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ルッキズムの否定と美容整形の肯定は両立出来るか ー整形をしたいあなたにー byマヤ

ルッキズムに反対しつつ、美容整形を認め・尊重することは可能なのか、よく考える。醜形恐怖症に苦しんだ身としては、整形でしか癒せない悩みはあると断言出来る一方、そこまで自分を追い込んだのは社会における「美」への偏ったイメージとステレオタイプの押しつけが大きいと感じる。

「ハーフ顔」というものが憧れの対象として取り上げられ流行していなければ、私は目元を整形していなかったと思う。瞼に糸を通し固定する「埋没法」で奥二重を二重にした。二度の施術で合計二十五万。手術によって醜形恐怖症の症状が緩和し、生きるのが楽になったので後悔はしていない。だけれど、出来ればその二十五万円は旅行や運転免許の取得、貯金などに使いたかった。

美容整形を個人の選択として尊重しつつ、メディアや美容業界による「美とはこういうもの」「こういう外見であれ」という脅しには最大限に抗議し反発していく、というのが精一杯の妥協点だろうか。

「美しくなりたいという欲望は不変」や「人間にとって美とは」などという抽象的な話でごまかしたくない。「私は醜い」と「この世からいなくなってしまいたい」は繋がる可能性がある。それくらい見た目に関する悩みというのは切実で具体的なのだ。

美容整形を考えている人に伝えたいのは、一方的なアドバイスや説教は全部無視していいという事。あなたの身体とあなたの幸福はあなたのものだ。整形はズルでもタブーでもない。「誰々が悲しむ」だとか「ありのままの自分を愛して」といった言葉は全部余計なお世話として切り捨ててほしい。整形するもしないも個人の自由だし、施術の有無を人に伝える・伝えないも全てあなた次第だ。もし、整形が理由で離れてしまう人がいたとしたら、残念だけれどしょうがないのだと思う。美容整形の有無で人をジャッジするべきではない。私はあなたの選択を尊重する。

しかし、美容整形を人に勧めるのは、私はしたくない。例え体験からくる善意だとしても、誰も他人の身体には干渉するべきでない。程度に関わらずリスクのない施術はないし、どんなに安くても金銭的な負担は生じる。整形による効果は人によって違うのだ。自分が気にしている部分を、他人も同じように気にしているとは限らない。繰り返しになるが、整形をするもしないも個人の自由だ。また、何か理由をつけてあなたの見た目を変えようとする人とは離れた方がいい。その人物は本当にあなたの身体と人生を尊重しているだろうか。

もしこの文章を読んでいる方で、「とにかく毎日が辛くて辛くて仕方ない」「今すぐ整形をして人生をガラリと変えたい」という考えを持っている方がいたら、一旦ゆっくりと休んでみてほしい。心身が弱っていて精神科・心療内科での治療が必要なのかもしれないし、焦っていると自分に最適な施術をじっくりと見極める余裕がない。美容整形は逃げないので安心してほしい。一度試しにカウンセラーと話してみるのも良いかもしれない。

美容外科はあなたに必要なものではなく、より高額で利益の出る施術を勧める可能性が高い。キャンペーンや限定価格を口実に予定外のプランをおすすめされても、その場では断って一度家に持ち帰ってから決めよう。美容外科があなたを救うのではなく、あなた自身が自分を救い、守るのだ。その為には美容外科以外のしかるべき医療機関にもどんどん頼ってほしい。家族や友人、恋人ではなく見ず知らずの医者に話す方が楽な場合もあると思う。もしそこで説教をされたり一方的に止められたら、医者を変えてみよう。信頼出来る医者をみつけるのは難しいかもしれないが、こちらの話を遮らずに最後まで聞き、あなたの考えや判断に善悪をつけない人物が良い。

美容外科での相談も、納得出来るまで何回もしてみよう。メール、電話、対面…一つでも何か不快な対応ややり取りがあればそこはやめた方が良い。近いから安いから大手だから、だけでなく説明が真摯で丁寧、かつこちらの要望をじっくり聞いてくれる所がベターだ。とにかくゆっくりと慎重に選ぶ方が良いと思う。パッと選んですぐ施術を受ける方が楽かもしれない。でも、色々調べるうちに気が変わる可能性もあるし、検討材料は多い方が良い。個人的には、1回目は身体的・経済的負担の少ない「プチ」整形を受けてほしい。結果に満足出来ずに再手術となったとしても、段階的に行動する方が安全だと感じる。

美容整形は最後の手段であるべき、というのが私の考えだ。あなたの身体を変えさせようとし、美しくないと言うのは誰なのか。その誰かはあなたの主体的な幸せを願っているのか。それともあなたをコントロールし、美のステレオタイプに押し込めようとしているのか。すごく難しいけれど、なるべく〇〇みたいになりたいというモチベーションよりも、自分をもっと好きになりたいという考えで美容整形に望む方が精神的な負担が少ないと思う。マイナスをゼロ/プラスに転じるのではなく、元々あるプラスを更に追加する、というのが理想だ。あなたの見た目を何らかのものさしで一方的にジャッジする側が悪いし、それに傷つき外見を変えようとするあなたは悪くない。罪悪感は持たなくていい。悪いのはルッキズムだ。あなたは弱くないし、何にも負けていない。

こうして理想を語る事が出来るのも、私自身既に美容整形を経験し、醜形恐怖症ともうつ病の治療を通して折り合いをつけられたからだと思う。苦しみの渦中にいる人にとって、今まで書いてきた事は全て綺麗事に聞こえるかもしれない。何度でも言うが、あなたは悪くない。楽になる、生きやすくなる為の手段は複数あるので色々試してほしい。整形についてあれこれ調べるのはかなりエネルギーが必要になるので、ゆっくりと休み休みで良いし、信頼出来る人にお願いして協力してもらおう。施術の決断は自分でしてほしいけれど、例えば美容外科での相談には誰かに付いて行ってもらうのをおすすめしたい。全て一人でやる必要はないのだ。精神科、心療内科、カウンセラー…プロに話を聞いてもらう手もある。美容整形以前に、もっと別の助けが必要なのかもしれない。

実は、私は3回目の手術を考えている。一度内面化した価値観や染み付いた執着をなくす事は本当に難しい。しかし、どうしても「プチ」以上の施術が怖くて中々踏み切れないのだ。もうこれ以上整形にお金をかけたくないという気持ちも強い。最近、メガネをかけると大分気が楽になる事に気づいたので、少し奮発して似合う形の伊達メガネを買った。気休めかもしれないが、現状における最善の選択だと思うので、よくやってるよと自分を褒めてあげたい。

自分を無理矢理愛する必要もないので、何とか生き延びて、私達の身体に口を出そうとしてくる輩には全力で中指を立てていこう。

整形をしたいあなたへ、私はあなたの味方です。