【接着剤も劣化する】スキー板の耐用年数【だいたい10年です】

 スキー板はその多くがプラスティックでできています。具体的には滑走面にポリエチレン、上面材に同素材や塩化ビニルやナイロン、他にも内部材や側面材にABSが用いられ、芯材にはポリウレタンが使われたりと、さまざまな素材が使われますがそれらは一般的にプラスティックと呼ばれるものです。

 プラスティックはとても頑丈で強く、簡単に自然に分解されるものではありませんが、経年劣化します。見た目にわかりませんが色が白濁りしたり黄ばんだりしたプラスティックを見たことがある方も多いと思いますが、それらは「加水分解」と言う経年劣化によって変質している状態です。

 加水分解によって劣化したプラスティックはしばしば、ボロボロと崩れたり割れたりヒビが入ります。こうした状態では元々の頑強さは失われているもので、見た目にも「悪くなっている」ことが想像できます。

 ですがこの経年劣化は案外条件に左右され、良い状態で保存すればするほど長持ちさせられます。しかし知られていない盲点に接着剤の劣化があります。

 スキー板はモールドと言う金型で、素材にとても大きな力と熱を加えながらサンドイッチのように重ねて圧着しますが、その圧着に特別な接着剤が用いられます。この接着剤はとても特殊なもので、スキーの過酷な使用状況でも簡単に剥がれず、しかも百度を超える熱からマイナス十度を下回るような温度変化にも耐える素材です。
 ですがこの接着剤は剥がれたり劣化します。一度剥がれた接着剤は気づかないうちに徐々に板を悪くしますし、劣化すると貼り付けている力を失います。こうなるとどんなにプラスティックが大丈夫でも、板は剥がれるなどして壊れてしまいます。

 一般的には製造物の保証期間は10年ぐらいです。これはPL法にもよるもので、細かな話はありますが、誤解を与える言い方にもなってしまいますが製造から10年は使えるように作られます。※このことは使用を保証するものではなく、概念的なものととらえてください

 逆に言うと、10年を超えている製造物は壊れる可能性が高まります。

 スキー板はプラスティックの塊なので、見た目には10年、いや20年や30年と使えそうに思えるものが多数あります。しかしプラスティックそのものの劣化や、接着剤の劣化などを防ぐことはできず、見た目に綺麗でもひとたび割れたり剥がれたりすれば一気にボロボロに壊れてしまうこともあります。そういったものは中古ショップやオークションサイトで多く出回っており、本来使用に耐えられない状態のものも気が付かれずに販売されていることも珍しくありません。

 これはスキーの板だけの話ではなくビンディングなども同じことで、特に今から20年、30年前のファンスキーと呼ばれていた時代の板や、まだ一般的になる前頃のカービングスキーは突然壊れてしまうことも珍しくありません。

 でも、買い替えも勿体無いし、捨てるのも面倒だし。

 そのあたりの事情はそれぞれの事情に関わりますが、念のために古い板や用具を使う場合は「突然壊れる可能性」を念頭に入れていただきたいと思います。

 生身で原付バイクぐらいの速度で、普通なら駆け降りるのもためらう斜度の長い下り坂を滑るスポーツです。命を預けるスキー板の耐用年数はおおよそ10年かそれよりも短いもの。そう思って続けていただくと、道具のトラブルで大変なことに合わないで済むことも多くなります。どのように管理保管されていたかわからない中古のスキー板を買う際には、ぜひご注意頂いて安全で快適なスキーライフをお過ごしいただければと思います。

<プラスティック製の固定式ビンディングについて>
 今、中古ショップで販売されている多くのファンスキー、スキーボードはプラスティック製の固定式、いわゆる「プラビン」のものが相対的に多くなっています。これらは製造からとても年月がたっているだけでなく、もともと安価に製造するために素材も安価に作られたものが少なくありません。また仕組みとしてプラスティックの「硬さ」を利用して板にブーツを装着する仕組みなので、その硬さが失われるとあっさりと壊れたり履けなくなることが近年しばしばおこっています。
 こうしたことはすでに製造から10年をはるかに超えた年月が経過していることから、その使用に関しては自己責任を求められます。直ちに使用を中止すべきとまでは言いませんが、新たに中古ショップなどで購入する場合はせめて金属ビンディングか、製造年が可能な限り新しいものを推察して購入する、少しでも不安があるなら購入を見送ることをお勧めします。

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