開発裏話:Klesha(クレーシャ)

 さて開発裏話のラストを飾るのはグラフィックがそそるロングノーズスキーボード、Klesha(クレーシャ)です。
 と、その前に下の記事を先にご覧いただくと嬉しいです。

108=煩悩

 Kleshaはお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、形は全くRaver's01と同じものです。01は限定モデルですが、Kleshaは通常モデルとして今後も販売されます。
 この企画が立ち上がった時長さが108cmと決まり名前を考えていました。GR板はだいたい名前とグラフィックイメージが先に決まり、そこから細かなところを煮詰めていく流れで板が出来ていきます。逆にいうと名前が決まらないとコンセプトも定まらないのですが、今回のこの板は全くの新企画、過去にも例にない板を考えていたので、名前が全く見当たりませんでした。
 滑りのイメージとしては滑り始めると滑るのが楽しくなってしまう板。欲を掻き立てるようなそんなイメージ。これにハマる名前は?と結構考えました。
 そして108という数字が仏教で言う煩悩の数ということに気づき調べると「Kleshas」と単語に行きつきました。由来はサンスクリット語のようで、なんとも響きがそそる単語でした。
 Sを外してみたら?Klesha、クレーシャ。なんかいい感じ。すると煩悩が襲いかかるようにこの板のイメージがなだれ込んできたのです。
 今回ちょっと意識していたのがアニメーショングラフィックで、GRのラインナップではFreiheitがそれに当たります。108cmの開発においてFreiheitを参考にしていたということもあり今回はこの方向でやりたいな?とうっすら感じていました。
 単語とぼんやりとしたイメージが脳裏に描かれた時思いました。「あ。。。無理」というのも、何となく浮かんだイメージに近い絵が描ける気がしないし、フリー素材を漁っても何も無いのです。

出会った衝撃

 とりあえずイメージだけ作り込んで行って色々と模索していたある日、奥志賀高原スキー場のイベントにGRとして参加することになりました。イベントはパークで目一杯遊ぼう!というイベントで参加者は100名近い大きなイベント!そこで冷やかしにでも乗ってもらおうと板を並べていると、ある女性が乗ってみたいと借りにきました。
 そしてその後彼女は大変楽しそうにGRの板を乗るものですから嬉しくなってしまいその場で「ライダーになりませんか!」とお願いすると快くOK!彼女はGR初の女性ライダーとして加わることになりました。
 そして関係者間での話の中で彼女から「友人に絵を描ける人がいる」ということで伺ってみると、その世界観、筆遣い、色の雰囲気がKleshaにピッタリハマる絵を描かれていました!
 嬉しくなってすぐに連絡を取り依頼を受けて頂き、そして作画して頂きました。もうラフの時点でイメージがどんどん具現化していくのがすごく衝撃的で、そしてのちに「クレーシャさん」と呼ばれる彼女は生まれたのです。

Klesha

 このメイングラフィックを書いていただいたのが小坂氏で、小坂氏のグラフィック無しにKleshaは生まれなかったと言っても過言ではありません

クレーシャのかき立てるもの

 スキーボードは元来「滑るのがあまり得意で無い」と思われていました。GRでも滑りに向けた板はForFreeやCrossがありましたが、私個人としてはまだイケる!もっと滑りの楽しい板が作れる!と考えていました。そのあたりはSaltoroでかなり手応えのある板作りが見出され、そしてこのKleshaと01で思いっきり発揮してもらおうと設計しました。その中で大事だったのは「ロングノーズ」というコンセプトで、そのロングノーズをはっきりと見せたい意味もありクレーシャでは前に微笑む彼女を逆位置で配置しました。妖艶で、何かを誘うようなそそるような、彼女を満足させたいと思うような不思議な雰囲気。そしていざ滑ると滑りの楽しさから欲がさらに発揮されます。もっと滑りたい、もっと楽しみたい・・・。
 滑るのが楽しい。そういうコンセプトのスキーボードはこれまでほぼなかったものだと思います。しかしスキーというスポーツの根底は滑ること。この滑るという欲を最大限にかきたて、それをスキーボードで実現するというのがこのKleshaが他にない特徴です。贅沢にもクリアシンタードを採用して滑りを磨き、スキーボードとして楽しめるチューニングを施し、高い走破性、コントロール性能を発揮できるロッカー構造。暴れない絶妙のバランス。それが融合した時、向こう側にはクレーシャさんが微笑んで居たのです。
 みなさん、この板を履くときはご注意ください。気がつくと滑ってしまいます。休憩を取ろうと思って滑り始めるとまたリフトに吸い込まれます。止められない。グラトリとかやろうと思っていたのにまた滑ってしまう・・・。

クレーシャさんの笑みの向こう側は、知ってしまうと抜け出せない何かを孕んでいるかもしれません。そうして帰ってきた暗がりで、また次の欲と煩悩を彼女は微笑みながらかきたてるのです・・・。

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