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【開催報告】Waseda LGBTQ+ Ally Weeks 2023「『ジェンダー平等』とバックラッシュ:東アジアのクィア運動からの考察」を終えて (2023/11/29)

こんにちは、学生スタッフのあきです。

「『ジェンダー平等』とバックラッシュ:東アジアのクィア運動からの考察」の開催報告をしたいと思います!

イベント概要

2023年6月に「LGBT理解増進法」が成立しました。その法律の影響が及ぶ日本社会に生きるわたし達が、東アジアの他の社会の中での LGBTQ+を含むジェンダー・セクシュアリティに関する社会運動、バックラッシュ、そしてそれへの抵抗について学び、連帯したり、この先の運動へのイメージと戦略を考えていくための講演会を開催しました。ゲスト講師として、「東アジアにおける植民地主義・冷戦体制と性政治」をご専門に研究されており、現在早稲田大学でも「グローバリゼーションと性」「エスニシティ論」を担当されている福永玄弥さん(ゲンヤさん)をお招きしました。

あきから見たゲンヤさんの講演

この記事を読んでくださっている方の中には、「LGBTQ+の人の権利は人権だ」とか、“Love is Love”みたいな文言を、SNSやパレードなどで見かけたことがある人も多いかもしれません。また、台湾のイメージとして「アジアでLGBTフレンドリー」を挙げる人も少なくないのではないのでしょうか。本講演は、いかにしてこのような状況が可能となったのか、それを紐解いていくものであったと思いました。

例えば、「LGBTQ+の人の権利は人権だ」に関して言えば、これまで言説や議論の蓄積があり、「LGBTQ+の人の権利は人権だ」という主張の正当性が、国際的に認められてきたと説明されました。

また、LGBTQ+の権利と人権が結びついた状態では、LGBTQ+の権利を擁護するかどうかが政治的な立ち位置の問題として表れると指摘されました。そして、権利推進への反動の事例として、台湾の「婚姻平等」「ジェンダー平等教育」に対する攻撃、韓国の包括的差別禁止法に対する攻撃、日本の「LGBT理解増進法/差別禁止法」への攻撃が挙げられていました。

台湾の「婚姻平等」や「ジェンダー平等」が、民主化の流れや多様な社会運動の勃興、国連を中心とした国際人権言説などの流れと密な関係性を持っていることが説明されました。また、「LGBTフレンドリーな台湾」を称揚するホモナショナリズムに関して、旧西側諸国と価値観を共有しつつ、ホモフォビックな国としての中国とは異なることを強調し、自らを打ち出す言説として流通している点が言及されていました。

また本講演内では、イスラエルのピンクウォッシングは、国家のプロパガンダにLGBTQ+の権利が包摂された一例として挙げられていました。

タイトルにも含まれるバックラッシュに関しては、本講演ではいわゆる「保守主義」というより、進歩主義的な政治的・社会的達成という作用(action)に対する反作用(reaction)として、「反動主義」と説明されました。そして、東アジアのジェンダー・バックラッシュの特徴として、①時期が1990年代後半以降であること、②「ジェンダー平等」をめぐる多様な問題を対象とすること、③戦後与党を担った保守政党との結びつきや宗教右派のトランスナショナルなネットワークなどが挙げられていました。

終わりに

担当学生スタッフのあき、カナ、ルー(50音順)は、「グローバリゼーションと性」や「エスニシティ論」を受講/聴講した経験があり、いつかイベントでゲンヤさんに登壇をお願いしたいと考えていました。また、去年から今年にかけての「LGBT理解増進法」の成立とバックラッシュはわたしにとって大きな出来事で、日本だけでなく、グローバルに展開しているバックラッシュを扱うイベントを実施したいという気持ちもありました。

ゲンヤさんの早稲田大学での講義が今年最後となるので、このようなイベントを開催でき、大変嬉しく思っています!

また、参加者の方からたくさんのご感想をいただきました!

掲載可能な方のものをいくつか抜粋してご紹介します!

たいへん興味深いお話をありがとうございました。東アジアのホモナショナリズムを、単に国内の言説上の問題として捉えるのではなく、アメリカ合衆国による新しい帝国主義やトランスナショナルなネットワークのなかで捉えることで、その権力のあり方を適切に批評できると理解しました。玄弥さんの研究のアプローチ自体が理論にとっても運動にとっても示唆を与えるものだと思いました。

バックラッシュにも、他のアジアの動向にも興味があったので、両方聞くことができて良かったです!日本は台湾や韓国のたどった道を追いかけているのかもしれないと思います。また、「日本は同性愛に寛容だ」言説が日本特有のものだというのは興味深かったです。

記事に入れられなかった話がモリモリあるので、researchmapなどから、ゲンヤさんの著作のチェックをおすすめします!!

↓researchmapのURL 
https://researchmap.jp/genya

LGBTQ+コミュニティの誇りを象徴する様々なプライド・フラッグが飾られたGSセンター室内で「WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS」のバナーを持ち写真に写るゲストのゲンヤさん、学生スタッフ4名、職員4名
ゲストのゲンヤさんと、イベント企画・運営に携わったスタッフ。GSセンター内にて撮影。