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【アーセナル】PremierLeague/第32節/vsSouthampton(H)【ごとこの備忘録】

試合前展望

 優勢な展開から複数得点を挙げ楽観的な試合運びをしながらも、疲れや怪我人による連携面の未熟さ、はたまた慢心からか徐々にコントロールを失い痛恨のドローを喫した前節ウェストハム戦。

 この結果を受け、筆者含めシーズン優勝に対しかなり悲観的になっている世論であったが、仮にここで勝っていても、アーセナルがシティに引き分け&互いに他試合全勝という残り試合の結果ならばGD勝負となりシーズン終了時には恐らくシティに軍配が上がっていただろう。つまるところどっちにしろ直接シティを叩く必要があり、そう考えると前節の勝ち点は1ptでも価値のあるものである。と皮算用せずにはいられない。

 さて気持ちを切り替え、第32節にあたる今節はホームでサウサンプトンとの一戦。前回対戦時はジャカの得点力が開花し先制するも追いつかれドローという結果。度重なる誤審やジェズスの得点力不足等が見られた試合だった。

 アーセナルは練習復帰こそしたもののジンチェンコが未だフィットしておらず、またサリバが予想以上に怪我からの復帰に時間がかかっており、シーズンアウトの覚悟もしなくてはならないとも読み取れる、含みのある会見を行っていたアルテタ。バックラインに依然大きな不安が残ってしまっている。

 対するサウサンプトンは現在最下位に沈んでいるとはいえ、降格圏からの脱出は現実的な目標になっている。今季不調チェルシーにダブルも決めており一筋縄ではいかないことが予想される。

 だがこうした両者の背景がありつつも、今節こそは首位たる圧巻の試合を見せて欲しい。ここで勝ち点を落とすようなことがあれば、優勝は絶望的である。

試合結果

ARS 3-3 SOU
ARS:マルティネッリ 20'(Aサカ) ウーデゴール 88'(Aホワイト) サカ 90'
SOU:アルカラス 1' ウォルコット 14'(Aアルカラス) チャレタツァル 66' (Aベラ=コチャプ)
PL公式MOTM:サカ

https://www.premierleague.com/match/75221

スターティングメンバー

左アーセナル、右サウサンプトン

試合展開

 優勝争いも最終盤の中、大きく失速してしまった直近2試合から一刻も早く挽回したいアーセナルは、ジンチェンコが即座に復帰するもののジャカがillnessでベンチ外。代わりにヴィエイラがボーンマス戦以来となるスタメン出場を果たした。

 さて、保持で試合を支配する盤石な試合運びで最下位セインツを圧倒し、シティ戦に向けて弾みをつけたかったアーセナルは試合開始早々に大きな痛手を負うこととなる。

1' ラムズデールのショートパスをカットしたアルカラスがそのまま持ち運びシュート、サウサンプトン先制

 ボーンマス戦を彷彿とさせる試合開始直後の先制点献上。トーマスの背後に隠れるポジショニングを取っていたアルカラスを視認できなかったのか、ラムズデールが中央へ差し込んだ楔をかっさらわれ試合開始27秒で失点を喫してしまう。

 たまらずラムズデールの元に駆け寄り激励を送る選手達。チームの士気を盛り返し攻勢に出るアーセナルは複数のCKを獲得するなどチャンスを作れるシーンはあったが決まらず、最近の流れと合わせてどうも焦りが見える展開に。対するセインツはその焦りを逆手に取り、度重なるロストをひっかけては、保持の時間を長く取らずシンプルな縦方向の前進に注力した。

 そしてその中で更なる失点を喫する事に。

14' アルカラスのスルーに抜け出したウォルコットがガブリエルの背後を取り流し込むシュート、サウサンプトン2点目

 ホームで2失点スタート。共に自分達の不用意なロストが起点となり、試合の入りとしてはスコア/メンタル両面で最悪の出だしとなってしまった。今度もジンチェンコがチームを集め選手達に喝を入れる。直近2試合以上の逆境にチーム全員が同じ方向を見て戦う必要があった。

 さてそんなセインツは攻撃フェーズをコンスタントに演出。これには2つの原因が考えられる。1つ目に守備時アームストロングが絞ってロブ-ガブリエル-ホワイトの後方3バックをケアされることで、数的優位確立の為トーマスが降りる必要があり、ビルドアップ関与と共に中盤のフィルター役を兼ねるトーマスのポジショニングをセインツが意図的に揺さぶった事。また2つ目に、久々のスタメンを飾ったヴィエイラの守備の出足が遅れる事が多く、どうしてもジャカに対しディレイのかけ方という部分で見劣りする要素があった事。こういった理由から先に述べた速攻の形がピッチ中央で繰り広げられたのだろう。

 パスミス+ハイプレスから逃れるロングボールのセカンドを拾っての前進で上手く剥がされ続けるアーセナル。だが更にそのカウンターからなんとか1点を返すことに成功する。

20' ジンチェンコの楔を受けたウーデゴールがサカへスルーパス、鋭く折り返した浮き球にマルティネッリが上手く合わせボレーシュート、アーセナル1点目

 ここまで前線で一番の働きを見せていたマルティネッリが反撃の狼煙となるゴールをマーク。これでシーズン15ゴール目となり、プレミアリーグ同一シーズンにおけるブラジル人の最多ゴール数を弱冠21歳で記録する事となった。

 それまで拮抗していた展開は1点を返したことによりホーム優勢に。両WGが個の力を発揮しそれぞれSBにイエローを出させ、ジンチェンコは復帰直後でも圧倒的存在感を発揮。べドナレクの負傷交代というアクシデントも重なり前半終了までアーセナルに追い風が吹き始めていた。

 打って変わって後半。セインツはG1A1の大仕事を果たしたアルカラスを下げ右SBにリャンコを投入。5-3-2に切り替え明確に逃げ切りにシフトチェンジした。

 5バックという事は守備強度と引き換えに後ろに重たくなり守備から攻撃に転換しにくい。当然アーセナル側がボールを持つ時間が長くなり、前半以上に攻守がはっきりと分かれる試合展開となった。

 加えて56分には微妙なパフォーマンスだったヴィエイラに代わりスミスロウではなくトロサールを投入。ここで使われないスミスロウのコンディションに依然不安が募りつつも、トロサールはIHながらジェズス&マルティネッリと入れ替わり立ち代わりポジションチェンジし動く形を取った。

 だがさらに攻勢をかけるこの交代から10分後。セインツが獲得したCKで後半唯一のチャンスをものにされてしまう。

66' ウォード=プラウズの蹴ったCKをベラ=コシャプが逸らしファーに走りこんできたチャレタツァルが頭で合わせゴール、サウサンプトン3点目。

 まさに悪夢。同点弾はまだかと待ち望んでいた中、たった一つ与えてしまったセットプレーから絶望の3点目を与えてしまう。

 また不運は失点だけではない。攻撃面でもポゼッションこそ圧倒するもシュート企図数自体稼げず、偶のシュートチャンスもジェズスが決定機を外し続け、ボールを持っていても優勢とは言えない状況に徐々に移り変わっていった。

 背に腹は代えられないアルテタは71分にジンチェンコoutエンケティアin、次いで85分にマルティネッリoutネルソンinの交代策でファイヤーフォーメーションを選択。最後の希望をヘイルエンド産の若手2人に託した。

 そして、直後の僅か3分間。諦めてバックスタンドを後にするファンも多い中で、まさに奇跡とも呼べる2得点連続マークを成し遂げる。

88' ホワイトとポケットの連携からウーデゴールの左足一閃、アーセナル2点目

90' 左深く侵入したガブリエルのスローインからトロサール→ジェズスへエリア内に股抜きの楔を打ち込み、落としを受けたネルソンのシュートが一度は阻まれるもこぼれに反応したサカが押し込みゴール、アーセナル3点目

 試合終了間際に一挙2得点を挙げ追いついたアーセナル。キャプテンのゴラッソとワールドクラスのヤングスターの執念のゴールがアーセナルの希望を繋いだ。

 その後セインツの時間稼ぎ分を考慮しAT8分が提示。残り時間を目いっぱい使い、トロサールのクロスバー直撃ミドルにネルソンの僅かにポスト左へ反れた至近距離シュート等、最後の力を振り絞って攻勢をかけ続けるアーセナル。

 しかしミラクルはそう何度も都合よく訪れず、試合終了。最下位セインツ相手に累計100分以上に渡る死闘を繰り広げつつなんとか勝ち点1ptを確保する結果に。あまりに悔しいドローで、劇的な試合は両者痛み分けの幕引きとなった。

ピックアップ選手

なし。

全体雑感・次戦に向けて

 2得点を決めながらも追いつかれた前/前々節とはまた違った絶望を味わうこととなった今節。試合終了間際の諦めない心意気から生み出した同点までの経緯はカタルシスを感じる本当に素晴らしいものであったものの、だからこそ、何故始めからそれが出来なかったのかと問いたくなる、そんな複雑なフェードアウトであった。

 またファン界隈で議論の中心となっているホールディングやヴィエイラは、個人的にはサブ組としては良くやった方だと思う。失点シーンも特定の選手のミスというよりチーム全体の意思統一の取れなさや疲労が引き起こしたものであると思われ、彼らがやり玉に挙げられることはあまり好ましくない。ただそれと同時に、久々の出場となっても穴埋めに留まらず、自分の強みを発揮しチームに貢献できる"impactor"を来夏獲得する必要があるとも感じてしまった。「悪くない」パフォーマンス止まりでは、優勝争いなど夢のまた夢である。

 そういった面ではネルソンとトロサールは素晴らしい働きをしていた。去就が取り沙汰されているネルソンは逆転弾を惜しくも逃したシュートで誰よりも悔しがり、2人共ピッチに新しい風を送り込む印象的なプレーを見せた。次節はトロサールをスタメンから、ネルソンももっと早い60分あたりから投入しても良いんじゃないかと感じる程にゴールの匂いを漂わせていた。

 さて次節はいよいよ今季の天王山、エティハドスタジアムでのシティとの一戦である。未だCL権を確定出来ておらずどんどん勝ち点差を詰められている現状であるが、ここで勝つようなことがあればまだ優勝の夢は潰えない。ここまでの鬱憤を晴らすかのような軽やかなパフォーマンスで、怪物ハーランド率いるシティを正面からねじ伏せて欲しい。筆者も1グーナーとして、今季の行く末を最後まで見届ける覚悟はできている。

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