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2021年夏の思い出


8月の終わりになると、毎年物悲しい気持ちに襲われる。

夏なんて全然好きじゃないのに、夕方になって少し肌寒さを感じたり、ひぐらしの声を聴いたりすると、なんだか自分が取り返しのつかないことをしてしまったような気持ちになる。
今年の夏は1度きりだったのに、私は何もせずに夏を見送ろうとしている。
これでよかったのだろうか、と。
まあ、この物悲しさも、秋の本格的な訪れが来る頃にはすっかり消えてしまうのだけれど。


さて、今年の夏はどこへも行けなかった。
(去年もね)
お盆時期に、家族ぐるみでキャンプ施設に行かないかというお誘いを受けたけれど、コロナのこともあるし、どうしようかね、などと話しつつ、結局行かなかった。
一応用意していた新品の子供の水着がなんだかもったいなくて、家の浴槽にぬるま湯をはって、おもちゃを浮かべて、浮き輪をつけた子供を入れてみた。
うちの浴槽はとっても狭いので、子供とおもちゃだけでもういっぱいいっぱいになって、子供は最初戸惑っていたけど、最終的には楽しんでくれた。
子供のはしゃぐ声と、外から聴こえてくる大雨を聴きながら、来年はプールに連れて行ってあげたいなあと思った。


別の日、夫の提案で、野球の試合が終わった後に上がる花火を皆んなで見に行った。
いつもより早く夕食を済ませ、子供をお風呂に入れてからの夜のドライブ。
スタジアムの最寄駅に着くと、既に数人の人々が集まっていた。

「あの、ここから花火が見えるんですか?」と、聞いてみると、
「そうだよ。もう始まるよ」と、教えていただいた、その数分後に、最初の一発が打ち上がった。
ドォンッ!!というお腹に響く音に驚いて、腕の中の子供が痛いほど私の肩にしがみついた。
けれど、泣き出すことは無く、最後の花火が終わるまで食い入るように空を見つめていた。
私も、こんなにくっきりはっきりと、混雑していない中で花火を見るのはとても久しぶりのことだったから、とても楽しかった。

帰りの車の中で、すっかり興奮した子供は、花火の歌を何度も歌っていた。

どーんとなったはなびだきれいだなぁ
そらいっぱいにひろがった…

子供が初めて見る花火、どうか少しでも記憶に残っているといいな。

夏の終わりにはいつも、漫画「ヨコハマ買い出し紀行」を読みたくなる。
終わりゆく人の世で、それでも生きていく人々の物語。
せつなくてあったかくて、ちょうど今の私の気持ちにぴったりだと思う。









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