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【38試合もあれば…】Arsenalマッチレビュー@PL第19節vsWestHam(H)/23.12.29



試合前トピックス

・長期離脱中トーマス、遂にフルトレーニング復帰


マッチレポート

試合結果

ARS 0-2 WHU
13' ソウチェク(ボーウェン)
55' マヴロパノス(ウォード=プラウズ)

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ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

伸び伸びとした優勢にワンチャンスの先制

 プレミアリーグもいよいよ折り返しの19節。年末の過密日程を駆け抜ける中今節当たるのはウォード=プラウズやクドゥス、ボーウェンやパケタ等中堅クラブの割に十分過ぎるタレントを擁したウェストハム。言わずもがなライスはアーセナル移籍後初の古巣対戦。また、レンタルを繰り返し一時はチーム合流の可能性もありつつ放出されたマヴロパノスはアーセナルとの古巣対戦になる。

 スタメンは前節イエロー5枚目を提示されたハヴァーツがサスペンションとなっており代わりにトロサールでそれ以外はフルメンバーを選出。ウェストハムもアントニオを除くと概ね全力のラインナップとなった。

 立ち上がりからの10数分間は、前節リバプール戦とは打って変わって遅攻でアーセナルが主導権を握り、攻守共に完全に支配。攻撃ではウーデゴールのパスと動きのキレを主軸とした左右から揺さぶりをかけるスタイルで、数少ない守備局面でも堅固なバックスが素早くシャットダウンし、最終局面でウェストハムのブロックを崩し切れない事以外は完璧な入りだった。

 しかし13分、耐え続けていたウェストハムはアーセナル側のミスも相まってワンチャンスをものにする。エメルソンのクロスをゴール前でジンチェンコとガブリエルが処理しようと交錯し、なんとか弾き返したボールを前に残っていたボーウェンがカットバック、後ろから飛び出してきたソウチェクが押し込んで先制点を挙げる。

 何度見てもエンドラインを割ったように見えるが、まともな判定もそれが正しいかレビューする事も出来ず一丁前にプライドだけ持った審判団については一家言ある。が、それは一旦置いといて、完全に自分達のペースだった中、僅かに生まれた綻びから決定機を決められ、内容とは裏腹に序盤から追いかける展開となってしまったギャップは選手達を大いに苦しめただろう。昨季と比べ派手さはない代わりに堅実に相手を追い詰め得点を奪ってきた中で今節もその流れを踏襲していたが、予想だにしない不意打ちで試合展開を大きく変えられてしまった。

継続する2つの問題点と追い風を生かせない前半

 先制点に続き敵陣深い位置でのサカへの深いファールはお咎めなしとオリヴァー主審の捌きに疑問が増していく中、ウェストハムが少し持ち直す展開から試合は再開する。後方での保持はここまでのシーズン全体で見ても割とイージーな部類に属する今までの展開だったが、選手達にも多少なりとも動揺があったに違いない。少々押される時間が続く。

 だが少し経つとアーセナルペースへと試合は再び落ち着く。そもそもウェストハム的には首位とのアウェイ戦という事もあり鼻からボールを持とう、前からガンガンプレスに行こうという気はなかっただろう。ボールを持たされたアーセナルが早々に追いつき逆転できるかどうか、コンディションの良さげなウーデゴール、ジェズスを中心に前線の活躍に注目が集まる。

 だが彼らの働きは不十分だったと言わざるを得ない。最も致命的だったのが芳しくない試合で毎度触れている気がする「決定力不足」である。ファーストプレスを突破されると低く中央を締めタイトに守ると割り切ったウェストハムのブロックに対し、前述の2人が中心となってポストや浮き球等で崩し切る前にシュートチャンスを作れていたものの決め切る事は出来なかった。

 個人的にはトロサール-マルティネッリの左サイドが静かだったのが気になるポイント。ハヴァーツの不在とウーデゴールが右へ流れる頻度が圧倒的に高いのも重なり、円滑にエリアへ侵入出来ない彼らからゴールの匂いは感じないどころか、高い位置でブロックをどう調理しようかと伺うシーンで仕掛けロストする事も多く、打開しようとする意欲が却って空回りするなんとも歯痒い事態に陥っていた。

 更に、「サインプレーの不発」もここ最近の問題点の一つだと考える。今回はトロサールが得意そうな角度のFKを得たのに狙わずサインプレーで繋ぎ始め、結果奪われてカウンターを招く羽目になっていた。これはCKも同様で、ウーデゴールやトロサール、ミドルならライス等良いキックを操れる選手に対し、サリバやガブリエル、ハヴァーツやライス等アーセナルらしくない高身長の選手がターゲットが待ち構えるといったように正攻法のセットプレーで通用するメンバーが揃っているのにも関わらず、ロストのリスクを上回るようなリターンがもたらせられないサインプレーを毎試合のように繰り返すのは正直言って愚策ではないかと思う。

 試合全体に話を戻す。前半一の決定機サカの至近距離ヘッドは好調アレオラのビッグセーブで阻まれ、今度は右ポケットをウーデゴールの絶妙スルーパスで抜け出し取るもシュートはポストに直撃。パケタの負傷交代で元々攻撃がそこまでといった印象なウェストハムの牙が更に抜かれる形になるも、アーセナルにとってより有利な状況を生かせずいたずらに前半を過ごすことになってしまう。

ポゼッションに付き纏う「持ち過ぎ」問題

 結局ゴールは生まれずエンド変わって後半。ホームで更なる攻勢をかけるアーセナルを相手にウェストハムは前半同様基本的に深く迎え撃つ方針でハーフタイム前の状況からゲームは再開する。

 だが、前半の焼き直しとも言える展開の中で、後半に得点が生まれたチームも残念ながら焼き直しとなってしまう。55分、辛うじて生まれたウェストハムのカウンターからCKを獲得、ウォード=プラウズのボールにマヴロパノスが反応しヘッドで追加点。またしてもボールを持つ時間が訪れていなかった中奇跡的に得たワンチャンスをものにし、試合を支配するアーセナル相手に2点のリードを確立する。

 圧倒しているものの2点差を付けられてしまったアルテタはたまらずマルティネッリとジンチェンコに代えネルソンとエンケティアを投入。前トピックスで触れた決定力不足を一番痛感していたマルティネッリを下げ3-3-4の所謂ファイヤーフォーメーションに切り替え得点を狙いに行く。次いで79分にはトロサールに代え、丁度3年前のチェルシー戦で救世主となった一人スミスロウを投入。しかし彼ら3人も下がったメンバーと同様に決定的な仕事をする事はなく、交代によってゴールに近づいたかというと決してそういう訳で無かった。

 その後のアーセナルの停滞も言わずもがな。ジェズスのどフリーヘディング弾は枠外、交代直後のスミスロウにウーデゴールのピンポイントフィードも僅かに合わず、大体のシュートがブロックされるかGKの正面ばかり。アレオラのプレーが素晴らしかったのは勿論あるが、それにしてもここまで決定機を決めきれないのかと。得点を量産出来るストライカーの待望論が尽きないのも分かるし、ウーデゴールの奮闘が報われないのが見てて悲しかった。

 また後半での一番の問題点について触れておくと、前半はそこまで感じなかった「持ち過ぎ」問題が常に顕在化していたのが挙げられる。ポゼッションサッカーと言うと聞こえはいいが、ハーフスペースランやクロスの飛び道具、強引なリンクプレー等を織り交ぜて的確にブロックを破壊出来ないとそれはただ持たされているに過ぎないのだ。繰り返しになるが特に後半はそ傾向が強く、前線が違いを生み出せないどころか出し手に回る人数が多すぎるシーンが見られたりと、ゴールへの道筋に対して取るべき行動とが噛み合わないちぐはぐさがチーム全体に見られた。

 終盤にはオグボンナがエリア内で足をかけるもまたもお咎めなしだが最早文句を言う気力もない。それどころか逆に終了間際、自陣エリア内でスリップ気味のライスが足をかけPKを献上するもラヤがコースを完全に読み切ったストップで屈辱の3点目を防ぐ。チームの士気を完全に殺す絶望の3点目を防いだ事によって、次節へ向けてまだ希望を繋ぐ事が出来た点だけは唯一の救いである。しかしホームでクリエイティブ力と決定力に欠けた不甲斐ない試合をしたアーセナルは2位リバプールに抜かれ再び首位陥落となった。


ゲーム総評

 今回のレビューでは最近のアーセナルが抱える問題と今節の良くないポゼッションサッカーを交えてネガティブな記述が多くを占めてしまったが、個人的にはそこまで悲観するような試合ではなかったと思う。ウェストハムには全くと言っていい程チャンスを作らせなかった中で偶然に近い形で生まれた2つの決定機を沈められたのを鑑みると、アーセナルの構造上の問題というよりかはただ単に運が悪かったと割り切るのが自然ではないだろうか。シーズン38試合もあれば1試合くらいはこういった不運な敗戦もあり得る。少なくとも暴力と誤審の数々によって真っ当なフットボールが出来ず理不尽に負けを押し付けられた、今季2敗のニューカッスル戦とアストンヴィラ戦に比べると遥かに気持ちが楽な人もきっと私だけではない筈だ。

 次の試合は中1日、日本時間ではハーフタイム頃に年明けを迎える31日のフラム戦。ウィリアンやイウォビ、レノ等アーセナルファンから愛された選手が何人も所属している。彼らに胸を借りる気持ちで、今節の不穏な空気を吹き飛ばす快勝を新年の祝いとして期待したい。

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