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将棋の囲い

将棋には王様の守備となる「囲い」がたくさんある。
囲いも居飛車、振り飛車別に数多く存在するので、居飛車党か振り飛車党かで囲いの選択率も当然変わってくるのだが、そのなかでも人によって比較的好みは分かれるだろう。

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古今東西アマチュアに人気な囲いといえば、「美濃囲い」は外せないと思う。
人気な理由はさまざま挙げられるが、まず囲うのが簡単でかつ短手数で組めてしまう点があるだろう。
飛車を振った後、玉を右に移動し銀を一つ上げればもう完成だ。
片美濃ならわずか4手、本美濃でも5手で完成し、なおかつ硬さも兼ね備えている。
もちろん将棋としてはいずれも一局ではあるが、考え方としてはとてもシンプルで初心者にもわかりやすい。
この美濃囲いが好きで振り飛車から覚えた、あるいは振り飛車党になった、という人は多いと思う。

私は今でこそすっかり居飛車党であるが、前にも書いたように最初は振り飛車から覚えそれしか指せなかった。
そのため美濃囲いは今でも好きだし、なんならいちばん美しいと感じるくらいだ。(シンプルさと金銀の連結に機能美を感じる)
振り飛車にしたらまず間違いなく作れる囲いであるし、やはりシンプルなのが良い。
同じ手数なら居飛車より硬く囲えるというところも強みだろう。(居飛車では角の存在と▲7六歩or△3四歩の1手消費のせいで早く囲えない)
そして囲いが完成したら、戦場と本陣が左右できれいに分かれるため基本的には中盤まで本陣を気にせず戦場側で強く戦うことができる。
そうした盤面全体の構図もシンプルに考えられるので、相居飛車戦などに比べればわかりやすく馴染みやすい将棋にできるだろう。


美濃囲いの他に私の好きな囲いはというと、最近では「トーチカ」だ。

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名前からしても強そうなこの「トーチカ」(広義では「ミレニアム」ともいうがここでは6六角型のトーチカに限定する)は対四間飛車戦で使っている。(その他の振り飛車に対しては定跡上居飛車穴熊が多い)
大分贔屓目に見てはいるが、以下のように良いところがたくさんある。

・玉が8九の地点にいるため相手の角に直視されない
・駒組み中に玉が相手の角の効きに入らないため、穴熊などに比べ制約なく囲いやすい
・最初に自分の角が6六に上がるので、効きが止まる瞬間がなく可動域が抜群に広い
・最終形まで囲えれば穴熊に準ずる硬さをもつ上、穴熊より端攻めに強く自分からも端攻めがしやすい
・左桂を攻めに使え、角との連携で攻め筋が豊富

もちろん振り飛車側の対策もたくさんあるし、毎回使いこなすにはそれなりに定跡も覚えなければならないが、総合的に見て、硬く囲ってガンガン攻めていきたいという人にはかなり向いていると思う。

個人的に最大の長所と考えるのは、上記後半に挙げた端攻めが可能な点や角と桂の連携による攻め筋がたくさんある点だ。
特に角が盤面中央に近くいろんなポジションに移動できるので、いじめられないように注意すれば攻め手に困ることはほとんどない。
また振り飛車穴熊に対しても同等の硬さをもちながら一方的に端攻めができるので、居飛車側に分があると考えている。
具体的な手順などはここでは書かないが、囲いとしても戦型としてもかなり万能だと感じるようになり、以後はずっと愛用している。


その他にも、実戦であまり使わなくても囲いとして好きなものはある。

例えば、近年AIによって生み出された「エルモ囲い」。

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これは基本的に舟囲いの金が6九から7九に、5八から5九に各一路ずれただけの囲いなのだが金銀が連結されたことで硬さが段違いであり、美濃囲いと同じく短手数で組み上がりそれに匹敵する硬さをもっている。
少しのアレンジでがらりと性質が変わったところが革命的で魅力がある。

他には横歩取りの後手番で図のような囲い、というか陣形がある。

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これもまた金銀の連結が良く2二歩型が硬いので個人的には好みである。
まだあまり指したことはないが今後挑戦してみようと考えている。


好きな囲いは人それぞれであるが、他の人は何が好きでどのような見え方をしているのか、非常に興味深い。
それは棋風や将棋の組み立て方の好みにも通ずるのだと思う。
今後も将棋を続けていくが、人と指すなかでそのようなことを訊いて知ることもまた一興となるだろう

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