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川崎市立井田病院の緩和ケア病棟を、少しだけ、見学してきました

○はじめに

先日は、川崎市立井田病院の緩和ケア病棟を見学する機会に恵まれました。聖路加国際病院がん研有明病院に続く、3か所目の病棟見学です

病院訪問の本来の目的は、株式会社必死さんのプレワークショップ「未来のホスピスを作る」に参加することでした。その際に、WS主催のお一人でもある同病院の腫瘍内科&緩和ケア医の西智弘さんのご厚意もあり。併せて緩和ケア病棟の見学も叶うこととなりました

貴重な機会でしたので、その内容ご報告をさせていただきます

○プレWSのお話

先に本来の訪問の目的であったプレワークショップ(プレWS)についてご紹介します

こちらは9月に渋谷のヒカリエで行われる「超福祉展」に向けたプレ企画。数人でグループとなり、未来のホスピスを考えるというワークを1時間半ほどかけて行いました。プレということもあり、主催する側も参加する側も試行錯誤。読めない展開に時には「えっ?!」となったり。まとめの時間では、参加者側からも「こうした進め方がよかったのでは?」とアイデアを投げ返すなど。普段のワークショップではなかなか見られない展開もありました

ホスピスを作る、というお題になるとやはり場所や空間を意識しがちです。わたし自身もその発想から抜け出し切れずに終わってしまったのが残念

一方で、個人的に良いなと思ったのが、死の瞬間まで自分に寄り添って治療やケアの判断をサポートしてくれるロボットが傍にいてくれる、という別グループのアイデア。場所や空間に拘らず、「寄り添う存在がいる」や「ある」というコンセプトがとてもステキでした

上述のように、このWSはブラッシュアップの上で、超福祉展でも行われるそうです。都合が合えば自分もまた、参加をしてみようと思っています

○川崎市立井田病院について

もう一つ、病棟のお話の前に病院についてもご紹介させていただきす。病院のサイトはこちらです

病床数383床(内、緩和ケア23床)。川崎市にある3つの公立病院の内の一つです。最寄り駅は東急東横線の日吉駅。駅から歩いて15分、バスに乗ると5分ほどと好立地とは言えませんね。実際に駅から歩くと、かなりの部分が登り坂です

2015年に大幅リニューアルを終えたそうで、見た目も非常に綺麗でした。また地域がん診療拠点病院でもあり、がんの診断、治療、緩和ケア、療養。そして療養の中には在宅のケアも含まれていることが特徴だと思います

とにかく、綺麗な病院だなぁというのがわたしの第一印象です

○緩和ケア病棟の見学

緩和ケア病棟の見学は、このプレワークショップの後に、せっかくの機会ですのでという西さんのご提案で行われました。緩和ケア病棟の案内については、こちらの病院のサイトも併せてご参考にされて下さい

こちらの病棟の特徴として、他の診療科や病床のある建物とは別の建物にあある点が挙げられます。上述の在宅ケアの部門も入っている3階建ての建物の最上階です。これまで見学した先の病院が、どこも中層の建物の最上階に緩和ケア病棟を設けていたことを思うと、ちょっと意外に感じる構造でした。ただこれは丘陵地の形状を活かした構造であり。その分見学した病棟内のサンルームからは、多摩川や武蔵小杉、遠く東京まで見渡せるようになっていました。多摩川の花火大会も、サンルームから観覧出来るそうです

病棟の設備的には設置基準がありますので、他の病院とそれほど特別な違いは感じられません。上記のサンルームには簡単な調理スペースがあったり。音楽療法を行うスペース。機械式の入浴設備。また家族用のお部屋があることなども、他の病院と同じです

その中でも西さんから唯一、他の病院には無いんですよと言われたのが、病室内のトイレに取り付けられたアコーディオン式カーテンの扉です。これがなんのためにあるか分かりますか?と西さんより出題があったのですが、わたしも含めて正解者は誰もおらず。答えは、ベットをトイレの近くまで出来るだけ寄せて。トイレまでの距離を短くし。自力や介助でトイレに行けるように考えた結果との説明でした

つまり引き戸や開き戸の扉だと、その前までしかベットを近づけることが出来ません。でも、アコーディオン式にして入り口を大きく取ることで、まずはベットごとトイレに近づけられる。次に自力か介助を受け、患者さんがトイレに行けるようにするための工夫なのですね

どの病棟の見学に行っても、病室にトイレがあること。排泄を自力で行うことの大切さは、尊厳の観点からお話があります。ですがその構造や利便性についてまで、ここまで徹底しているのは井田病院が初めてでした

ここは今後、他の病院と見比べたいポイント
やはり見学は、してみるものですね

あとちょっと面白かったのは、音楽へのこだわりがあちこちに観られたことです。病棟のフロアに流れる音楽や、病床に置かれたオーディオ機器など。病院の中に、音楽好きの方がいらっしゃることも影響している、というお話でした

○まとめ

今回は「緩和ケア病棟の見学」という形の見学ではなく(基本的に外部からの緩和ケア病棟の見学申し込みは受け付けていないそうです)、西さんのご厚意での見学となりました。それでも、こうした貴重な機会を提供して下さった井田病院の西智弘さん。そして株式会社必死のSさんには心より御礼を申し上げます

ありがとうございました

これまでに3カ所の病棟を見せていただいて、共通項は(当然ながら)多いものの。それぞれに、差異があることも分かってきました。そしてそれは、病棟に関わる方々のちょっとした心遣いや。病棟を設置や運営する際の哲学などに影響を受けているように感じます

そうした差異を知るためにも、これからも、機会があれば各地の病棟を観させていただくことが出来ればと思っています。重ねまして、貴重な経験をささせていただき、ありがとうございました

なお、先に緩和ケア病棟の見学をした二つの病院の note はこちらになります。併せて読んでいただけたら幸いです

また、緩和ケア病棟見学記をまとめたマガジンも作成しました。よろしければ、フォローをお願いいたします


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