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カラーコンタクトショップ Angel Colorへの抗議とその経過 byマヤ

「日本人」という名前でカラーコンタクトを作るとしたら、何色になるだろう?黒に近い艶やかなダークブラウン、向日葵のような明るいイエローブラウン、赤みのあるチョコレートブラウン…一つの色に絞るのは中々難しい。なぜなら、「日本人」と一言でいっても人によって目の色が違うからだ。

では、「ハーフ」はどうだろう?やはり、人それぞれである。日本とそれ以外の国・地域、両方にルーツを持つ全員がハーフ/ダブル/ミックスなのだから、「日本人」よりも見た目のバリエーションは多い。

ならばどうして「ハーフ系」という区分で売られているカラーコンタクトがあるのだろう?「系」という一文字が内包する曖昧さは何なのか?

Angel Colorというカラーコンタクト専門のオンラインショップに「ハーフ目」というカテゴリーあった為、マヤが抗議をした。

3/15 Angel Color 問い合わせ先のアドレスに連絡(マヤ)

『御社のカラーコンタクトに「ハーフ目」というカテゴリーがありますが、その表現は適切でないと思います。
ハーフ=白人×日本人の色素が薄く明るい色の目をしている人、というのは偏見です。「ハーフ」と一言で言っても様々な地域や国にルーツを持つ人間がおり(韓国、中国、南アジア、アフリカ…などなど)、特定の目の色を「ハーフ目」と呼ぶのは乱暴なのではないでしょうか。この言葉は条件に当てはまらない外見のハーフ達を傷つけます。
私自身、父が日本人・母が東欧出身の外国人で所謂ハーフなのですが、世間で好まれる「ハーフ顔」ではない為見た目に関するコンプレックスが強く、このような表現を目にする度、自分の顔を否定されているようで暗い気持ちになります。
現在活躍しているプロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手も、ハイチ系アメリカ人と日本人とのハーフですが、色素が薄いわけでも目の色が明るいわけでもありませんよね。
どうかサイト内の「ハーフ目」という表現を「グレー」「オリーブ」「ライトブラウン」という具体的な色名に言い換えるか、「色素を薄く見せる色」などと別の表現に変えていただけないでしょうか。ご検討の方よろしくお願い致します。』

3/15 Angel Colorより返信

『AngelColorカスタマーセンターです。

お問い合わせいただきありがとうございます。

サイト上の「ハーフ目」カテゴリの表記につきまして、
ご不快な念を与えてしまい誠に申し訳ございません。

弊社といたしましては、お客様や個人のルーツを否定したり、
偏見で差別するような意図は一切ございません。

何卒、ご容赦賜りますようお願い申し上げます。

お客様よりいただきました貴重なご意見・ご指摘として社内共有をし、
今後のサイト運営の参考とさせていただきたく存じます。

今後ともAngelColorをどうぞよろしくお願いいたします。』

4/28 現在、サイト内の表記に変化はない。

「不快な念を与えて申し訳ない」「個人のルーツを否定したり、偏見で差別するような意図は一切ない」
口で言うのは簡単である。謝罪の言葉があるだけいいのだろうか。ただ私が不快に思ったから謝るのだろうか。

これは私個人の問題ではない。ずっと今まで差別され都合の良いように使い捨てられてきたハーフ全員の尊厳がかかっている。ステレオタイプ化された特定の「ハーフ像」は当事者も、それ以外の人間をも苦しめる。
大げさだと思うかもしれないが、「私はこのままではいけない、美しくない、醜い」という自己否定は、突き詰めると自殺願望につながる。そのサンプルは私自身だ。
そして、醜いという烙印を押されたために生まれてきたことを呪ってきた人々、死にたいと願った人々が私だけでないことも知っている。

Angel Colorのホールページにおいて、「ハーフ目」以外のカテゴリーは、「甘い雰囲気の丸目」「どんなメイクでも盛れる」「発色重視」「ドーリーeye」「学校や職場でばれにくい」「クールレディー」「おしゃれ上級者」となっている。いずれも具体的なメイク効果やTPOに合わせた商品選びを提案するものだ。なのに、どうして突然「ハーフ目」という特定の属性が分類として存在するのだろう?「目の色を明るく見せる」ではダメなのか?

24の商品が「ハーフ目」という分類で掲載されているが(度あり/なしなどカラーと関係ないバリエーションは省く)、その内訳は明るいブラウンが12、グレーが6、オリーブが3、ブルーが2、そしてヘーゼルが1となっている。色に関してだけ言えば、わりと多様だ。共通するのは瞳を大きく見せるのではなく、明るい色に変化させるという事ぐらいだろうか。繰り返しになるが、どうして「目の色を明るく見せるラインナップ」ではいけないのだろう。誰の事も排除せず、傷つける事なく商品の着用効果を説明出来るではないか。

Angel Colorでは好みのカラーコンタクトを色から探す事も出来る。ブラウン・グレー・グリーン・ブルー・ピンク・ブラック…半分以上の色が「ハーフ目」のカテゴリーと被っている。

結局、「ハーフっぽさ」なんていうのはすごく曖昧で漠然としたイメージに過ぎないのだ。
何となく瞳の色を薄くしたい、でも肌の色がすごく明るい人のような色だと顔立ちから浮くので、あくまでも「風」「系」。外国人のモデルさんは難しいけど、「ハーフ」ならそれらしく出来そう。

そういったカジュアルな消費のされ方に私達はうんざりしている。

先日、16歳という若さで命を絶ったハーフ女性に関する報道があった。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190419/k10011889021000.html

軽々しく持て囃され消費される一方で、実際にハーフとして生きることはそれほどまでに難しく、棘の道でもある。華やかな世界に生きる芸能人のハーフだって、いじめや差別を受けた過去を持つ人も多い。
その現実を無視して、こうしてハーフを都合良く利用することにはもう耐えられないのだ。

メイクやファッションをどう楽しもうと、それは個人の自由である。でも、これ以上そこにハーフを巻き込まないでほしいと思う。

私達はおしゃれの道具ではない。一人一人違う見た目と人生を持つ人間なのだ。

最後に、ナザニンとマヤの瞳の写真を載せたいと思う。

正真正銘、本物の「ハーフ目」だ。どうだろう?きっと「ハーフカラコン」として商品化するにはあまりにも「普通過ぎる」色合いに違いない。それで結構。私達は誰かの理想を叶える為に生きているわけではない。

私達のこの目の色は、祖先が何万年もかけて、過酷な自然や環境を生き抜くために得た強さだ。強力な日差しの下でも、この色の為に私達は視力を失わずに済む。また、私達の目は、それぞれの両親が国境も言語も超えて愛で繋がった証でもある。

私達はこの目を、私達のハーフとしての人生を見てきた目を、誇らしく思う。私達の、どんな苦難の中にあっても黒曜石のように琥珀のように、輝きを放ち続けてきた目の色を誇りに思う。

だからこそ、私達はこの目を金のなる木としか見ない人々に抗議する。私達の目の色を値踏みし値札を付けようとするこの社会を、自分の目の色を醜いと思ってしまう人々がいる社会を変えたいと願っている。