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メニューはお見合い写真

多分に漏れず、当店も先日値上げをしました。

実は、価格の改定は普段から行なっているので、

ことさらここで大げさにいうような話ではないのかもしれない。

が、ここ最近の物価高に加え光熱費の高騰で、大手のみならず中小店舗も値上げに踏み切ったところも多い。

こうやって、日本全体の景気の底上げになればと、世間では期待もされているようだが、

本当にそうなるのか。

いまひとつ信じられないでいる。


それに、

値上げをしたといっても、

一部のメニューに限った話で、

全体を1.5倍にしたわけでもなく、

席料やサービス料を取るようにしたわけでもない。
(これが出来たら、本当に大きいのだけれど。)

売上の向上に与える影響は、微々たるものだ。
(ほとんど気付かない人もいるだろう。)


日本経済に貢献できるかは、どうにも怪しいところで、誠に申し訳なく思う。



ところで、



皆さんは、お店のメニューを見るのはお好きだろうか。


実は僕は、これが「大好き」である(笑。


オーダーをした後、下げられてしまうと、実に悲しい。


メニューというのは、ただ単に、価格を表示してあるだけではなく、


すべからく、そのお店の「意図」が込められている、と思う。


価格設定にしても、すべての商品を、原材料費にそのまま掛け率を当てはめれば良いわけではなく、「この商品はこれくらい」「この商品はうちのウリだからこれくらい」などといった、店側の微妙なさじ加減は必ず存在する。


前述の値上げにしても、


原材料の値上げがあったものを、それに応じてすべて改定したわけではなく、


やはり、その辺は、

「これはも上げてもいいかな。」

とか、

「これは上げたくない。」

などといった微調整は、やはり存在する。


原材料費はさして高くはないが、鮮度などの面で効率の悪いものは、

「維持費も含めての価格だし、上げてもいいかな。」

と思うものだし、

一方で、

お店としては、原価割れ覚悟でも、

「これは店のウリだから、絶対この価格で抑えたい。」

なんてことは往々にしてある。


決して、原価にそのまま掛け率を当てはめている訳ではない。


それに、全体を見渡した時、お客さんが何杯か飲まれて、何品かつまんで、

満足して帰られた時のお会計が、びっくりするようなものにならないよう、

バランスを取るのも大事なことだ。


こうなってくると、もはや「価格設定」といより「コピーライティング」の世界である。


そう、メニューはそのお店の成りを表す、重要な「メッセージ」なのである。


ましてや、うちの店のように、壁に張り紙が掲げられているわけでもなく、

ボトルもこれといって飾っていないような店では、

メニューは大事なお客さんとのコミュニケーションのツールになる。

BAR によっては、メニューなどは置かず、対話によってオーダーを決める、

と言う店もあるにはある(むしろBAR ではそちらが正当という考え方もある)。


しかしながら、この騒動下。


なかなかその「対話」もままならない場合も多い。


したがって、やはりメニューは重要になってくるかと思う。


実際、僕は、常日頃からメニューは「お見合い写真」だと思って作っている。


ちなみに、うちの店に来て、メニューをしげしげと最後まで舐めるように眺めてくれるお客さんが僕は「大好き」である(笑。(元々、読み物が好きな方が多いのかもしれない。さすが「本の街」神保町。)

そういったお客さんは、その後の定着率が極めて高い。

そのために、必ずメニューは人数分を配って、下げるときも必ず一部置いておくようにしている。


是非ともじっくり読んで頂いて、うちの店の「ウリ」を探って頂けたらと思う。



今後も、値上げを含めた価格改定は余儀なくされると思う。

そんなとき、「あ、値上げした!!」と言われるのは、

むしろ、「気付いてくれてありがとう!!」と思うべきなのかもしれない。


神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。

「オリジナルカクテル#15」
「オリジナルカクテル#16」の解説文で、

吹き出してくれる方は、間違いなくうちの店を気に入ってくれると思います(笑。

お待ちしております。


Who Can You Trust? /  Morcheeba
China Records Ltd
1996

(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)

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