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【マイベストアルバムレビュー2017】Kneebody『Anti-Hero』【Review】

Tigran HamasyanやDONNY McCASLINとの作品でエンジニアを務め、マルチプレイヤーとして活躍するNate Wood、同じくTigran Hamasyanと深いつながりがあるBen Wendel、De la SoulやBruno Marsの作品にも参加したKaveh Rastegarなど、5人のジャズプレイヤーによるジャズバンド、Kneebody。

その結成は実は古く、2001年ごろになる。その後、彼ら5人は各々にソロ活動をつづけ、様々なミュージシャンやシンガーのサイドプレイヤーとして活躍しつつ、彼らは地道にバンド活動をつづけてきた。

転機になったというなれば、鬼才プロデューサーのDaedelusとのコラボ作品『Kneedelus』をブレインフィーダーからリリースしたことがあげられようか。

ジャズを基準にしながら、ファンクとエレクトロニックをブレンドしたバンドサウンドは、オールドスタイルなジャズどころか、2010年代を代表するジャズミュージシャンであるロバート・グラスパーのジャズとも違う。

アルバムの始まりは「For The Fallen」ややスローなテンポで始まるこの曲は、細やかなドラミングと太いベースサウンドにフェンダーローズの音色が優しく絡んでいくことで、電子音楽やアンビエントの装いが強調された1曲だ。つづく2曲目「Uprising」はベッコベコに歪んだベースサウンドとロックドラマーじみた大仰しい8ビートドラミングが耳をひくが、本当に耳を引くのはトランペットとテナーサックスのキメッキメなフレーズと抑揚がハッキリとした吹きっぷりだ。

そして3曲目「Drum Battle」は、Daedelusとのコラボ作品『Kneedelus』でもキーとなった1曲で、今作品ではセルフカバーしている。10分という尺でありながらも、起承転結がハッキリと区切られているかのように、ときに盛り上げ、ときに落ち着かせ、聴くものを掴んで離さない。倍テンとハーフを行き交うドラムス、もしくはグルーヴの区切りかたやBPMの変幻があるにもかかわらず、それにピタリと合わせていく4人のメンバー。

彼らの卓越した演奏力によって不自然に響くことがほとんどない、このバンド送ってきたキャリアと個々人の活動がフィードバックしているのを強く感じさせられる1曲だ。音源ということで、ある程度のリテイクと編集があるであろうが、この曲をライブで頻繁に演奏しているのだから驚かざるを得ない。

彼らの今作にエレクトロニカや電子音楽がバックグラウンドにあるのは、5人によるアンサンブルや音色のチョイスをみると、とても良くわかる。ロックファンとしては『Kid A』以降のRADIOHEADといえば、その音像をよりクリアに捉えられるとおもう。

とはいっても、彼らKneebodyは決してなにがしかのコピーや真似事で終わるようなバンドではない、生音と複雑なアンサンブルという自身らの特徴を活かしたサウンドスケープは、ジャズミュージシャンによるジャズバンドなる枠組みをも飛び越えるものなのだ。


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