見出し画像

日野原記念ピースハウス病院のオープンホスピスに参加してきました

〇はじめに

日本では6か所しかない独立型ホスピス

ここで言う独立型とは、緩和ケア科とその病床のみで、他の診療科の併設がない病院を指しますが、その一つで神奈川県秦野にある日野原記念ピースハウス病院さんの見学会、オープンホスピスに先日参加をしてきました

こちらの病院では、年に数回、このオープンホスピスを開催されており。入院を希望や検討をされている方。将来緩和ケアに関わりたい方。また病院や福祉の関係者の方など、どなたでも参加出来るようになっています

今回は、わたし自身、4つ目の緩和ケア病棟見学としてこのオープンホスピスに参加をしてきました。そのを様子をご紹介させていただきます

〇日野原ピースハウス病院さんについて

まずはこちらの病院のご紹介です。詳細は上記のサイトも併せてご覧下さい

病院があるのは神奈川県秦野市。すぐ近くに有名なゴルフ場や、東名高速道路の秦野中井インターがあります。電車では小田急線の秦野駅が最寄り駅。そこから車で10分ほど。正直車があればとても便利な場所に位置しています(ちなみに最寄りのバス停からは10分以上坂を登るため、バスと電車はあまりお勧めできません。ただ連絡をすれば、バス停まで迎えがあるそうです)

病院の成り立ちは、開院が1996年で独立型ホスピスとしては草分け的な存在。また緩和ケア病棟としての承認も、国内では10番目

その理念はピースハウス、安らぎの家。共に過ごす時間とそれぞれの生き方を尊重する

単に患者さんの症状を和らげることだけでなく、その人が希望する場所で療養が受けられ。ご家族も含めて、さまざまな職種がチームでケアを行っていくことを治療の方針とされています。それを実践するために

・入院ケア(痛みなどの症状の緩和、レスパイトケアなどいくつかのケアの目的がある)
・通院ケア
・在宅ケア
・遺族(ビリーブメント)ケア

がそれぞれ行われています

また併設する施設として、訪問看護診療所とホスピス研究所があります。訪問看護を併設することで、在宅に移った患者さんのケアも可能な体制を作られており。また研究所を通じて、緩和ケアの研究や人材育成にも力を入れられているそうです

と書くと、とにかく良いこと尽くめの施設のような印象を受けます。ですが実はこちらの病院、2015年に一旦休止し。そして1年後の2016年に再開という歴史があります。その辺りの経緯は以下の記事からご確認いただけます

・休止に関しての記事(ログインが必要です)

・再開に関しての記事

これら経緯もあって、病院名も現在のものとなっているのですね

今回のオープンホスピスでは上記の経緯については触れられませんでしたが、運営(経営)的にはいろいろとご苦労があるようです。そうしたことも踏まえて、以下、読み進めていただければ幸いです

〇病院の特徴

こちらの病院の特徴としては

・独立型である
・完全予約制である(救急は受け入れていない)
・設備がとにかく充実している
・非常にたくさんのボランティアさんが活躍されている

の4点が挙げられます。簡単にそれぞれを説明しますと

まずは独立型の緩和ケアを行う病院であることです。冒頭にも述べたように、この病院には緩和ケアを除く診療科は併設されていません。このとこで、困ることは特には無いそうです。それは入院時に以前に罹っていた病院ともきちんと連携を行い。また治療方針を確認することを通じて、単科であっても困らない対応をしているというお話でした

次に完全予約制であること。利用に当たっては、まずは相談の予約が必要。次に面談。その後受け入れに向けた調整をした上で初めて、利用(入院や通院)になるという流れになっています。また予約から相談までには1週間ほど。入院に至る場合でも、2週間以内に対応出来るようにしているという説明がありました。必要以上に待たせることはせず。一方受け入れまでの準備は出来る限り入念に行うという方針だそうです

そして独立型のホスピスということもあるのか、とにかく設備の充実ぶりがすごいです。今まで見学してきた他の3つの病院(聖路加国際さん、がん研有明病院さん、そして川崎市立井田病院さん)とは正直、比べられないと感じました。食堂、ラウンジ、イベントなどに用いるホール、図書室、音楽療法室、温室を兼ねたアトリウム。そして何より病室と。一つ一つの設備のスペースがとにかく広く作られています。例えば病室ひとつをとっても、見学した差額ベット代の個室は、見学済みの病院の1.5倍ほどの広さがありました。また見学は出来ませんでしたが大部屋(4人部屋)も十分な広さがあるそうです。これらの施設が1階部分に放射上に配置され。建物全体としてもとても調和の取れた作りとなっていました

もう一つ設備の面で特徴と言えるのが庭園です。サイトページにも写真がありますが、病院の裏手側に丘状の庭園が広がっており。その敷地内に様々な樹木や草花が植えられています。春には敷地内の桜でお花見も出来るそうです。また庭園の手前まで、ベッドのまま、外に出ることが出来ます。その光景を観て、こうした設備が都会にはない、独立型ホスピスのメリットだと改めて思いました

本当に、贅沢です

これを他の、いわゆる総合系の病院の緩和ケア病棟と比べるのは、そもそもが間違いですね

そして最後がボランティアさんの数と質です。実はこの日の病院内の見学も、ボランティアの方々が案内して下さいました。職員さん以上の数の方がボランティア登録をされており。曜日ごとに担当者も決められ。受付から草花の手入れ。カフェの運営。イベントの実施や患者さんのサポートなど院内の様々な作業に関わられています。またその受け入れも、数日の研修を経てからでないと活動の登録が出来ないようになっているなど、質の確保も大切にされているそうです。ここまでの対応を取る病院は、わたしが知る限りでも、他に見当たりません

このように『独立型』というメリットが最大限に活かされている病院である、というのがわたしの素直な感想でした。環境を整えることさえ出来れば、ここまで出来るのですね。これまで見てきた街中にある総合系の病院とは全く異なるメリットがある、そんな印象を受けました

なお今回写真撮影が出来なかったので、院内の様子については以下の病院のサイトページからもご覧になられてみて下さい

〇聞きそびれてしまったこと

今回の訪問時、二つ聞きそびれてしまったことがありました

一つは、遺族の集いについて。もう一つは、地域コミュニティとの繋がりについてです

遺族の集いについて特徴でも触れましたが、パンフレットにもその記述がありました。ただ具体的に誰が主体となり。またどのように運営をされているのかまでの具体的な説明がなく。グリーフケアやサポートの観点からもきちんと聞いておけば良かったと思いました

もうひとつは、地域コミュニティとの繋がりです

こちらの病院、環境はとても素晴らしいのですが、その分、地元の方が日常的に行き来はしないような場所に位置しています。またそれ以上に気になったのは、院内に、地域コミュニティと病院との関係をうかがわせるものが観られなかったことです。それを踏まえて、実際に、地域の方々とどのような交流や繋がりががあるのかを聞けばよかったと思いました

ちなみに何故、それがわたしとして気になっているかと言うと、海外のホスピスとの比較からです。例えばホスピスの発祥地である英国では、各ホスピスが地域コミュニティとの繋がりをとても大切にしていると聞いています。単なる終の棲家というだけでなく。地域の人たちを繋ぎ、交流する「場」としての機能も重視しているそうです

その意味で、日本の独立型のホスピスも同様の指向を持っているのか。現にそれを実践しているのかが気になったのですが。残念ながら今回は、その点を聞かずに帰ってきてしまいました

これらの点はまた改めて、機会のある時に、関係者の方々にお話を伺ってみようと思っています

〇日本で独立型ホスピスは成り立つのだろうか

以上が今回の見学記となります。とにかく独立型のホスピスは環境を整えることさえ出来れば、ホスピスとして理想の姿にかなり近づけるのではないかと思いました

ですが、一方で、こうしたホスピスがなぜ日本で6か所のままなのか。増えていかないのか?という疑問もあります。そこには運営や資金面での課題だけでなく。そもそも日本におけるホスピスの立ち位置や意味づけ。理念や哲学なども含めて、課題がありそうです

実は今回の訪問時の質疑応答でも、運営、つまり資金面の厳しさのお話がありました。こちらの病院は看護師さんの配置も充実されているようですが、それは当然ながら、運営コストに跳ね返ります。独立型として運営をしていくにはまず、十分な基盤が必要であることは過去の記事などからも強く感じたところです

こうした様々な課題を乗り越えた上でなお、終の棲家や社会的なインフラとして、独立型ホスピス「も」あった方がよいですし。より身近な存在として社会の中に整えていくことは一つの課題だと思います。今回の見学は、そのことを意識するとてもよいきっかけとなりました

これからも(海外も含めた)さまざまな施設の見学を通じて、その可能性を探っていきたいと思います

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました

デス・カフェ@東京主催。ヒトやペットの区別をしない、死別・喪失のサポート、グリーフケアのお話をしています