像に難くない。ファンを愛し、ファンに愛されてきた、それはMCでの気軽なやりとりだけではなく、曲中にある真似るには難しい掛け合いや合唱をファンが合わせてくれることからも伺える、もしかすれば忠節に似た愛情なのかもしれない。この日2日目の彼女のライブは、ファンとともに生きてきた彼女らしい生き様がさらけ出された一夜だったのだ

7年もの活動を経たLiSAをみてみよう。そのパフォーマンス力は武道館ですら小さく感じられるほどのスケール感を持ち合わせ、アジア公演をこなせるほどになってきた。ファンの顔も声もちゃんと見聞きできるほどに距離感が近くなり、ファンを自分のことのように感じられるようになってきたのかもしれない。

そして、自分がどんなにナーバスになっても、ファンの一声があれば、彼女はその倍以上の気持ちで返そうという志がある。愚直で真っ直ぐで、真面目なシンガーへと成長した彼女の姿が、この瞬間まばゆく光っていた。

アンコール2曲目は「best day, best way」、一番の日に一番のやりかたで生きていこうというメッセージを込めたこの曲で締めるとなると、あまりの清々しさで武道館の天井をつきぬけてしまいそうにもなる。その日のライブ最後の曲で、体はドラムに向けつつも、顔は客席にむけて一言話して曲を締める、そんなお決まりがある。この日の最後の一言は、あまりにも簡潔で、裏に秘めた強さや背負ったものの大きさを感じずにはいられなかった。

「あー楽しかった!、じゃっ、アジアツアー、行ってきます!!」

こんなシンガーから一心に愛を向けられるファンは、日本のなかでもそう多くはない、その愛深さでASIAを席巻してほしい。

【セットリスト】

1.Believe in myself
2.Rising Hope
3.Axxxis
4.ASH
5.Rally Go Round
6.No More Time Machine
7.エレクトリリカル
8.EGOiSTiC SHOOTER
9.L.Miranic
10.DOCTOR
11.Empty MARMAID
12.シルシ
13.WiLL ~無色透明~
14.Hi FiVE!
15.ROCK-mode
16.Thrill, Risk, Heartless
17.Psychedelic Drive
18.コズミックジェットコースター
19.crossing field
20.Catch the Moment
21.Mr.Launcher
アンコール
22.Believe in ourselves
23.best day, best way

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