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ぼくらって賢いね、気高いね、美しいね。

 ああ、アイシャドウ落とさないとな、とおもいながら便座に座って、トイレットペーパーで目を拭いてしまったり、さんざ探して、なかった鍵が玄関扉の鍵穴にさしっぱなしだったりして、精神的にか肉体的にか、あるいはその両方かそれともまた別の得体の知れない領域であるか、いずれかわからないけれどともかく自分がまいっていることが感じられ、そのせいでいろいろ人に迷惑をかけてしまったり、逆に人からちょっとした迷惑を被ったときには平時よりも余計にダメージを食らってしまったり、そんな風に失敗、失敗、でああ、ぼくはもうだめだろうな、とおもうことが何度もあると、以前より胸に秘めていた夢、すなわち、誰も自分のことを知らない土地に行って、英国式の庭園を持つ家で、静かに、静かに、なんの驚きもない、悪い知らせも、いい知らせもない、どんな想定外の事態もないからしてそもそも想定という概念がない、そんな生活、そんな野望を、いまこそ実行するべきだ、という血迷った考えが、頭を支配するようになったりもしたのだけれど、実のところ、そのアイディアには血迷っている、と断言できない面も確かにあって、問題はそんな風に田舎の邸宅の暮らしを想定するときにぼくが想像するのが、サガンの『逃げ道』に出てくるようなやつではなく、『バリー・リンドン』に出てくるようなお屋敷の方だ、ということであって、そうなるともうそれは自己療養の範疇を遙かに超え出た単なる贅沢、ということになるのだが、こうしてああでもないこうでもないと考えていることが、結局のところは自己療養になっている、ということは、やはりこうした夢や空想の類いは、ぼくにとって何よりの「逃げ道」なのだ……お後がよろしいようで、なんて、洒落の行間に生活がすべておさまれば、こんなに楽なことはないのだけれど、そううまくはいかなくって、でも誰かと会って、話をしたり、おいしいご飯を食べたり、手をつないだり、映画をみたり、本を読んだり、散歩をしたり、そういうことが自分の気持ちを、あかるくはしない、あかるくはしないのだけれど、前に向かわせてくれて、来たるべき困難に立ち向かう熱を与えてくれる、ということは確かにあるのだなあ、と実感したりしながら、なんとか日々を転がしていく、その営為を、未だその渦中にいながらにして振り返りみる、それってなんと奇妙なことだろうね、なんと、奇妙な、ことだろうね、なんと……、あっ、そういえば、スケジュールの関係で、ほとんど一日中中津と二人で過ごす日があって、おしゃべりして、毛皮の『ティン・パン・アレイ』のライブDVDを観ながらおしゃべりして、観終わって、またおしゃべりして……知らないことがいっぱいあって、いかに今までおしゃべりしなかったのかがわかったけれど、とても楽しくて、意外に馬鹿だね、愚かだね、醜いね、って、お互いがお互いに対しておもった気がするけれど、でもそれは、ぼくらって賢いね、気高いね、美しいね、って認め合うのに必要なプロセスなのかも、なんておもっていたら、あっという間に『悪夢へようこそ!』のリリースの日が来ていて、ずっと夢中で生きていたな、おれ、ずっと夢中、ずっと夢の中だったな、という感じが確かにしていて、正直疲れた、ほんとうに、疲れちまった、でもまだはじまったばっかりで、夢中で作ったアルバム、皆に聴いてもらわないと、ご飯もおいしくないな、きっと、アルバムのツアーで大阪、名古屋、東京の皆に会いに行くんだから、今は、今だけは、皆、静かにしないでくれ、自己療養も英国式庭園もクソ食らえだ、騒いで騒いで騒ぎまくってくれ、ライブやCDを通して出会えたら、ぼくらって賢いね、気高いね、美しいね、って認め会おう、いい夢か悪い夢かわからないけれど、夢の中で待ってるから。



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http://greece-love.com/welcome-to-the-nightmare/


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