タッチタイピングの壁

最近はブラインドタッチのことをタッチタイピングと言うらしい.いつからタッチタイピングになったのかわからない.どうやら差別的らしいので名前が変わったという経緯は聞いたことがある.

タッチタイピングと言えば,指を全く見ずにキーボードを打つことで最近の大学では申し訳程度に美佳タイプがインストールされている.美佳タイプは素晴らしいことにDvorak配列にも対応していて非常に使い勝手がいい.

Dvorakerとしては,「ca, ki, ku, ke, co」とカ行を打ったり,やや変則的だったりする.美佳タイプはDvorakの練習はできたが,この変則的な変換はキーバインドしておかないと変換できなかった.

それはいいとして,タッチタイピングには壁がある.分間100文字あたりは日常練習の壁になる.

ワープロ検定だと明確に基準点がある.10分間に1200文字を打てだとか1400文字を打てだとか.ワープロ検定は基準点があるので自分がどれだけ足りていないのか可視化される.IMEの打ち間違いをどう減らすかだとか,等幅フォントで実施するので文字がズレているのにどう気づくかだとか.

逆にゲーム的なタイピングは底がなく,明確な目標や対策を立てづらい.強いて言えば,早口言葉はゆっくり打ったほうがいいかもしれない.

自分の成績だと300文字/分あたりが限界だと思う.試しに寿司打をしてみたら312文字/分だった.早口言葉練習しないと無理…….

この手のゲームはミスタイプに対して厳格すぎるので,文字をよく読んでタイピングすることが重要になる.

一方,試験ではIMEとどのように向き合ってきたかが成績として出てくる.もちろん,打ち間違いがあるとなぜか文字の位置がずれていたりするので,それも対策する必要がある.ミスはいくらでも許されるが,試験時間内に修正するというのがポリシーらしい.

だいたい100文字/分ぐらいはどんなにヤンキーでも練習すれば打てるようになる.放課後毎日1時間ぐらい残ってひたすら練習すれば3年間でなんとか試験に合格する.

つまるところ,毎日1時間,3年間練習して達成できる速度が100文字/分になる.まず,ここにベンチマークの壁がある.寿司打だと1.7文字/秒はまずひとつの壁と言える.

どう壁を超えるかというと,ひたすら練習するしかない.最近,ホリエモンがとりあえず70%ぐらいだか使い物になればどうにかなる,という趣旨の話をしていた気がする.しかし,世の中にはその70%程度まで上り詰めるのに大きな崖があるケースが多い.

タッチタイピングはその典型例の一つで,既にある程度できる人にとって20時間練習すれば10~20%ぐらい早くなるかもしれないが,常時早くなるためには習慣的な練習が必要になってくる.

例えば,普段からどれだけ早く打てるかを意識しなければ速さは向上しない.思考速度とタイピング速度の勝負となり,悲しいことに思考速度の遅い人だとタイピング速度のほうが速くなってしまう.

この思考の速さとタイピングの速さが二つ目の壁になる.どうしても考える速度よりも打つ速度のほうが速くなってしまって,日常的に自分の思考速度にタイピング速度が固定されてしまうので速く打つ習慣がなくなってしまうのである.

これはある意味で人間の限界への挑戦である.ここまで来るともはや自己超克になってくるのでいかんせん修行という感じがしなくはない.つらい.

タイピングはその日だけたくさん練習をしても速くはならない.ある意味で文系スポーツ的なところがある.とにかくコンスタンスに毎日打つ.あと,思考を速くする.じゃないと指が間に合ってしまって練習にならない.

200文字/分を超えるとある意味で修行の世界になってくる.毎日キーボードを使ってせかせか打ってないと到達が難しい.300文字/分あたりはインターネットおじいちゃんぐらいの世代が当たり前のように打てる速さになってくる.

ここまで書くと,タッチタイピングの速さはどれだけキーボードを必要としているか,という明確な指標になる.タッチタイピングの速い人は普段ものすごい量の文字を打っている.逆に遅い人はパソコンをはじめたばかりか,あまり速く文字を打つ必然性を見出していないかのどちらかである.

これは冷酷にもプログラマと言っているのに文字を打つスピードが遅い人は経験年数やトータルで書いた分量が少なく,のんびりコードを書いていたケースが十分に想定されてしまう.タッチタイピングの速さは瞬間的なタイピング速度に依存するので,何かめっちゃ大量に少ない時間で打ち込む必然性がないと上達しない.

ここまで見られてしまうのでタッチタイピングと思ってあざ笑うほど浅い分野ではない.タッチタイピングは過去にブラインドタッチと言われていたほど沼なのである.

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