意図的な滑走面の凹みと盛り上がり(コンケーブソール、コンベックスソール)

 あまり積極的にお伝えしていませんが、GRのスキーボードは全ての滑走面がまっ平らではありません!そしてこれは意図的な事で、不良品や不具合や瑕疵ではありません。

 割と長くスキーやボードをやっている方に多い誤解なのですが、滑走面、板の底面はまっ平らの『フラット』が正解ではありません。競技スキーではエッジコンタクトが僅かでも不安定であってはならず、エッジの角度も結果に直結するので滑走面がフラットなのは必要で、チューンでまず行うのが『フラット出し』なのですが、フラットの板はエッジが鋭敏で、レジャースキーで使うにはエッジの角度調整やダリングというワザとエッジを落とす加工が必ず必要になります。

 しかし競技用であっても中にはメーカーが意図的にフラットにしていない板も存在します。それらは繰り重ねた設計やテストにより決められたもので、その状態が最もメーカーが想定している乗り味を得られる状態と言えます。ただし、プレチューン前提の仕上げを行っているメーカーの板のみの話です。

 板が凹んでいるのは『コンケーブ』、盛り上がっているのは『コンベックス』と言います。これらは工場で板を作れば必ずそうなります。それを出荷前に平らに均す工程を経て出荷されますが、この時点では程度や状態にバラつきがあります。

 プレチューンをしていないメーカーではこの状態のまま、エッジの角度調整もせずに出荷されます。多くのメーカーの板はこれで、中級者向けから初心者、初級者向けの価格を売りにしたものほどその仕上げの手間は省かれてしまうので、中にはとても残念な状態の板も多く存在します。これらは総じて乗りにくく、快適に滑れませんし、ゲレンデのちょっとした雪の変化やギャップで無用に足をとられるなどして危険です。

 このような板もエッジのチューニングを行えば良くなるのですが、現実的にそのことを知らずにつかっている方がほとんど。『そう言うもの』と思って違和感を感じながらも『癖』だと思って乗ってる方も多いです。

 GR板ではプレチューン前提で全て販売しているのは、こうした事情を知らないユーザーが多いので、であれば最初からしっかり仕上げて販売しよう!という考えからです。板の仕上げのことを知っている方なら、板を買ったらまずプレチューンするのは当然ですが、そんなの知りませんし、スキーボードにはスキーボードに適したプレチューンがあるので、それを理解してプレチューンが行えるチューナーが少ないのも事実です。
 それに、プレチューンも安くないのです。5000円から10000円くらいかかります。板を購入したら無料でやってくれる所もありますが、そうしたプレチューンはエッジのバリ取りと一度のワックス塗布くらいの仕上げなので、やらないよりはマシ、というくらいのものです。 
 GRのプレチューンは前にお伝えしていますが、手作業なのでだいたい3日かかります。最速でも2日ですね。ワックスの浸透を無視すれば一日で仕上げる事もできなくはないですが、あまり急いで仕上げたく無いですね。

 さて、そんなプレチューン。プレチューン前提の板をつくる大きなメーカーなどではやはり機械化されて仕上げていますが、作業しているのは職人です。板それぞれで与えられているチューニングにあわせ仕上げています。何より『検品』されて居るのが大きなメリットですね。それにより板の仕様のばらつきが少なく、誰が乗っても同じように感じられる、質の高い板が手に入ります。

 そしてコンベックスなどの話に戻ると、こうした板は板の性能やコンセプトにあわせて設計、チューンされているので、凹んでいるからダメとか、盛り上がっているからダメと、チューンされていない板と同列で扱う事はできません。例えばGRのCrossは滑走面が平らでない、コンケーブソールにしています。ふつうならこの状態だとエッジがひっかかりまくって大変なのですが、それによりチューンを加えることで性能を向上させ、フラットだけの仕上げの板とは違う乗り味を実現しています。もちろんテストでは様々な滑走面状態からテストしていますが、最もコンセプトに適したチューンがコンケーブソールだったのです。

 また今年大変愛されたペンギンことIfwish。この見た目からは想像できない性能と扱いやすさはCrossとは逆のコンベックスソールに仕上げているからです。

 GRのスキーボードはまず滑走性能ありき。しっかり滑れてはじめて楽しく滑れると解釈して開発しています。しかしそれはブランドとしてのこだわりであって、実際に乗るユーザーが意識せずに一日を存分に楽しめることこそが至上と考えます。スキーボードに限らずメーカー、ブランドにはそれぞれコンセプトがあってそれにあわせ板が作られています。そしてその板がプレチューン前提のものであるならば、それはそういうもの。と言うことです。

 もちろんプレチューンをしていないメーカーなどの板は、お店に相談して適切にプレチューンしてもらって使って戴くのをお勧めします!それとGR板に関しては、可能な限りチューンの際はお問い合わせ頂くか、GRのチューンにお任せ頂ければと思います。受付はオンラインショップより行っておりますので、宜しくお願い致します。

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