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よくある質問「どんなスーツを着るべき?」に対する1つの回答

ボクは今40代半ばの一応経営者です。
で、お仕事でオーダーメイドスーツなどを取り扱っております。(ちなみに紳士服業界と関わって20年以上。そのうち10年ほどは、この業界を中心とする経営コンサルタント業に携わっておりました。)

そうなるとよく経営者や経営コンサルタント等から相談されるのが
「ボク(私)に相応しいスーツやブランド、価格帯を教えてほしい」
というものです。

あまりにもよく聞かれるし、しかも説明にけっこう時間がかかるので
説明用資料をつくってしまおうと思ってここに書いてみます。
(あくまでも2019年6月時点での個人的な見解です)


まず、スーツ1着あたり(基本的にはシングル2ピース)の価格と
「英国的スーツ」か「イタリア的スーツ」かのテイスト分けで消費者を
マッピングしてみました。↓

どんな人がどんなスーツを買っているのか

横軸では「価格」を、縦軸では「テイスト」を表しています。
まず価格についてですが、現時点の日本で販売されている主要なスーツの最低価格はいわゆる”ツープライス業態”と呼ばれるところの2万円前後。逆にハイエンドなものは海外の高級ブランド店における40~70万円のものが該当すると思います。
そしてテイストとしては、かっちりしたフォーマル感の強い「英国系」か、色気や着心地の良さ(軽さ)を追求している「イタリア系」かに大別されます。これは世界中どこでも同様で、スーツの2大潮流です。

その全体像の中で、どんな人がどんなモノを購入しているのか、をざっくりと傾向としてプロットしてみたのが上の図です。年代や職業で分類してみました。

基本的にサラリーマンは一定のドレスコードを守るべき存在なので、テイスト的にはあまり極端なものには手を出さずベーシックなものをチョイスする傾向です。また年齢と収入が基本的には比例するため、ここでも年齢と価格が比例する傾向があると見ています。上司なのに部下と同じブランドのスーツは着ていられない…みたいなプライドもあると思いますし。

経営者になると年齢や収入との関係がやや薄れ、個人のブランティング的な視点でテイストが選ばれているように思います。ただし総じてサラリーマンよりはワンランク高めの価格を望んでいる方が多いように見受けられます。また信頼感を重視する方はよりフォーマル感のある英国テイストを意識し、クリエイティブな雰囲気を醸し出したい方はイタリア的なテイストを好み、他人との差別化を図ろうとする傾向があるように思います。

ただ、経営者と言っても上場企業などになってくるとまたワンランク上級になり、誰からも信頼されるような外見力が求められるようになります。そうなると基本的にはイタリア的な遊び心や色気は仕事以外のシーンでしか選ばないということになります。

ブランドはどのようなポジショニングなのか?

次に、オーダースーツ業1界における「生地ブランド」のポジションを同じ表に入れ込んでみました。(※この図は特にボクの個人的な視点・イメージで作成されてしまっていますのでなにとぞご了承ください。表記されているブランドも当店で取扱いのあるものが中心ですし、価格イメージも当店や知人テーラー等のものを参考にしているだけで全店調査をしたわけではございませんので。)

そして大前提としてご承知おき願いたいのですが、同じブランドでも高級シリーズから廉価シリーズまで色々なラインアップがありえるということです。例えば「ゼニア」でしたら「トロフェオ」という極細繊維で織られた高級ラインもあれば「トラヴェラー」という丈夫さに重点を置いた廉価ラインもあります。また逆にブランドによってはそのようなバリエーション展開をしていないケースもあります。ですからこのマッピングはあくまでも”イメージ”です。



どんな人が、どんなスーツを着るのが良さそうか?

(同業他社の皆さんからすれば異論もあろうかとは思いますが)ざっくりとこんな感じだと思うものを作成してみて、この2つを重ね合わせてみました。それが冒頭の”よくあるご相談”に対する回答として、けっこう参考になるのではなかろうかと考えたからです。

いかがでしょうか?
これはもちろん「こうじゃなきゃいけない!」などという意見ではありません。まったく違います。誰が何を買おうと、基本的には自由なんです。

でも、よく相談されるんです(笑)。
「今のボクくらいのポジションだったら、どんなのを着るべき?」って。
やはり皆さん空気を読むというか、正解を知りたがるというか。日本人ってやっぱり素敵だなと思います。あ、部下や後輩と一緒だったり負けてたらイヤだというご意見も耳にしますね。

社会や組織でそれなりの立場になってくると自分の着たい服を自由に着るのではなく「場や立場にふさわしい身だしなみをしたい」という、他者に対する気配りのようなものが芽生えてくる。そこは本当に素敵なことだと思うので、ボクなりの”現時点での意見”をまとめてみた…というものです。困っている方の参考になればという気持ちだけです。
このマッピングは何度も言いますがボクの個人的なイメージですので、どうか主旨をご理解いただければと思います。

2002年とあるテーラーの業績UP支援がきっかけとなり、その頃からオーダーが人気になる将来を予測して日本国内のテーラーや縫製工場を応援してきました。女性のミシンも含め“日本の強み”になれるジャンルだと見て現在も今後も色々と頑張りたく思っています。興味ある方、ぜひ力を貸して下さい☆