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【7年ぶりの舞台で完勝発進】Arsenalマッチレビュー@CLGS第1節vsPSV(H)/23.09.21



試合前トピックス

・前節負傷交代マルティネッリは出場不可
・エルネニー、ティンバー、トーマスも引き続きアウト


マッチレポート

試合結果

ARS 4-0 PSV
8' サカ
20' トロサール(サカ)
38' ジェズス(トロサール)
70' ウーデゴール(ネルソン)

https://www.sofascore.com/psv-eindhoven-arsenal/Rscjb#11605840

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スターティングイレブン


試合トピックス

強豪PSV相手に圧倒的な制圧力の前半

 7季ぶりに帰ってきたCL。エメリ就任当時からアーセナルを応援し始めた筆者を含め、アーセナルがCLで戦っている姿を見た事がないファンも多いだろう。名門・古豪の代名詞的存在で、全世界にファンが多く存在するアーセナルにとってようやくいるべき場所に戻ってきたんだと胸躍らせるGS開幕戦が行われた。

 流れるChampionsLeagueのアンセムに耳を傾けたウーデゴールやトロサールが静かに笑い、やり直しを食らう歯切れの悪いアーセナルのキックオフから試合開始。出だしこそ要注意人物ラングに決定機が生まれたもののラヤがストップ、ここからほぼアーセナルペースで時間が進んでいった。

 というのも、昨季EL同組のPSVもアーセナルと同様にある程度は保持の構えを見せるものの低い位置でのパス回し後スペースを生み出せないままストロングポイントの左サイドへボールを供給することがしばしば。また、前線のプレスに対してアーセナルのDF4枚+ライスが持ち運びと細かなポジションチェンジを織り交ぜいなすと後方のリトリート意識からか中盤が間延びしがちで、ここで前向きにボールを持ったジンチェンコ、ライス、ウーデゴールらが自由にゲームメイクすることが出来ていた。

 左はラング+デストが段差を付けたダイナミックな攻撃を行い、右は大きく展開したところからバカヨコがジンチェンコと1vs1に挑むシーンもありピンチが0だったわけではないが、こういった攻守の課題に対してアーセナルは格の違いを見せつけた。

 まず守備局面では例の通りコースを限定し甘いパスを摘み取る連動したプレス隊形でショートカウンターを発動。不安だったジンチェンコサイドはクロスこそ上げられるもカットイン→シュートという一番やらせたくないパターンは死守。またホワイトは前半終了間際にカードが出るもほぼ完壁に近い対応でディレイをかけ味方と包囲し堰き止めていた。ラヤのゴロ球やクロス対応も試合を通して安定感があった。

 そして攻撃面では先ほど述べた中盤での制圧力と展開力を生かしてサカやトロサールといった違いを生み出せる選手がサイドで優位を確立し、前節スタメン落ちしたハヴァーツも気の利く裏抜けで幾度もサポートに徹した。サカが外に引き付けた結果空いたスペースでウーデゴールがシュートを放ち、オフサイドにならない程度にランニングを残しておいたサカがこぼれに反応し先制点を挙げたシーンは起こるべくして起きた得点だっただろう。押せ押せムードの中で8分という素晴らしい時間帯にゲームの方向性を決定づける得点を獲得できた。

 良いスタートを切ったアーセナルだが得点後も尻上がりに調子を上げていく。これはジェズスが久々に絶好調なパフォーマンスを披露し、巧みなボディコンからシュートをいくつも狙った事も大きかっただろう。そのジェズスがPSVの攻撃終了後のルーズボールを拾ったところから、サカのグラウンダーのクロスにバイタルエリアで待ち構えていたトロサールがゴールを決めたシーンは、先制点に絡めなかったジェズスとトロサールにとっても、チーム全体にとっても士気が上がるタイミング良い追加点であった。

 そのトロサールが今度はアシスト。38分、ガブリエルの意表を突くフィード一発で抜け出したトロサールが、ワンテンポ置いて逆サイドへ展開、優しくトラップしたジェズスがサイドネットに突き刺す見事な3点目で前半のうちにゲームの大局を決定づける得点を奪った。直近スタメン出場を果たしたフラム戦ではお世辞にも上出来だったとは言えないパフォーマンスを見せたトロサールが、チームの上がり調子に乗っかり結果をきちんと残した。改めて昨季冬にバーゲン価格で獲得出来た事がどれだけ恵まれていたか感じる出来だった。

PSVの微修正と試合巧者なアーセナル

 流石に3得点も取ってしまえばアーセナルにとってはリスクを負う必要がなくなる。PSVは後半の立ち上がりに際して前半頻発した間延びを防ぐためリトリート気味の4-4-2をメインに据えながら、アーセナルのバックパスに連動してコンパクトな陣形のまま前プレスをかける細かな修正を行ってきた。

 だがこれもノリノリのアーセナルにとってはあまり意味のないこと。試合を殺しに行きたいアーセナルはリトリートを横目に保持の時間が稼げればいいし、バックパスに食いついてきてもサリバやライスといった視野と技術を兼ね備えた選手中心にある程度ならばひっくり返すことが出来る為、PSVが前がかりになったタイミングで前進のスイッチを入れる事が可能。試合が落ち着き始めた前半終了間際からPSVのシュート企図シーンは幾分か増えたものの、枠外と悪ミートを繰り返す焦りとは対照的に、淡々と自分達のプレーに集中するアーセナルがコンスタントにゴールに迫るどこか大人な立ち振る舞いを見せた。

一新された前線と安定感の後方

 大量リードに成功し、PSVに逆転の余地があまり感じられないとなるとアルテタはベンチ選手の出場時間の確保に取り掛かる。60分にネルソンと冨安、70分にグーナー待望のスミスロウにヴィエイラ、75分最後の交代でジョルジーニョを投入した。最終的にはCFハヴァーツ/左WGネルソン/右WGヴィエイラ/左IHロウ/右IHウーデゴールという布陣に。

 交代選手を当てはめただけではあるが、この交代後布陣はそこそこハマっていた。特にヴィエイラは直近のパフォーマンスから自信がついたか堂々としたプレー。ハヴァーツも個人的にはCFの方がやりやすそうというか、ロストのリスクがIHに比べ少ない分プレッシャーから解放された分、元々の戦術理解度を発揮したポジション取りとパス回しへの溶け込みから加速スイッチ役が出来ていた。ダメ押しの4点目もハヴァーツの効果的な裏抜けが起点となり、グーナー垂涎もののアカデミー産ユニットスミスロウ&ネルソンがためを作って中央でこれまた待ち構えていたウーデゴールがフェイントを挟み左足一閃。得点に絡むべき選手が軒並み絡んで計4得点を鮮やかに演出した。

 後方も負けじとサリバの華麗なダブルタッチ、ラヤの超低弾道ピンポイントフィード、ジョルジーニョの十八番ピッチ内コーチングと話題に尽きないエンターテイメントな終盤戦。決してチャレンジングなプレーという訳ではなく余裕から生まれるのびのびとした守備で一矢報いようとするPSVの勢いを殺しクローズへと向かわせ、ラスト5分しっかりスローペースに落とし完全無欠な試合運びを行ったアーセナルが初戦をCS&4発快勝で飾った。


ゲーム総評

 うん。文句ないでしょう。シーズン開幕後昨季の快進撃と比較して課題や改善点が毎試合のように浮き彫りになり、PL4戦3勝1分という結果に似つかわしくない不安な内容があった中で、そういった不穏な空気を払拭する完勝を収めた。

 フォーメーション面でも選手個々人のパフォーマンスでも、可変システムの弊害を食らう選手がいたり他選手に活躍を奪われた選手がいる、という彼方立てれば此方が立たぬといった事が一切なく、やりたい事が全部できる最近どこぞの海賊漫画の主人公が覚醒した最終形態かのような試合運びを行えた。

 CSに加え得点も満遍なく生まれ、不安定な時間帯も無く、交代組も各ポジションでコンディションの良さを感じ、怪我人も0。久方ぶりのCLは新生アーセナルが持ち前の魅力を発揮し上々の滑り出しを決められただろう。

 だが裏で行われたバイエルンvsマンチェスターユナイテッドの試合はバイエルンの攻撃が迫力満点。ムシアラや新加入ケインが中心となり4-3と肉薄したものの、ユナイテッドの守備陣を蹂躙していた。

 まだグループステージで相手のレベルも正直CLのスタンダードかと言われるとそうではない。本選を前に快勝スタートを切れたことはいいとして、この勝利に慢心することなく欧州の強豪たちとぶつかる前に更なる仕上げを施し臨んで欲しいところだ。

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