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10年前の記事:季節はずれの「春の小川」と宇田川を訪ねる

10年前に自分のサイトに掲載し、その後サイトごと放置していたものをここに載せます(そんなのばっか)。取材当時は季節外れでしたが、今ならちょうど良い季節です。

「春の小川」という歌を知らない人はいないだろう。「は~あ~る~の~お~が~わ~はぁさ~ら~さ~ら~い~く~よ~♪」という、アレである。この歌を聞くと頭の中には里山の風景が浮かんでくるのだが、モデルとなったのは、なんと小田急線の代々木八幡駅付近の風景なのだ。作詞した高野辰之は、現在の代々木八幡駅付近を流れる「河骨川(こうぼねがわ)」の風景を歌にしたのだった。

河骨川は、現在では暗きょになってしまい、面影を偲ぶことはできない。しかし、小田急線の線路沿いに、石碑が設置されている。また、付近は渋谷川にそそぐ宇田川とその支流が暗きょ化され、いかにも「ここは川でした」という感じの細い道が多い。そして、宇田川の暗きょの上は遊歩道として整備され、代々木八幡駅から渋谷までたどることができる。距離は短いが、自転車でたどってみることにしよう。

今回は、小田急線の代々木八幡駅からスタート。下りホーム側の改札から左に進み、千代田線の代々木公園駅の階段を過ぎると、すぐに宇田川の遊歩道の入口が現れる。この宇田川の遊歩道を数十メートル進むと、左にそれる小道があるので、そこを進もう。

代々木八幡駅および代々木公園駅の先の、宇田川遊歩道の入口。

先の遊歩道の入口のすぐ先に、左にそれる小道がある。

この左にそれた脇道が、どうやら河骨川の跡のようだ。建物が接近して狭苦しいものの、曲がりくねったその道は、たしかに川の流れを思わせる。しばらくすると、小田急線と並行するようになるが、ただ線路沿いに小道を作っただけと思わせておいて、しばらく進むと線路から離れて無意味にカーブを描くことからも、やっぱり川なんだな~と思わせる。

いかにも「川でした」という感じの小道である。

線路沿いの小道。小田急線が頻繁に行き交う。

しばらく進むと、右手に公園が見える。これが、代々木小公園。そして、代々木小公園と小田急線の線路との間に、春の小川について記した石碑が設置されている。だからどうっていうわけでもないのだが、歌詞を口ずさみながら、現状とのギャップを楽しむのも悪くはないだろう。ちなみに、「春の小川」は大正元年の作である。

これが「春の小川」の石碑。線路側から。

さて、来た道を戻って、宇田川の遊歩道を進もう。宇田川の遊歩道を渋谷方面に歩き始めると、すぐに井の頭通りの富ヶ谷の交差点付近に出るから、横断歩道へ迂回する。そして遊歩道に戻るわけだが、写真のように、自転車にはとても冷たい構造の車止めが設置されているのが、なんとも残念だ。

自転車はいったん降りなさいということか。

更にずんずんと進むと、だんだんと「古くさい」感じの道になっていく。なんとなくだが、25年くらい前の街の風景っぽい感じが、しなくもない。「ハチ公ソース」なんていう看板が、目に入ってきた。川の跡なので、左右に多少カーブを描きながら、徐々に人通りの多いエリアになっていき、周囲に飲み屋とレコード屋が出現したら、そこはもう宇田川町である。

ハチ公ソースの看板。

交差点を右に行けば東急本店、左に行けば東急ハンズ。

そして、右が東急本店、左がハンズ――といったあたりまで来ると、週末などは人が多すぎて、自転車に乗って通過することができなくなる。自転車を降りて進むと、宇田川町の交番だ。さぁ、もう渋谷のど真ん中。このあたりでゴールということにしても良いが、このままもうちょっと進もう。ちなみに、まだ宇田川の暗きょの上を通っている。

まっすぐ進むと、左右に西武百貨店が見える。このふたつの建物の間に、宇田川の暗きょが通っているのだ。

そのまま、大通りも突っ切って山手線をくぐると、そこは宮下公園。お住まいになっている人の間をそそくさと通り抜けると、そこには駐輪場が広がっているはず。ここが、宇田川と渋谷川の、現在の合流地点と思われる。駐輪場のある右側へ進むと、東急東横店が出てくる。渋谷川は東急東横店の下を流れ、渋谷警察署の向かいに開口部がある――というのは、以前に
コチラでお伝えした通りだ。

そんなわけで、春の小川の石碑から河骨川、宇田川、そして渋谷川へと進む小さな旅は完結である。実はこのコース、道さえ知っていれば、歩いても1時間といったところ。自転車でのんびり進むと、30~40分といったところだろうか。なお河骨川の暗きょ上はとても狭いので、通行には十分注意されたい。(おわり)

2004年7月12日 TEXT:Gen SUGAI



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