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斜に構えた逆転裁判オタクが宝塚歌劇を観て人生が終わった話

宝塚歌劇、皆さんどんなイメージを持っていますか?

敷居が高そう。
マダムのご趣味。
全員女の人がやってるらしい。
階段がすごい。
羽根がものすごい。
化粧がド濃い。

まさにこれが、自分の宝塚歌劇に対するイメージでした。
まあ、関西に住んでいるし、死ぬまでに一回観られたら良いかなあくらい。

さて、この話をするためには自分がそもそもどういう人間なのか
という前提に触れなければなりません。

ーーー

小さい頃から嫌いなものは
張り切って踊るキッズダンサー。
僕たち私たち頑張ってます!みたいなわざとらしい感じがどうしても受け入れがたい。

テレビでキッズダンサーが映るたび
オッホホイホイ…(おいおいを半笑いで言う時のやつ)まさか子供はこういう感じで張り切って振舞わなきゃいけないのかい?HAHAHA!!」と
誰もそんなこと言ってないのに、
テレビのキッズダンサーに謎の反抗心を抱いていた子供でした。

いや今思えばどんだけ捻くれた子供なんだと思うんですけどね。
それは自分も大人になってしまって「子供とはこういうもんだ」っていうのが
キッズダンサーやその他のテレビのイメージから
固まってしまったからかもしれませんね。

ま、そういう子供もいるってことですよ。

とにかく不自然やわざとらしさが子供の頃から大嫌いだったんですよ。
(その割には3歳児くらいの時指パッチンをしながら口笛を吹いて階段から降りる遊びが一番好きだったようですが。)

突然歌い出すミュージカルなんてものは
自分にとって不自然の極み。
もちろん見もせず毛嫌いしてまして。

こんな考えを持っていたもんですから
もちろん宝塚歌劇観る機会もなく、
そして一生観ることも無いんだろうな
と思って生きていました。


というのが自分という人間の根底の話。

ーーー

そんな自分に転機が訪れたのはこんなニュースが目に入った日

「逆転裁判、宝塚歌劇で上演」


逆転裁判というゲームが死ぬほど好きで好きで何周もクリアし、
何なら英語版までクリアするほどでした。

今は昔のmixiニュースで
リンクをクリックするとそこには


金髪で
特にギザギザ頭でも無い
フェニックスライト…
(英語版での主人公「成歩堂龍一」の名前)

えっいや誰!?

原作から遠く離れたビジュアルだったので、
負の感情以前に

何をどうやったらこんな謎のコラボになるんだ?

という感想でいっぱいでした。

そもそも殺人事件前提だけど宝塚歌劇って人死んで大丈夫なの?

羽を背負って法廷で歌うの????
法廷侮辱罪では????(笑)

というファン特有の何目線かわからない
大気圏より上からの目線で謎の心配などをしたものです。

宝塚歌劇では逆転裁判の比じゃ無いレベルで割と人が死ぬのを知らなかったあの頃。
(※宝塚歌劇のショーでは大体男2人で女を取り合って踊りまくった最後に片方の男が射殺されがち。
※あとは謎の部族や一族同士がいがみ合ってて、全員死んだ後に幕の後ろから白い衣装の神的な存在(大体トップスター)も現れがち。)


しかし逆転裁判の衝撃的ニュースを見た当時は高校生、
バイトもせずなんとなく軽音部で日々を浪費し、
そのうちなんとなく受験になり、
なんとなく勉強して気付いた時には晴れて大学生。
奇しくも大学への道すがら通過する宝塚駅。


いよいよ舞台が整ってきてしまった。


そんな事もつゆ知らず。
逆転裁判と宝塚歌劇の謎コラボのことなどすっかり忘れて過ごす日々。


高校生の時は流行っていたmixiが廃り始めた頃。
とあるニュースが目に入ります。

「逆転裁判3度目のコラボ、「検事マイルズエッジワース」宝塚歌劇で上演」


えっ知らん間に3度目になってるのか!?!!?
主役が成歩堂龍一から御剣怜侍(マイルズエッジワースは英語版の名前)になってる!?!!?


そんなに人気なのか????
宝塚は大学に通う途中の駅だし、
次はいつやるかわからないし、
一回観に行っておくか!?


ナルホド君よりミツルギの方が宝塚みたいな感じだし
これなら鋼鉄の原作厨でも観られるんでは????


と、思い立ってしまったが吉日。

逆転裁判が好きな友人を誘い、
予定を合わせ2013年1月9日。


ついに初めての宝塚歌劇。


劇場に入ったところから見える「逆転裁判3」のロゴ。


劇場内に流れる逆転裁判の音楽。

もう正直この時点でかなりテンションはハイ。

どうせ全員女だし、コスプレ大会だろう。

笑い話のネタにでもなりゃいいな。
羽根背負って降りる御剣怜侍見て笑おう。

などと今となっては
本当に顔面がひしゃげて再起不能になるほど殴った方が良いような、
大変斜に構えた感じで期待もせず観にきたわけですけど
演劇自体小学校の学芸会以来まともに観てないので
テンションはかなりハイでした。


いよいよ開演。


そして始まるオープニングムービー
(ゲームコラボの為キャラ紹介でopがスクリーンに映し出される公演でした。)

ゆっくりと上る幕の裏から現れる登場人…登場…と


脚長〜〜〜〜ッ!?!!?

モノホンやないか!?!!?


御剣怜侍モノホンやんけ!?!!?


歌うっm…ええ!?脚長ッ!?!!?

脚長!?全部脚か!?!!?ちがうか!?!!?
えっゲームと立ち姿と角度が全部一緒だが!!?


「そういうアレは困る」


出たァーーッ!!そういうアレは困る〜!!!!!!

と、
原作以外を許さないゲームファンでも大喜びの
台詞、衣装、立ち姿、テンポ感、音楽。


なにより全てに原作への敬意がありました。


あまりの事に幕間休憩に入った瞬間にプログラムを買いました。

そしてまさかの

観に行ってしまった日、まさかの初日


終演後

(終わった…最後御剣怜侍がミラーボール回転してる謎の時間に踊りまくっててなんかもう全部かっこいいしヤバかったな…)
※芝居が終わった後に始まる10分から15分程度のショー、フィナーレナンバーの事

本当にこんなに原作への敬意があるとは思っていませんでした。
どうせ逆転裁判をダシにしてるだけの時間で、
演者もゲームを知らないだろうし
もっと適当なもんだと思ってた…違った…。

ゲームをきちんと研究し尽くしたキャラクターの動き、腕、指の角度。
そしてあのセリフのテンポ感

どこをどう切り取ってもきちんと逆転裁判で
本当に心の底から嬉しくて、キャラクター達が本当にそこに生きているようで
あまりにも感動しました。

しかも斜に構えて捻くれまくって生きてた分余計に感動で鳩尾に一発ぶち込まれました。


まあ御剣の父親のキャラクターだけは
原作とは少し違ってちょっとアレだったんですけど
演じられていた方(蓮水ゆうやさん)のビジュアルが完璧すぎて


異議なしッ!!


幕が降りても鳴り止まない拍手。
(なんだ?アンコールみたいな感じのやつがあるのか????)

と思いながらも流れで拍手をしていると開く幕。

悠未ひろさん(主演の方)「みなさま、本日は初日をご観劇くださいまして、
あの、誠に、ありがとうございましたぁ〜(⌒▽⌒)」

エッ!?!!?さっきまで本当に
あの超鋭い眼光で御剣怜侍やってた人ですか!?!!?

半分くらいひらがなに聞こえたけど!?!!?

同じ人か!?!!?


何そのギャップ!?!!?


舞台が終わった後の
ホワホワした喋りのギャップに一発で殺られ、


初日だったためスタンディングオベーションまで発生し、
全く知らない演劇、舞台という世界観の美しさにガンガンに充てられ、
なんだかこっちまでホワホワした気持ちで帰路に着き、


気が付いたら次のチケットを買ってました。


帰宅後、

母親「宝塚どうやったん?」

自分「いや現実かどうかわからんからもう一回観る必要がある。」

母親「えっ同じやつ?いやアンタ頭おかしなったんとちゃうか?」

自分「いやどう考えてももう一回観る必要あるやろが…。舞台は生き物やねんぞ!!」


などと観劇歴1日目から意味不明な供述をする始末。


そして迎える2度目の観劇。

しかも自分の誕生日。


チケットを譲って下さった方はどうやら主演の方のファンクラブの方で、
急遽ご友人がインフルエンザに罹り、
同行者をmixiに急募で出されていたところを買わせていただいたのだった。


座るとなんと10列目。そして通路に近い。


1度目は20列台だったため、倍近く近い…。
双眼鏡(オペラグラス)も持ってなかったので余計に近く感じる…。

婆さんや、ワシは死ぬかもしれん…
ワシは産まれた日に死ぬかもしれんのじゃな…

フォッフォ、それもまた人生よ…
などと居もしない婆さんに遺言を託す隠居した老兵風に謎の死を決意しながら待っていると


開演。


おわっ近ッ!!!!
視力1.5あってよかった情報量が!?!!?
情報量がヤッベェ〜〜ヒィーーーッ死ぬ!!!生きる!?!!?生きるぜ!!!これからも生きていくぜえ〜〜!?!!?(????)


などと怒涛の意味不明な感想を
脳内に垂れ流しながら観劇していると


えっなんか近づいてきてない!?!!?
これが噂の4DX????あっすんごい

エエ近近い!?!!?近っ!?!!?脚長!?!!?全部脚か!?!!?長すぎる脚オブザイヤー2013受賞か!?!!?
近…いい匂いするう〜〜〜!?!!?


なんと10列目の通路近くは主演のマイルズエッジワースが歌いながら立ち止まる位置。


ライトに照らされて歌う悠未ひろさん(マイルズエッジワース)を観て


あっもう、ハイ、これ今までの自分完全に死にました〜。
ストップオブ息の根。
アンド新しい人生始まる音がしちまったYO。ヒェア。アーハン。


という新進気鋭のラッパー(ラッパーに謝れ)のようなテンションヒェアチェケという気持ちで
あとは何も覚えてません。多分こうなった人はもう何もわかりません。
転げ落ちるように宝塚にハマりました。
頭から落ちて呼吸出来ないぐらいの勢いですよ。
止まったら死ぬ鮪ぐらいの勢いです。
大サビ入る前の一拍の休符くらいのテンションです。

こうして呼吸不全で前後不覚に陥りながら初めて観た演目、逆転裁判3については
合計3回観劇し(しかも千秋楽の日に当日券を買ったが
すっかり忘れていたバイトがあった為、
泣く泣く一幕で帰った。もうバイトの予定すら上手く把握出来ないレベルに宝塚しか考えていなかった。)

脳内が立派なすみれの花畑になってしまったのでした。

その後は色々ありました。
書くと長すぎるので読みたいというお言葉をいただいたら書くかもしれません。


人が一生懸命努力することの美しさを知り
宝塚ファンの方々が持つ生徒さんへの愛の大きさを知り
舞台のために関わる人の数の多さを知り
大好きな悠未ひろさんの退団を経て。

今でも宝塚歌劇は大好きでよく観に行きます。

斜に構えてた自分が人の事をもっと素直に賞賛して生きていこうと思えた文化が宝塚歌劇です。

FNSの放送で興味を持った方も、
全く興味なく自分のように半ば小馬鹿にしているあなたも
機会があれば是非劇場へ。

きっと素敵な時間になりますよ。


そしてもう一つ。
あの日、誕生日の日の観劇の時に

「貴方にこれ、お渡しするわね。」

と笑顔で悠未ひろさんのサイン入りのスチール写真を下さった方。

「いやいやいや、こんな凄いもの頂けません!」


と言った後に

いいのよ、こういう時の為に持っているの。

と仰られた一言、
これが宝塚のファンの方か!と感じた衝撃と感謝、一生忘れません。


自分も人に何か一つ返せるように、
こうして100年以上続いてきた世界がこれからも続く一助になれるように。


初めて観劇する方とご一緒する時は
何か一つ心が嬉しくなるような事をしたいと思うようになりました。

この人生を変えた出会いが確かだったと実感できる、大切な大切なお写真です。

あれから6年経った今も大切に飾っています。
こんな場で恐縮ではありますが、本当にありがとうございました。

これからも大切に飾らせていただきます!

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